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「だ、だってもう帰らなきゃ、親が心配しちゃう……」
本当はまだ帰りたくない、ハルくんといたい。だけどわたしを好きかどうかもわからない彼にそんなことを言って、気味悪く思われたくもない。
「もう行くねっ」
掴まれた手を無理やり振り払おうとしたわたしの手首、それは必死なハルくんが離さない。
「まだ帰んなってば、ナツ!」
「か、帰るっ」
「お願いだからっ!」
すがるような彼の声に、混乱していくのは頭の中。
わたしを抱きしめたくせに、好きとは言わないハルくん。
手を振り返してもくれないくせに、帰るなだなんて言ってくるハルくん。
もう、よくわからないよ。
束の間抵抗をやめれば、静かになった教室内。そこへ響いてきたのは、ダダダと廊下を走る音。
「おいハル、どこにいんだよ!いきなりいなくなるから、コーチがキレてるって!」
この声は、以前ハルくんたちとプロ野球の試合を観に行った時、みんなから辻本と呼ばれていた男の子だ。
「ハル、ハル!出てこいって!」
一組の方から、徐々にこちらへと近付いてくる彼の怒声。焦慮したハルくんが、わたしの手首から手を離す。
本当はまだ帰りたくない、ハルくんといたい。だけどわたしを好きかどうかもわからない彼にそんなことを言って、気味悪く思われたくもない。
「もう行くねっ」
掴まれた手を無理やり振り払おうとしたわたしの手首、それは必死なハルくんが離さない。
「まだ帰んなってば、ナツ!」
「か、帰るっ」
「お願いだからっ!」
すがるような彼の声に、混乱していくのは頭の中。
わたしを抱きしめたくせに、好きとは言わないハルくん。
手を振り返してもくれないくせに、帰るなだなんて言ってくるハルくん。
もう、よくわからないよ。
束の間抵抗をやめれば、静かになった教室内。そこへ響いてきたのは、ダダダと廊下を走る音。
「おいハル、どこにいんだよ!いきなりいなくなるから、コーチがキレてるって!」
この声は、以前ハルくんたちとプロ野球の試合を観に行った時、みんなから辻本と呼ばれていた男の子だ。
「ハル、ハル!出てこいって!」
一組の方から、徐々にこちらへと近付いてくる彼の怒声。焦慮したハルくんが、わたしの手首から手を離す。
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