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中学二年生、春と夏の頃6
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ドキ、ドク、ドコ、バク!
その瞬間、ノミの心臓は一気に肥大化。今にも胸と布団を突き破って出ていってしまいそうなそれは、代わりに大きな声となり、口から飛んで出た。
「お、起きてる!!」
ガバッといきなり起こした上半身。するとゴチンと額にぶつかる何か。
「わっ、ごめんハルくん!」
その何かとはハルくんの鼻だった。わたしよりもずっと高いその鼻を押さえ、彼はもだえ出す。
「いってー……」
「ご、ごめんっ!」
「なんだよナツぅ、やっぱり起きてんじゃんかっ。なに寝たふりしてんだよっ」
「いや、だ、だってっ。先生だと思ったからつい!」
半分涙目のハルくんは、鼻をさすりながらもう一度「いてえ」と言った。
わたしの額と彼の鼻がぶつかったということは、やっぱり顔同士が近くにあったということなのか、と思ってしまえば、ハルくんの顔が直視できなくなる。
俯いて、白いシーツをぎゅっと握って、上目でちらり、ハルくんを見た。こっちは動揺たっぷりなのに、ハルくんは何事もなかったような爽やか笑顔。
「あーあっ。ナツにキスしたかったのになっ」
それもわたしには、冗談なのか本気なのかわからなかった。
その瞬間、ノミの心臓は一気に肥大化。今にも胸と布団を突き破って出ていってしまいそうなそれは、代わりに大きな声となり、口から飛んで出た。
「お、起きてる!!」
ガバッといきなり起こした上半身。するとゴチンと額にぶつかる何か。
「わっ、ごめんハルくん!」
その何かとはハルくんの鼻だった。わたしよりもずっと高いその鼻を押さえ、彼はもだえ出す。
「いってー……」
「ご、ごめんっ!」
「なんだよナツぅ、やっぱり起きてんじゃんかっ。なに寝たふりしてんだよっ」
「いや、だ、だってっ。先生だと思ったからつい!」
半分涙目のハルくんは、鼻をさすりながらもう一度「いてえ」と言った。
わたしの額と彼の鼻がぶつかったということは、やっぱり顔同士が近くにあったということなのか、と思ってしまえば、ハルくんの顔が直視できなくなる。
俯いて、白いシーツをぎゅっと握って、上目でちらり、ハルくんを見た。こっちは動揺たっぷりなのに、ハルくんは何事もなかったような爽やか笑顔。
「あーあっ。ナツにキスしたかったのになっ」
それもわたしには、冗談なのか本気なのかわからなかった。
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