ハルのてのひら、ナツのそら。

華子

文字の大きさ
上 下
39 / 120

中学一年生、冬の頃1

しおりを挟む
「今日の放課後、ナツんちにその図鑑見に行ってもいい?ちょうど部活もない日だし」

 中学一年生の冬。うちにある星座の図鑑が意外と楽しいと話をしたら、ハルくんが興味を持った。
「貸して」ではなく「見に行っていい?」と聞いてきたということは、ハルくんはわたしの家へ来るつもりなのだろうか。彼がわたしの家にいるところを想像すれば、鼻血だって出そうになる。

「う、うちに来るの?明日学校に持ってこようか?」
「えー。そんなに楽しそうに図鑑の紹介しておいて、明日までお預け?そんなの待ちきれないよ」
「じゃ、じゃあ家の前まで来てくれたら今日貸すけどっ」
「なにそれ『家の前』って。もしかして俺、家の中まで入ったらなにか危ないことでもしでかすって思われてるの?」

 緊張感一切感じられない、ハルくんの陽気な態度。そんな彼のさまを目の当たりにすれば、おどおどしているわたしの方が変なのではないかという気になってくる。

 友達が家に来て、図鑑を見る。ただそれだけのこと。

 それなのに鼻血がどうだとか思っているわたしの方が、たぶんおかしいのだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】まだ結婚しないの? 私から奪うくらい好きな相手でしょう?

横居花琉
恋愛
長い間婚約しているのに結婚の話が進まないことに悩むフローラ。 婚約者のケインに相談を持ち掛けても消極的な返事だった。 しかし、ある時からケインの行動が変わったように感じられた。 ついに結婚に乗り気になったのかと期待したが、期待は裏切られた。 それも妹のリリーによってだった。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

幼馴染が熱を出した? どうせいつもの仮病でしょう?【完結】

小平ニコ
恋愛
「パメラが熱を出したから、今日は約束の場所に行けなくなった。今度埋め合わせするから許してくれ」 ジョセフはそう言って、婚約者である私とのデートをキャンセルした。……いったいこれで、何度目のドタキャンだろう。彼はいつも、体の弱い幼馴染――パメラを優先し、私をないがしろにする。『埋め合わせするから』というのも、口だけだ。 きっと私のことを、適当に謝っておけば何でも許してくれる、甘い女だと思っているのだろう。 いい加減うんざりした私は、ジョセフとの婚約関係を終わらせることにした。パメラは嬉しそうに笑っていたが、ジョセフは大いにショックを受けている。……それはそうでしょうね。私のお父様からの援助がなければ、ジョセフの家は、貴族らしい、ぜいたくな暮らしを続けることはできないのだから。

記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした 

結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。

【完結済み】婚約破棄致しましょう

木嶋うめ香
恋愛
生徒会室で、いつものように仕事をしていた私は、婚約者であるフィリップ殿下に「私は運命の相手を見つけたのだ」と一人の令嬢を紹介されました。 運命の相手ですか、それでは邪魔者は不要ですね。 殿下、婚約破棄致しましょう。 第16回恋愛小説大賞 奨励賞頂きました。 応援して下さった皆様ありがとうございます。 リクエスト頂いたお話の更新はもうしばらくお待ち下さいませ。

神託の聖女様~偽義妹を置き去りにすることにしました

青の雀
恋愛
半年前に両親を亡くした公爵令嬢のバレンシアは、相続権を王位から認められ、晴れて公爵位を叙勲されることになった。 それから半年後、突如現れた義妹と称する女に王太子殿下との婚約まで奪われることになったため、怒りに任せて家出をするはずが、公爵家の使用人もろとも家を出ることに……。

優しいユメと君に微睡む。

ひまわり
BL
少し前から俺はユメを見る。 毎日同じ夢。 でも、普通の夢よりもずっと体の自由が利く。 歩こうとすれば歩けた。 風の匂いも、草木の揺れる音も。 夢のはずなのにまるで現実のようだった。 ただ、それが夢なんだってわかるのはいつもその夢から覚めると俺はベッドの中にいるから。 そんな不思議な夢の中で俺は、一人の少年と出会う。 これは、その少年と俺の、夢をきっかけに始まる恋のはなし。 ●注意事項 急性骨髄性白血病(AML)についてのことが少し出てきます。 しかし、作者はこの病気についての知識は基本しかありません。 なので、少し「?」となるところがあるかもしれませんが、生温かい目で見てくださると嬉しいです。 表紙はトワツギ(@towathugi)さんのフリーイラストを白黒にして使用しています。 こちらの作品はエブリスタの方で完結済み作品になります。 そのため、更新は毎日3ページずつ行います。 追加要素などないので、もし先を読みたい方はエブリスタな方で閲覧してください。

婚約破棄されるのらしいで、今まで黙っていた事を伝えてあげたら、婚約破棄をやめたいと言われました

新野乃花(大舟)
恋愛
ロベルト第一王子は、婚約者であるルミアに対して婚約破棄を告げた。しかしその時、ルミアはそれまで黙っていた事をロベルトに告げることとした。それを聞いたロベルトは慌てふためき、婚約破棄をやめたいと言い始めるのだったが…。

処理中です...