ハルのてのひら、ナツのそら。

華子

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中学一年生、冬の頃8

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「あらやっだナツってば、彼氏できたの~!?」

 許可もなく、扉を開けたのはお母さん。突然すぎる彼女の登場に、ハルくんとわたしは慌てて離れた。

「ちょ、ちょっとお母さん!ノックくらいしてよ!」
「ごめんごめん~!だってまさかナツが彼氏とキスしようとしてたなんて、思わなかったからあ」
「キ、キス!?」

 とっさに口元へ両手をあてて、ハルくんの反応をうかがった。すると彼も顔の半分を隠すように、手の甲を運んでいた。

 カーッと真っ赤に顔が染まったわたしたちを見て、楽しそうなのはお母さんだけ。

「はいはい、今は恋人じゃないけど『いずれ』ってやつね。あなた、お名前は?」

 揃えた指先をハルくんへ向けて、彼女は聞いた。

「ハ、ハルです。相良ハル」
「ハルくんか、いいお名前ね。春の季節に生まれたの?」
「は、はいっ」
「うちの子も夏に生まれたから、それをそのまま名前にしたのよ。奇遇ねえ」
「はあ……」

 何か余計なことでも言わないだろうかと、不安げに見守っていると。

「ねえハルくん。うちの子のどこが好きなの?」

 お母さんは、とんでもない爆弾をハルくんに投げていた。

「ちょっとお母さんってば!もう出てってよ!」

 大声を出して、わたしはそこに見えたクッションを放って抵抗。それでも彼女に反省などは全くなくて、「はいはい」とキャッチしたクッションを床へ置く。
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