ハルのてのひら、ナツのそら。

華子

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中学一年生、夏の頃6

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「じゃあなー。また明日の部活でなー」

 帰り道。わたしを家まで送ると言ってくれたハルくんは、地元の駅で部員のみんなに手を振った。

「おうっ。また明日なっ」

 そこから始まるふたりきり。

「ナツんちどのへん?」
「二丁目の、さんかく公園の近く」
「ああ、あの小さい公園か。俺もいつも、あの角で曲がって帰るよ」

 ふたり並んで歩くのは、夏の夜空のその真下。見上げた先には広いネイビー。七つの星で作られたひしゃく形が、まばゆくきらめいていた。

「ねえハルくん、北斗七星って春の星座だって知ってた?」

 星空に目をやりながらそう言うと、ハルくんも上を向く。

「へえ、知らなかった。じゃあどうして今の季節でも見えるの?」
「わかんない。春でも夏でも輝いて、誰かの心に残りたいのかなあ」
「『輝いて誰かの心に残りたい』。あははっ、なんか詩人みたい」
「あはっ、ほんとだ。ちょっとくさかったね」

 笑いながら、ふと思い出したのは昔の記憶。わたしが四歳の頃に亡くなった、田舎のおばあちゃんとの会話。

「そういえば前に、わたしのおばあちゃんがこんなこと言ってたなあ。『亡くなった人はみんなお星さまになるんだ』って。『空に散りばめられた星のひとつぶひとつぶは、全て誰かの尊い命なんだ』って」
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