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第1話

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 彼・圭斗は俺より学年が一つ下だった。
 俺より少し背は低かったけれども、均整の取れた、割としっかりとした体つきをしていた。
 サラサラしている短髪に、笑うとできる小さなえくぼ。全体的に爽やかな印象的だった。


 接点ができたのは、学校の中ではなかった。
 俺が小学四年生のとき、所属していた少年野球のチームに彼が入ってきて、その日の休憩時間に水飲み場で一緒になって、

「圭斗くんだよね。よろしく」

 と俺から声をかけたのが始まりだった。

「あ、はい。よろしくお願いします」

 彼はそう返してくれた。
 少し顔を赤らめ、目を逸らし気味の恥ずかしそうな笑顔だったことが印象的だった。


 そこから、なぜか彼はどんどん俺に懐いていった。
 毎週日曜日におこなわれていた練習日では、練習中や練習前後にいつも二人で談笑するようになった。
 そして練習での休憩時間や、上級生たちの試合を見ているときなどは、彼はいつも俺の隣にいた。

 監督やコーチが、

「お前らずいぶん仲いいな」

 と訝しがることもあった。

 それも当然だ。小学生は学年が違えばだいぶ近寄りがたい雰囲気を感じるのが普通だからだ。
 俺も先輩たちは怖いとまではいかないまでも、自分達よりも大人……いや、おっさんのように見えて、気軽に近寄っていけない感じはあった。

 彼は他の上級生に対しては特別懐くということはないようだったので、「なぜ俺?」と不思議に思うことはあった。
 が、すっかり硬さが取れた彼の笑顔は無邪気で、寄られれば寄られるほど可愛く思えていった。


 学年が違うと、教室がある階も違えば下駄箱のある入り口も違う。そのため基本的に学校内で会うことはない。
 しかし学年が上がり四年生になった彼は、クラブ活動の所属先に俺のいたバドミントン部を選択した。

 俺はクラブ活動に野球がなかったので、仕方なくバドミントン部を選んでいた。
 いっぽう彼は、事前に俺がどこの部にいるのか聞いてきたうえで、

「オレも同じ部に入るね!」

 と言っていたので、どうやら俺がいるからという理由で選んでくれたようだった。

 こうして、学校内でも接点ができ、野球以外でも顔を合わせるようになった。
 俺に対する呼び方も、いつのまにか学校の中では『くん付け』になった。
 その『くん付け』に舐めている感じなどはなく、俺は嫌ではなかったので、特に指摘などはせずそのままにした。


 仲が深まっていくにつれ、スキンシップも増えた。
 最初は俺が彼の肩に手をやることが多く、それを彼が少し恥ずかしそうに受け入れることが多かった。

 慣れてくると、彼のほうから俺の腕を取って組んでくることが増えていく。
 腕を組まれると、半袖のときは肌が触れ合う。腕の弾力と温かさが心地良かった。
 野球やバドミントンの練習後などは汗をかいていることもあったが、お互い汗はサラサラで、少なくとも俺は不快ではなかった。



(続く)
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