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第16話 トランスポーター
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「これを運べ」
「中身は何だい?」
「知らなくていい」
ナインは運び屋の仕事を受け
呼び出された港頭倉庫地区に来ていた
ライヴァ―バードは港町として栄えており
こういった港頭倉庫が多く連なっている
(しかし
なんでこうも怪しげな依頼は
必ずと言っていいほど
波止場の倉庫なんだよ)
ナインは心の中でボヤいていた
「本日の17時までにマシウスの中央公園
そこで待っていれば向うに受け取り手が来る」
「その相手をどう判別すればいい」
「この鞄を持っていれば
相手から受け取りに来る」
「はいはい
りょうかいです」
依頼をした黒ずくめはミニ竜メールを飛ばし
この場を去っていった
大方相手への連絡だろう
中身は見ない
運び屋の鉄則だ
大体の場合
中身を知るとロクな事にならない
時間内に荷物を運びお金を貰う
ただそれだけに徹するのみ
だが荷物の鞄をイザナミの鞍の後ろに乗せると
イザナミが嫌がった
「どうしたんだよ」
その問いに身体を震わせ答える
(参ったな
結構ヤバいモノなのね)
「イザナミ
とっとと配達して終いにしよう
それまで我慢してくれよ」
ナインが撫で少しイザナミも落ち着いた
そこからの道中
尋常じゃない襲撃に遭う
襲撃に次ぐ襲撃
親の仇かの様な物量の襲撃が
とめどなくナインとイザナミを襲った
全てを返り討ちにしていたが
流石に補給と休憩を兼ね
「セーフハウス」に立ち寄った
傭兵たちの間では幾つかの中立地帯が存在していた
そこは「セーフハウス」と呼ばれ
大体が街の一等地にあるホテルの場合が多い
その建物と周囲4キロ圏内は
一切の戦闘行為が認められれない
破った者は賞金首とされ
1時間とも生き延びることはできない
ドラゴンも一緒に入る事が出来る客室で
ナインは依頼物である鞄を
ベットの上に置いた
その拍子に鞄が開いてしまった
「あー!
もう!
安物か
この鞄は!」
そこでナインは見たくもない中身を見てしまった
それは
ドラゴンの卵だった
しかもナインの知ってる限り
それは「覇竜」の卵に似ていた
「覇竜の卵」の実物を見た人間はおそらく
世界でも数えるほどしかいない
皆はそのデザイン画とその状態でしか判断ができない
伝えられている内容はこうだ
「通常の竜の卵より数倍の大きさで
色は赤黒く中から光を感じる
手に持つと熱を持っており
卵の状態でも大きく脈を打ち鼓動を感じられる」
恐る恐るナインはその卵を手に持ってみると
力強い鼓動を感じた
覇竜の卵の条件に全て一致する
だが
それには腑に落ちない事が多すぎる
・そもそもあの安い依頼でこんな危険物を移送するのか
これだけの物なら最低でも一個師団の警護団を編成するのが当然だ
・襲撃の数の多さから情報が各方面に筒抜けだった事
極秘で移動すべき所がその情報防衛がお粗末すぎる
・襲撃の数は多いものののその質はどれも著しく低い
覇竜の卵ならばもっと大規模な襲撃班を計画するものだ
ただ
ナインも実物を見た事が無いため
最後の確証が持てない
襲撃の数を考えると肯定に近いが
襲撃の質を考えると矛盾が出る
デマが流され囮に使われた恐れもある
そこでナインはミネルバの元を訪ねる事にした
ミネルバの竜施設に着くなり
新たな襲撃が始まった
「姐さんのテリトリーを攻撃して
無事で帰れると思ってるのかね
まったく」
襲撃班はミネルバとその相棒竜のオッドルが殲滅した
静かになったところでナインがミネルバの元に近づく
「厄介事をここに持って来るなって
いつも言ってんだろうが!」
ナインは出会いがしらにミネルバに殴られた
「私も見た事が無いから断言はできないけど
覇竜の卵で間違いないだろうね」
ミネルバはタバコに火をつけて答えた
部屋には竜医師のアルマも同席していた
「じゃあ
このままだと
孵化して覇竜生まれるって事ですか?」
「いーや
それは無い」
「こんなに強く脈打ってるんですよ」
アルマが横からそれに答える
「【覇竜の粉】が無いと
卵からは出てこないの」
「【覇竜の粉】?
なんだよそれ」
「覇竜が親が分泌する粉
覇竜の卵はすごい硬く
その粉が無い限り産まれない」
「その粉に特徴はあるのか?」
「黄金に輝く粉って言われてる」
ナインは胸ポケットから
黄金に輝く粉の入った弾丸型のカプセルを出した
「まさか
これがその覇竜の粉なんじゃ」
「荷の中に一緒にあったのかい?
