ハルのてのひら、ナツのそら。

華子

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「ナツごめんね、無理やり引きとめちゃって」

 今回のわたしはぱっちりと目を開けて、意識もはっきりしたまま、部活終わりのハルくんを迎えられた。

「無理やりじゃないよ、大丈夫。ハルくん部活おつかれっ」

 額に汗をにじませたハルくんは、今日も頑張った証拠。

「ゆっくり帰りながら話す?」

 待ってと言われ待っていたわたしだけれど、ここで長居して、お疲れ気味のハルくんに負担はかけたくない。そう思ったから、わたしは家路を歩きながらの会話を提案した。
 でも、ハルくんの表情は曇った。

「ナツ、もう帰っちゃうの?帰りながら話すってどうやって?」

 もう帰っちゃうの?の言葉は、まだわたしと一緒に過ごしたいと言われているようで嬉しかったけれど、どうやって?の言葉は、わたしとの思い出を忘れられている気がして悲しかった。

「ハルくん忘れちゃったの?わたしたちの帰り道、途中まで一緒じゃん」
「途中……?」

 そう言って、思いきり首をかたむけたハルくんの頭からは、やはりすっぽりと記憶が抜けているようだ。プロ野球観戦の日に、さんかく公園まで並んで歩いたこと。わたしにとってはいい思い出だったのに。

「ハルくんはさんかく公園の角を曲がって帰るんでしょう?わたしはその近くが家だから、そこまでは一緒の帰り道じゃん。だから、公園まで歩きながら話そうよ」

 しょんぼりとした気持ちを隠そうとしたら、少しだけ早口になった。ハルくんはまだ、首の位置を戻さない。
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