ハルのてのひら、ナツのそら。

華子

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いま36

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 カチコチと、今度はわたしの体ではなく時計の秒針が聞こえてきた。先ほどまでは全く気にならなかったその音が耳へ届くのは、わたしとハルくんの会話がしばしの間、途切れたから。

 カチ コチ カチ コチ。

 ハルくんは今、何を考えているのだろう。

「あ。俺、お茶でも出そうと思ってたのに、すっかり忘れてた」

 そう言って立とうとしたハルくんを、わたしは止めた。

「いい、いらない」
「でも」
「それよりハルくんがあの日言おうとしてたことってなんだったの?」
「え?」
「わたしの家へ来た時に、ハルくんが言いかけたこと」

 ハルくんにとっては突然に感じたかもしれないこの質問は、わたしの胸の中には常にあった。それをたまたま今取り出したのは、ついさっきその日の思い出話をしたからかもしれない。

 俺、ナツのこと──

 その続きが、知りたい。

 立ちあがろうと半分浮かせていたお尻をソファーへ戻したハルくんは、神妙な面持ちになった。

 カチ コチ カチ コチ。

 再び気になる時計の音。ハルくんはなんて言うのだろう。
 もしかするとその言葉の続きは、わたしが彼にした告白の答えにも繋がるのだろうか。

 ハルくんはわたしをどう思っていますか。

 答えを言わないままわたしを抱きしめたハルくんの気持ち。あやふやなふたりの関係。
 わたしはずっと、ハルくんからの「好き」を欲している。
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