ハルのてのひら、ナツのそら。

華子

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 最近のわたしの脳内がハルくんハルくんしていたのは認めるが、こんなにも授業に置いてけぼりを食らっているとは思わなかった。
 中学三年生は受験生。今年は一番大切な年なのに。

「ハルくん、わたしが高校生になれなかったらひくよね?」

 なんだそれ、と呆れられてもおかしくはない質問だったが、横に首を振ったハルくんは、意外にも真面目に答えてくれた。

「ひくわけないじゃん、ナツはナツなんだから」
「ええ、絶対ひくよお」
「気にしない、そんなの」
「前にハルくん言ってたじゃん。『ナツは高校に行けると思ってるの』って。その時はショックだったけど、なんだかわたしもそんな気がしてきた。このままじゃどこも行けないや」

 改めて、黒板に書かれている数式をじーっと見つめて困っていれば、黒板消しを持ったハルくんがそれを消した。

「こんなの覚えなくていい」

 顔は見せず、背中だけで彼は言う。

「ナツは俺の側にいてくれるだけでいい。それだけでいいから」
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