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「ナツ、泣かないで」
優しい声でなだめてくれるけれど、これは答えでもなんでもないからもう一度聞く。
「ハルくん、お願いだから教えて。わたしをどう思っているか」
涙目でぶつける強い視線。ここまでくればもう、愛の告白とかではなく根気比べのようにも思えた。
「ハルくんはわたしのこと好き?それとも嫌い?」
究極の二択にすると、返事はすぐに返ってきた。
「なに言ってるんだよ、俺がナツのこと嫌いなわけないじゃんっ」
「じゃあ好き?」
「そ、それは……」
「じゃあ嫌い?」
「嫌いじゃないよっ!」
嫌いじゃないはこんなにもあっさりと言えるのに、どうしてその反対は口ごもるのか。再び訪れる静寂にうんざりし、気分が沈む。
ふたりともに貫く無言の先は、またもやハルくんの適当な演技で終わるのかと思いきや。
「ナツ、俺は──」
ハルくんが、あの日と同じ目になった。
「俺は、なんとも思っていない相手と手なんか繋がない」
わたしのももの上。そこに置かれていたわたしの手を、ハルくんが自身のももに持っていく。
「ナツの手だから繋ぎたいって、俺はそう思う」
ぎゅっと握って少しゆるめて、今度はぎゅうっと強く握って。
「これが今の俺が言える精一杯の答えなんだ、ナツ。これで俺の気持ちわかるでしょう?」
うぬぼれていいのかと聞きたくなった。ハルくんの彼女になれたって、そう思ってもいいのかと。
「そ、それってつまり、ハルくんもわたしを……?」
けれどやっぱりわたしが求めてしまうのは、「好き」の二文字。
「ハルくんもわたしを、好きってこと……?」
そう聞くと、わかりやすく困ったハルくんは、抱きしめることによってその質問から逃れていた。
ハルくんの胸元に埋まれば、すぐ真上から彼の声が降ってくる。
「ナツ、俺はナツだから抱きしめたいって、そう思うんだよ」
優しい声でなだめてくれるけれど、これは答えでもなんでもないからもう一度聞く。
「ハルくん、お願いだから教えて。わたしをどう思っているか」
涙目でぶつける強い視線。ここまでくればもう、愛の告白とかではなく根気比べのようにも思えた。
「ハルくんはわたしのこと好き?それとも嫌い?」
究極の二択にすると、返事はすぐに返ってきた。
「なに言ってるんだよ、俺がナツのこと嫌いなわけないじゃんっ」
「じゃあ好き?」
「そ、それは……」
「じゃあ嫌い?」
「嫌いじゃないよっ!」
嫌いじゃないはこんなにもあっさりと言えるのに、どうしてその反対は口ごもるのか。再び訪れる静寂にうんざりし、気分が沈む。
ふたりともに貫く無言の先は、またもやハルくんの適当な演技で終わるのかと思いきや。
「ナツ、俺は──」
ハルくんが、あの日と同じ目になった。
「俺は、なんとも思っていない相手と手なんか繋がない」
わたしのももの上。そこに置かれていたわたしの手を、ハルくんが自身のももに持っていく。
「ナツの手だから繋ぎたいって、俺はそう思う」
ぎゅっと握って少しゆるめて、今度はぎゅうっと強く握って。
「これが今の俺が言える精一杯の答えなんだ、ナツ。これで俺の気持ちわかるでしょう?」
うぬぼれていいのかと聞きたくなった。ハルくんの彼女になれたって、そう思ってもいいのかと。
「そ、それってつまり、ハルくんもわたしを……?」
けれどやっぱりわたしが求めてしまうのは、「好き」の二文字。
「ハルくんもわたしを、好きってこと……?」
そう聞くと、わかりやすく困ったハルくんは、抱きしめることによってその質問から逃れていた。
ハルくんの胸元に埋まれば、すぐ真上から彼の声が降ってくる。
「ナツ、俺はナツだから抱きしめたいって、そう思うんだよ」
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