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この話になると口をつぐむことの多いハルくんへ抱くのは、こんな疑問。
「もしかして、『好き』って言えない理由でもあるの……?」
そう聞けば、再び大きく揺れた彼のふたつの瞳。
「わたしと手を繋いでくれて、抱きしめてもくれるハルくんが、『好き』だけは絶対に言えない訳がなにかあるの……?」
瞬きもしなくなった目の前のハルくんの顔に書かれている「どうしよう」が、みるみるうちに濃くなっていく。
とん、と一段下がった彼の手がわたしから離れて、とんっとまた一段遠ざかる。
「ご、ごめんナツ。今日はやっぱり別に帰ろうっ」
一刻も早くこの状況から逃れたいのだと、ハルくんのそのさまから痛いほどわかった。
苦しくなるのは胸の奥。
「なんでよハルくんっ!そんなの納得いかないよ!」
「ごめん!」
「ハルくんってば!」
くるりと反転したハルくんは、ばいばいも言わずにこの場を去ろうとした。
「ちょっと待っ──!」
とっさに伸ばした手でわたしが捕まえられたのは、彼の鞄の持ち手部分。そこをぐいと掴んだままでいれば、先を急ぐハルくんとわたしの間で、ファスナーの開いていた鞄の中身がひっくり返った。
バサンと落ちたのは教科書やノート、それからペンケース。そして──
「あれ、これって……」
見覚えのある、桜色の封筒。
他のものには目もくれず、真っ先にその封筒を拾ったわたしに、ハルくんは飛びかかってくる。
「それはだめ!」
思わずその封筒を背中にまわすのはわたし。取られたくないと、そう思った。
「もしかして、『好き』って言えない理由でもあるの……?」
そう聞けば、再び大きく揺れた彼のふたつの瞳。
「わたしと手を繋いでくれて、抱きしめてもくれるハルくんが、『好き』だけは絶対に言えない訳がなにかあるの……?」
瞬きもしなくなった目の前のハルくんの顔に書かれている「どうしよう」が、みるみるうちに濃くなっていく。
とん、と一段下がった彼の手がわたしから離れて、とんっとまた一段遠ざかる。
「ご、ごめんナツ。今日はやっぱり別に帰ろうっ」
一刻も早くこの状況から逃れたいのだと、ハルくんのそのさまから痛いほどわかった。
苦しくなるのは胸の奥。
「なんでよハルくんっ!そんなの納得いかないよ!」
「ごめん!」
「ハルくんってば!」
くるりと反転したハルくんは、ばいばいも言わずにこの場を去ろうとした。
「ちょっと待っ──!」
とっさに伸ばした手でわたしが捕まえられたのは、彼の鞄の持ち手部分。そこをぐいと掴んだままでいれば、先を急ぐハルくんとわたしの間で、ファスナーの開いていた鞄の中身がひっくり返った。
バサンと落ちたのは教科書やノート、それからペンケース。そして──
「あれ、これって……」
見覚えのある、桜色の封筒。
他のものには目もくれず、真っ先にその封筒を拾ったわたしに、ハルくんは飛びかかってくる。
「それはだめ!」
思わずその封筒を背中にまわすのはわたし。取られたくないと、そう思った。
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