ハルのてのひら、ナツのそら。

華子

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中学二年生、秋の頃1

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 中学二年生の十一月。校外学習で訪れたプラネタリウム。
「席は自由」の先生の言葉で、場内中央は学年で目立つメンバーから埋まって行った。もちろんわたし綿矢ナツは、そのメンバーには属していないから、自ら進んで隅へ身を置く。するとそこへ。

「ナツの隣、あいてる?」

 と、目立つメンバーであるはずのハルくんがやって来た。まだ何も投影されていないドームをぼけっと無防備に眺めていた顔を即座に整え、わたしは聞く。

「え、こんな端っこでいいの?ハルくんのお友達、真ん中らへんに座ってなかった?」

 くるっと首をまわして確かめる、場内中心部。やはり投影機の側にはハルくんと仲のいい顔がいくつもあった。

「どちらの席からでも同じようにお楽しみいただけます」とスタッフから事前にアナウンスはあったが、彼がわざわざここを選ぶ必要などないはずなのに。

 不思議に思いながらハルくんへ視線を戻すと、彼はもうすでに、わたしの隣の席へ腰を下ろしていた。

「ジャンケン負けたわあ」
「ジャンケン?」
「うん。真ん中の方のシート人気だから、まさに椅子とりゲーム状態。最後の一席をかけてしたジャンケン勝負、辻本に負けた」
「あはは、なるほど」

 ハルくんはやはり、ここではない違う席を希望していた。だけど二番目でも、わたしの隣を選んでくれたことが嬉しかった。
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