ハルのてのひら、ナツのそら。

華子

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いま9

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「ナツ、手ぇ出して」
「手?」
「うん、ナツの手。触っていい?」

 意外な申し出にぽかんとしたのも束の間、どういう意味かと問いたくなった。

「え、なんでっ」

 恋人同士でもないわたしたちの手が触れ合うなんて、そんなのキャアキャア。

 思考のコントロールを失ったわたしの手を、ハルくんは許可も得ずにひょいと奪った。繋ぐと言うよりかは握手に近いそんな握り方に、「よろしくね」と彼と出逢った入学式の日を思い出す。

「ハ、ハルくん。これってなんの握手?」

 あの日のように「はじめまして」ではないし、「よろしくね」でもないハルくんとわたし。
 一戦交えた試合の相手でもなければ、テレビの中の政治家でもない。そんなわたしたちが今どうして握手を交わしているのかわからずにそう聞くと、回答をすっ飛ばした彼が逆に質問を投げてくる。

「ナツ、どうしてここにいるの?」

 それは、昨日と全く同じクエスチョン。

「なんでナツはここにいるの、なにしに来たの」

 ドキドキすれば、ハルくんと繋がれた手が汗ばんでいってしまう。

「か、風が気持ちいいから……」

 ふぬけた声でまたもや誤魔化そうとすると、それはハルくんが一喝した。
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