ハルのてのひら、ナツのそら。

華子

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中学二年生、秋の頃6

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「わたし、今度の四月にいとこの結婚式でまた千葉へ行くから、なにか買ってこようかっ?」

 親戚の家はビーチの近く。そのあたりに並ぶ雑貨屋さんは、海をモチーフにしたものが多かった記憶がある。

 四月生まれのハルくんへの、誕生日プレゼント。この前は何も思いつかずに渡せなかったから、次こそは必ず渡したい。

 貝がらの瓶ボトルを売り場に戻したハルくんは、無邪気に喜んだ。

「え、まじで!?いいの!?」
「うんっ。どんなのがいい?」
「どんなのでもいいよ、それはナツの趣味に任せるっ」
「ええっ、それが一番困るなあ」
「だってナツが選んでくれるんでしょ?そんなの、なんでも嬉しいじゃんかっ」

 またそんなことを言って、わたしのハートを掴んで。ハルくんは本当に罪深い。

「ああ、早くこないかなあ四月。ナツからなにもらえるんだろっ」

 好きって伝えて、好きって言ってもらいたい。そんな欲がどんどん増していく。
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