貸してごらん」
ナインはミネルバにカプセルを渡す
「いや
この粉は
盗まれた銃の中に入って……」
まさか
あの銃を盗んだのはこの粉が目当て?
盗んで粉が無かったから俺に的を絞って
でも俺がこの仕事を受けるなんて
あの報酬金額
メイトリックスの銃がこの時期に出て……
全部俺がここに来る事も!
「姐さん
ヤバい
襲撃が来る!」
「襲撃だぁ?
さっき来ただろうが」
「違う!
本物の襲撃だ!!」
そうナインが叫ぶのを待っていたかのように
施設のあちらこちらで爆発が起こり火の手が上がった
ナインたちの部屋の壁も爆破され
部屋には爆風が満ちた
「ナイン
それは私の物なんだ
返してもらってもいいだろうか」
ナインはその声を知っている
忘れもしない
裏切者ジュダの声だ
銃声
「慌てるなよ
まだ皆に挨拶もできていないのに
ミネルバさんも
相変わらずお美しい」
「テメー
私の家に土足であがって
ただで帰れると思ってるのかい!」
「いえいえ
直ぐにお暇しますよ
私の物を返してもらいましたらね
てっきりミネルバさんのところかと思っていたが
君が持っていたとは
団長に似て用心深いな
君は」
「てめーが団長を語るんじゃねぇ!
イザナミィ!」
ナインはイザナミに飛び乗り
駆ける
声を目指し煙を抜けると
3機の竜騎兵が待ち構えていた
ナインの速攻は全て受け流される
間違いなく手練れ
3機共に自分と同様の腕がある事を瞬時に理解する
ナインは3機を撒きジュダの方へと向かおうとするが
それを容易には許してはくれない
激しい攻防が続く
一瞬の油断もできない
遠くで銃声が聞こえる
ミネルバたちがいた方向だ
「ナイン
ゆっくりと思い出話をしたいところだが
私もこれで忙しい身でね
ここで帰らせてもらうよ
つかぬ間の再開だったが
楽しかったよ」
ここで大きな爆発が起こり
ジュダと3機の竜騎兵は姿を消していた
ナインは急ぎ戻る
そこには
ミネルバとアルマが倒されていた
「ジュダ!
このクソヤローがぁ!!」
ナインはどことも知れぬ方向へ銃を撃ち放った
「中身は何だい?」
「知らなくていい」
ナインは運び屋の仕事を受け
呼び出された港頭倉庫地区に来ていた
ライヴァ―バードは港町として栄えており
こういった港頭倉庫が多く連なっている
(しかし
なんでこうも怪しげな依頼は
必ずと言っていいほど
波止場の倉庫なんだよ)
ナインは心の中でボヤいていた
「本日の17時までにマシウスの中央公園
そこで待っていれば向うに受け取り手が来る」
「その相手をどう判別すればいい」
「この鞄を持っていれば
相手から受け取りに来る」
「はいはい
りょうかいです」
依頼をした黒ずくめはミニ竜メールを飛ばし
この場を去っていった
大方相手への連絡だろう
中身は見ない
運び屋の鉄則だ
大体の場合
中身を知るとロクな事にならない
時間内に荷物を運びお金を貰う
ただそれだけに徹するのみ
だが荷物の鞄をイザナミの鞍の後ろに乗せると
イザナミが嫌がった
「どうしたんだよ」
その問いに身体を震わせ答える
(参ったな
結構ヤバいモノなのね)
「イザナミ
とっとと配達して終いにしよう
それまで我慢してくれよ」
ナインが撫で少しイザナミも落ち着いた
そこからの道中
尋常じゃない襲撃に遭う
襲撃に次ぐ襲撃
親の仇かの様な物量の襲撃が
とめどなくナインとイザナミを襲った
全てを返り討ちにしていたが
流石に補給と休憩を兼ね
「セーフハウス」に立ち寄った
傭兵たちの間では幾つかの中立地帯が存在していた
そこは「セーフハウス」と呼ばれ
大体が街の一等地にあるホテルの場合が多い
その建物と周囲4キロ圏内は
一切の戦闘行為が認められれない
破った者は賞金首とされ
1時間とも生き延びることはできない
ドラゴンも一緒に入る事が出来る客室で
ナインは依頼物である鞄を
ベットの上に置いた
その拍子に鞄が開いてしまった
「あー!
もう!
