20 / 120
中学一年生、夏の頃1
しおりを挟む
中学一年生の夏休み。小学生の頃は電光石火のごとく過ぎ去ったその休みも、ハルくんに恋をしたわたしには、とても長く、遅く感じられた。
「ハルくんは野球漬けの毎日なのかなあ」
あてもない散歩中、道ばたに落ちていた小石をひとつ蹴って、抜けていくのは大きな溜め息。
「会いたいよお、ハルくん……」
連絡先を知らないわけではないけれど、ただのクラスメイトでしかないわたしがハルくんのアイコンをタップするには、相当な意気込みが必要だった。
「あれ、ナツじゃん」
ハルくんに会いたいハルくんに会いたいと、何百回か頭で唱えていれば、奇跡は起きた。わたしのラッキーナンバーは「5」で間違いないから、おそらく555回目だと思う。
場所はお母さんにおつかいを頼まれ訪れた近所のスーパー。ふと後ろから聞こえてきた愛しい声に、勢いよく振り返る。
「ハルくんっ」
「久しぶりだね。買い物?」
「うんっ、ハルくんも?」
「そう。明日の買い出し」
「明日?」
「あ、ナツも暇なら来ない?チケット余ってるんだよね」
何かのイベントでもあるのだろうか、と思っていると、ハルくんの財布から取り出されたのは一枚のチケット。書いてある文字をそのまま読み上げる。
「ナナボシ VS シープ」
「ハルくんは野球漬けの毎日なのかなあ」
あてもない散歩中、道ばたに落ちていた小石をひとつ蹴って、抜けていくのは大きな溜め息。
「会いたいよお、ハルくん……」
連絡先を知らないわけではないけれど、ただのクラスメイトでしかないわたしがハルくんのアイコンをタップするには、相当な意気込みが必要だった。
「あれ、ナツじゃん」
ハルくんに会いたいハルくんに会いたいと、何百回か頭で唱えていれば、奇跡は起きた。わたしのラッキーナンバーは「5」で間違いないから、おそらく555回目だと思う。
場所はお母さんにおつかいを頼まれ訪れた近所のスーパー。ふと後ろから聞こえてきた愛しい声に、勢いよく振り返る。
「ハルくんっ」
「久しぶりだね。買い物?」
「うんっ、ハルくんも?」
「そう。明日の買い出し」
「明日?」
「あ、ナツも暇なら来ない?チケット余ってるんだよね」
何かのイベントでもあるのだろうか、と思っていると、ハルくんの財布から取り出されたのは一枚のチケット。書いてある文字をそのまま読み上げる。
「ナナボシ VS シープ」
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
毒と花言葉
佑佳
恋愛
オレは先輩の秘密を知ってしまった――
オープンスクールのポスターに映っていた女子生徒を追って私立の高校に入学した瀬尾丈(せおたける)。
彼女――高城鈴蘭(たかしろすずらん)は、三年生に進級していた。
丈はなんとかコンタクトをとろうと一人奮闘し始める。
そんな折に、高城先輩との間を邪魔しに入ってきた男子生徒から、彼女に関する黒い事実を知らされて……。
ノーと言えない高城先輩の毒消しとなりたい丈は、泥沼の中から彼女を救い出すことができるのか。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

愛する貴方の心から消えた私は…
矢野りと
恋愛
愛する夫が事故に巻き込まれ隣国で行方不明となったのは一年以上前のこと。
周りが諦めの言葉を口にしても、私は決して諦めなかった。
…彼は絶対に生きている。
そう信じて待ち続けていると、願いが天に通じたのか奇跡的に彼は戻って来た。
だが彼は妻である私のことを忘れてしまっていた。
「すまない、君を愛せない」
そう言った彼の目からは私に対する愛情はなくなっていて…。
*設定はゆるいです。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる