ハルのてのひら、ナツのそら。

華子

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「ナツ……?」

 名前を呼ばれて目を開ける。ここはベランダで、見上げた先には制服姿のハルくんがいて、そして空は暗い。
 昨日と全く同じ状況に、口があんぐりいていく。

「ハ、ハルくん。まさかわたし、またこんなとこで……?」

 二日連続、夜のベランダで寝る女。
 ああ、文字にしただけでも怖すぎる。

 硬直するわたしのすぐ目の前でしゃがみ込んだハルくんは、うかがうようにわたしを見た。

「ナツ、だよね……?」

 そうですナツです、綿矢ナツです。決して夜のベランダに出るお化けではございません。

 こくんと小さく頷いてから、わたしは聞いた。

「ハルくんは、どうしてここにいるの?」

 ホームランボールが飛んで来ていない今日は、彼がここを訪れる用事はないはず。野球部の活動が終わればそのまま一階の更衣室で着替えて帰ればいいだけなのに、なぜハルくんは三階のベランダまで来たのだろう。

 そう思っていると。

「ナツに会えるかもって思ったから」
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