安物か
この鞄は!」
そこでナインは見たくもない中身を見てしまった
それは
ドラゴンの卵だった
しかもナインの知ってる限り
それは「覇竜」の卵に似ていた
「覇竜の卵」の実物を見た人間はおそらく
世界でも数えるほどしかいない
皆はそのデザイン画とその状態でしか判断ができない
伝えられている内容はこうだ
「通常の竜の卵より数倍の大きさで
色は赤黒く中から光を感じる
手に持つと熱を持っており
卵の状態でも大きく脈を打ち鼓動を感じられる」
恐る恐るナインはその卵を手に持ってみると
力強い鼓動を感じた
覇竜の卵の条件に全て一致する
だが
それには腑に落ちない事が多すぎる
・そもそもあの安い依頼でこんな危険物を移送するのか
これだけの物なら最低でも一個師団の警護団を編成するのが当然だ
・襲撃の数の多さから情報が各方面に筒抜けだった事
極秘で移動すべき所がその情報防衛がお粗末すぎる
・襲撃の数は多いものののその質はどれも著しく低い
覇竜の卵ならばもっと大規模な襲撃班を計画するものだ
ただ
ナインも実物を見た事が無いため
最後の確証が持てない
襲撃の数を考えると肯定に近いが
襲撃の質を考えると矛盾が出る
デマが流され囮に使われた恐れもある
そこでナインはミネルバの元を訪ねる事にした
ミネルバの竜施設に着くなり
新たな襲撃が始まった
「姐さんのテリトリーを攻撃して
無事で帰れると思ってるのかね
まったく」
襲撃班はミネルバとその相棒竜のオッドルが殲滅した
静かになったところでナインがミネルバの元に近づく
「厄介事をここに持って来るなって
いつも言ってんだろうが!」
ナインは出会いがしらにミネルバに殴られた
「私も見た事が無いから断言はできないけど
覇竜の卵で間違いないだろうね」
ミネルバはタバコに火をつけて答えた
部屋には竜医師のアルマも同席していた
「じゃあ
このままだと
孵化して覇竜生まれるって事ですか?」
「いーや
それは無い」
「こんなに強く脈打ってるんですよ」
アルマが横からそれに答える
「【覇竜の粉】が無いと
卵からは出てこないの」
「【覇竜の粉】?
なんだよそれ」
「覇竜が親が分泌する粉
覇竜の卵はすごい硬く
その粉が無い限り産まれない」
「その粉に特徴はあるのか?」
「黄金に輝く粉って言われてる」
ナインは胸ポケットから
黄金に輝く粉の入った弾丸型のカプセルを出した
「まさか
これがその覇竜の粉なんじゃ」
「荷の中に一緒にあったのかい?
貸してごらん」
ナインはミネルバにカプセルを渡す
「いや
この粉は
盗まれた銃の中に入って……」
まさか
あの銃を盗んだのはこの粉が目当て?
盗んで粉が無かったから俺に的を絞って
でも俺がこの仕事を受けるなんて
あの報酬金額
メイトリックスの銃がこの時期に出て……
全部俺がここに来る事も!
「姐さん
ヤバい
襲撃が来る!」
「襲撃だぁ?
さっき来ただろうが」
「違う!
本物の襲撃だ!!」
そうナインが叫ぶのを待っていたかのように
施設のあちらこちらで爆発が起こり火の手が上がった
ナインたちの部屋の壁も爆破され
部屋には爆風が満ちた
「ナイン
それは私の物なんだ
返してもらってもいいだろうか」
ナインはその声を知っている
忘れもしない
裏切者ジュダの声だ
銃声
「慌てるなよ
まだ皆に挨拶もできていないのに
ミネルバさんも
相変わらずお美しい」
「テメー
私の家に土足であがって
ただで帰れると思ってるのかい!」
「いえいえ
直ぐにお暇しますよ
私の物を返してもらいましたらね
てっきりミネルバさんのところかと思っていたが
君が持っていたとは
団長に似て用心深いな
君は」
「てめーが団長を語るんじゃねぇ!
イザナミィ!」
ナインはイザナミに飛び乗り
駆ける
声を目指し煙を抜けると
3機の竜騎兵が待ち構えていた
ナインの速攻は全て受け流される
間違いなく手練れ
3機共に自分と同様の腕がある事を瞬時に理解する
ナインは3機を撒きジュダの方へと向かおうとするが
それを容易には許してはくれない
激しい攻防が続く
一瞬の油断もできない
遠くで銃声が聞こえる
ミネルバたちがいた方向だ
「ナイン
ゆっくりと思い出話をしたいところだが
私もこれで忙しい身でね
ここで帰らせてもらうよ
つかぬ間の再開だったが
楽しかったよ」
ここで大きな爆発が起こり
ジュダと3機の竜騎兵は姿を消していた
ナインは急ぎ戻る
そこには
ミネルバとアルマが倒されていた
「ジュダ!
このクソヤローがぁ!!」
ナインはどことも知れぬ方向へ銃を撃ち放った
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