ハルのてのひら、ナツのそら。

華子

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 一時間目始業時刻もとうに過ぎ、サラリーマンも満員電車を降りる頃。八十代くらいのおじいさんひとりと、彼のペットであろう犬一匹しかいないさんかく公園のベンチで、制服姿のわたしたちは腰を下ろした。
 ハルくんの手と繋がれたわたしの手を見ると、ドキドキともやもやが半分ずつ胸にやってくる。

 ハルくんに好きって伝えて、好きって言ってもらいたい。

 夢はまだ、半分しか叶わない。

「ハルくん、これからどこかに行くって言っても、どこに行くの?」

 おそらく思いつきで口走ったハルくんの提案。彼はうーんと背を反らす。

「どうしよっか。ナツは行きたいところある?」

 ハルくんとふたりきりでする初めてのお出かけ。行きたい場所なんかごまんとある。

「映画、とか?」

 そう言って、それはデートちっくすぎるかと恥ずかしくなった。

「ご、ごめんっ。やっぱ訂正っ」

 他にどこか、友達同士で訪れる無難な場所はないかと考えるが、わたしの脳みそがはじき出すのは水族館に動物園に展望台など、まさにザ・デートスポットのみ。
 悩みに悩み、なかなか案を出せずにいると、ハルくんが言う。

「いいんじゃない、映画館。行ってみようよ」
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