ハルのてのひら、ナツのそら。

華子

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中学一年生、夏の頃7

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 どうやってあんなに高い空までいくの?

 四歳児のわたしが抱いた素朴な疑問に、おばあちゃんはこう教えてくれた。

「人が死ぬとね、空からふたつの星がお迎えにきて、天まで連れて行ってくれるんだって。そのふたつの星は自分の人生で大切だった人で、すでに亡くなっている人の命。おばあちゃんの場合はおじいちゃんか、女手ひとつで育ててくれたひいおばあちゃんのふたりかねえ、なんて、言ってた気がする」

 そしてわたしはこの目でしっかりと、その光景を見たんだ。

「流れ星が三本、上に向かって流れていたの」

 天高く伸びていく三本の白いすじ。あの光景は、一生忘れられない。

「おばあちゃんが死んじゃった日の夜、おばあちゃんが庭で育てていた花を見てわたしが泣いていたら、きらっと近くでなにかが光ったの。たしかに近くで光ったはずなのに、その光はどんどん遠ざかって、しまいには手の届かない高い空で、三本の流れ星になってたの」

 ぺちゃくちゃと、おとぎ話のような話を一方的にしてしまっていたわたしだけれど、ハルくんは意外にも、真剣に返してくれた。

「その三本の流れ星が、お迎えの星とおばあちゃんだったってこと?ナツのおばあちゃんの大切な人が、死んだおばあちゃんを夜空まで導いてくれたんだ?」
「うん、わたしはそう信じてるっ。だって三本の流れ星が同時に流れていくなんて、普通じゃ考えられないもん。しかも上だよ、上へ向かって伸びていくの。それにね、一瞬じゃなかったんだよっ。すーっとながーく伸びていくの。すっごく綺麗で、しばらく目が離せなかった」
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