ハルのてのひら、ナツのそら。

華子

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中学一年生、冬の頃1

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「今日の放課後、ナツんちにその図鑑見に行ってもいい?ちょうど部活もない日だし」

 中学一年生の冬。うちにある星座の図鑑が意外と楽しいと話をしたら、ハルくんが興味を持った。
「貸して」ではなく「見に行っていい?」と聞いてきたということは、ハルくんはわたしの家へ来るつもりなのだろうか。彼がわたしの家にいるところを想像すれば、鼻血だって出そうになる。

「う、うちに来るの?明日学校に持ってこようか?」
「えー。そんなに楽しそうに図鑑の紹介しておいて、明日までお預け?そんなの待ちきれないよ」
「じゃ、じゃあ家の前まで来てくれたら今日貸すけどっ」
「なにそれ『家の前』って。もしかして俺、家の中まで入ったらなにか危ないことでもしでかすって思われてるの?」

 緊張感一切感じられない、ハルくんの陽気な態度。そんな彼のさまを目の当たりにすれば、おどおどしているわたしの方が変なのではないかという気になってくる。

 友達が家に来て、図鑑を見る。ただそれだけのこと。

 それなのに鼻血がどうだとか思っているわたしの方が、たぶんおかしいのだ。
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