ハルのてのひら、ナツのそら。

華子

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中学一年生、春の頃5

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「え!ナツもハングリートリオの信者なの!?俺と一緒じゃん!」

 ハルくんとは気が合うな、好きだな。

 そんな風に思い始めたのは、ゴールデンウィークが明けた頃。愛読書が一緒だったと判明して、大いに盛り上がった。

「うん、ハングリートリオおもしろいよね。大好きで全巻持ってるよ」
「まじで!?三十五巻全部!?女子であのギャグ漫画全巻揃えてる人、見たことないけどっ」

「ウケるウケる」と何度も言いながら、ハルくんは大笑い。彼が笑顔になるとわたしも嬉しくなるのは、まさに恋をしている証拠だと思った。

「あー、おっかしい。久しぶりにこんなに笑ったわあ」

 胸に手をあて、息を整えるハルくん。すると今度は一転、悲しげな顔を見せてきた。

「でもそんなナツに悲報がある。なんとあの漫画、あと二年で終わっちゃうんだって」

 その情報には、わたしも途端に顔を歪めた。

「ええ、そうなの?人気なのになんでえ~」
「詳しくは発表されてないけど、ちまたで噂されているのは、作者が違うテイストの漫画を描いてみたいとかどうとか」
「へー。次もギャグ漫画なのかなあ」
「いや、次は純愛ものに挑みたいらしい」
「え、あのハングリートリオの作者が?」
「うん。大爆笑ギャグ漫画を描いている、あの作者が」
「……」
「ナツ?」
「あの作者には無理じゃない?」
「おい、それは失礼だって」

 ぴんっと軽いデコピンを放たれて、もうっとやり返す。たったのそれだけでも幸せを感じられるのだから、恋ってすごいパワーを持っている。
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