ハルのてのひら、ナツのそら。

華子

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「ナツは家に帰るの?」
「ええ?」

 家以外どこへ帰るのか。よくわからない質問に、質問で返す。

「家に帰るの、ってどういう意味?」
「だってナツが帰る場所は、家とかじゃなくってさ、そのっ」
「家以外に帰るところなんてないでしょ」
「え……?」
「家の他に帰るところなんか、あるわけないじゃん」

 中学生のわたしが帰る、家ではない場所。ひょっとするとハルくんの目からは、わたしが友達の家を点々とまたぎ歩く不良少女にでも見えているのだろうか。

 彼の次に大きく首を傾けたのはわたし。あごに手を運んだハルくんが何やら深く考え込んでいたけれど、時計の針を見て、わたしは焦った。

「行こ、ハルくんっ」
「え」
「昨日も一昨日もたまたまセーフだったけど、部活入っていないわたしがこんな時間まで校内に残ってることがバレたら、見まわりの先生に怒られちゃうよっ」

 まだ考えがまとまっていない様子のハルくんの半袖のすそ。そこをつんっと引っ張り帰りをうながすと、渋々廊下へ出てくれた彼。
 不可解なハルくんの態度に、少しもやもやした。
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