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中学一年生、夏の頃4

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「ナツはもう、夕飯食べてきた?」
「あ、うん。家出る前に」
「そっか。じゃあサクッと食べちゃうわ」

 あむっと早速豪快なひとくち。あんなにも大きかったメロンパンが、一気に半分減ったように見えた。ハルくんのひざの上には、まだまだ重そうな袋が座っている。

「ハルくん、そんなに食べるの?」

 わたしがそう聞くと、ハルくんは唇についたパンのくずを舌で拭いながら、ハムスターのように膨らんだ頬でこう答えた。

「だってほなか減ってんほん」
「あははっ。口に詰め込みすぎて、うまく喋れてないよ」
「ほれでも足りないはも」
「ちょっともう、笑っちゃうっ。飲み込んでから喋ってよっ」

 こらっと肘で小突くけど、ハルくんはそんなことお構いなし。まだ彼の口内にはメロンパンが残っているのに、次のひとくちを運んでいた。

「ナツもいふ?」
「ええ?なに?」
「ヘロンハン、ナツもいふ?」
「なんだってえ?」
「らからあー」

 ほれっという顔で、目の前に差し出されたメロンパン。好きな人が口をつけたものに口をつけるなんて初めてで、どぎまぎしてしまう。

「えっと、ええっと……」

 わたしがパンと睨めっこをしているその間に、ハムスターから人間に戻ったのは、まだまだ腹ペコのハルくんだ。

「ナツいらないの?じゃあ俺、食べちゃっていい?」

 身をひるがえし、彼の元へと帰っていくメロンパン。

 ほしいって、そう思った。
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