27 / 120
中学一年生、夏の頃8
しおりを挟む
浮かれ気味に話すわたしの横で、ハルくんは「そっかそっか」とあいづちをうつ。やわらかな、彼のその表情が愛おしい。
「その話を聞いちゃったら、もうさっきのナツの発言を、詩人ってだけで片付けられないな」
再び夜空へと目を移したハルくんは、横顔だけでそう言った。
「『輝いて誰かの心に残りたい』。ほら、死んだ人間が一番寂しがるのは、思い出してもらえなくなることだとか言うじゃん。こうして夜空で瞬いていれば自然と俺たちの目には映るし、忘れ去られることはない。こんなにも綺麗な星空が実は尊い命でできているなんて、なんだかロマンチックだね。流れ星も星が尽きる寿命だと思ってたけれど、大切な人を迎えにいく途中だったんだ」
ははっと無邪気に笑うハルくんは、わたしにとってロマンそのもの。魅力的で素敵な彼の、純粋な一面を知ることができて、嬉しく思った。
「ハルくん。こんなうそみたいな話を信じてくれて、ありがとう」
律儀にお礼を言えば、きょとんとしたハルくんと目が合った。
「ありがとうってなに。こっちこそ教えてくれてありがとうだよ。そんな話、全然知らなかったし」
「知る知らないっていうか、小さかったわたしの見間違いかもしれないけど……」
「うっそだあ。さっきのナツはそんな顔してなかったよ。記憶にちゃんとあるって、きちんと覚えてるって、そんな自信に満ちた表情をしてた」
ずいっと顔を近付けられて、わたしよりも自信に満ちた表情を見せつけられれば、自分の発言を訂正せざるを得ない。
「う、うん。本当は見間違いなんかじゃないと思ってる」
「だろ?」
「この目で絶対見た、間違いないっ」
「ほら。じゃあ俺も信じるよ」
ぽんっとわたしの頭に手を乗せたハルくんは、仔猫でも愛でるようにそこを撫でた。
「ナツが信じてるものは、俺も信じたいからさ」
好きな人とは一緒に過ごせば過ごしたぶんだけ、もっと好きになっていくのだと、知った瞬間だった。
「その話を聞いちゃったら、もうさっきのナツの発言を、詩人ってだけで片付けられないな」
再び夜空へと目を移したハルくんは、横顔だけでそう言った。
「『輝いて誰かの心に残りたい』。ほら、死んだ人間が一番寂しがるのは、思い出してもらえなくなることだとか言うじゃん。こうして夜空で瞬いていれば自然と俺たちの目には映るし、忘れ去られることはない。こんなにも綺麗な星空が実は尊い命でできているなんて、なんだかロマンチックだね。流れ星も星が尽きる寿命だと思ってたけれど、大切な人を迎えにいく途中だったんだ」
ははっと無邪気に笑うハルくんは、わたしにとってロマンそのもの。魅力的で素敵な彼の、純粋な一面を知ることができて、嬉しく思った。
「ハルくん。こんなうそみたいな話を信じてくれて、ありがとう」
律儀にお礼を言えば、きょとんとしたハルくんと目が合った。
「ありがとうってなに。こっちこそ教えてくれてありがとうだよ。そんな話、全然知らなかったし」
「知る知らないっていうか、小さかったわたしの見間違いかもしれないけど……」
「うっそだあ。さっきのナツはそんな顔してなかったよ。記憶にちゃんとあるって、きちんと覚えてるって、そんな自信に満ちた表情をしてた」
ずいっと顔を近付けられて、わたしよりも自信に満ちた表情を見せつけられれば、自分の発言を訂正せざるを得ない。
「う、うん。本当は見間違いなんかじゃないと思ってる」
「だろ?」
「この目で絶対見た、間違いないっ」
「ほら。じゃあ俺も信じるよ」
ぽんっとわたしの頭に手を乗せたハルくんは、仔猫でも愛でるようにそこを撫でた。
「ナツが信じてるものは、俺も信じたいからさ」
好きな人とは一緒に過ごせば過ごしたぶんだけ、もっと好きになっていくのだと、知った瞬間だった。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
毒と花言葉
佑佳
恋愛
オレは先輩の秘密を知ってしまった――
オープンスクールのポスターに映っていた女子生徒を追って私立の高校に入学した瀬尾丈(せおたける)。
彼女――高城鈴蘭(たかしろすずらん)は、三年生に進級していた。
丈はなんとかコンタクトをとろうと一人奮闘し始める。
そんな折に、高城先輩との間を邪魔しに入ってきた男子生徒から、彼女に関する黒い事実を知らされて……。
ノーと言えない高城先輩の毒消しとなりたい丈は、泥沼の中から彼女を救い出すことができるのか。

愛する貴方の心から消えた私は…
矢野りと
恋愛
愛する夫が事故に巻き込まれ隣国で行方不明となったのは一年以上前のこと。
周りが諦めの言葉を口にしても、私は決して諦めなかった。
…彼は絶対に生きている。
そう信じて待ち続けていると、願いが天に通じたのか奇跡的に彼は戻って来た。
だが彼は妻である私のことを忘れてしまっていた。
「すまない、君を愛せない」
そう言った彼の目からは私に対する愛情はなくなっていて…。
*設定はゆるいです。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

思い出さなければ良かったのに
田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。
大事なことを忘れたまま。
*本編完結済。不定期で番外編を更新中です。
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる