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第7話

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 勇者レグルスの顔が、ふたたび近づく。
 アステアの顔に、ではなく、服を裂かれてあらわになった逞しい胸に――。

 彼の右頬が、胸に触れた。
 そのまま体重がかけられていく。
 埋められた顔。彼の肌と息を、胸に感じてしまう。

「アステアさん、いい匂いしますね」

 この体勢で彼がしゃべると、素肌が頬や唇でくすぐられる。
 アステアはそれに耐えながら、言った。

「いったい何のつもりだ」
「だから、あなたの欲しがっていたもの、ですよ」
「あいにく俺にこのような趣味はない。たとえ俺が罪人であろうとも、これは強姦だ」

 温かい息が、少し勢いをつけてアステアの胸を撫でていった。
 彼が少し笑ったようだ。

「そうですよ? アステアさんの欲しがっていた、僕の不祥事。これで一つ、できるじゃないですか」

 欲しがっていた不祥事。その言葉を聞いてアステアの体に一つ震えが走った。

「……知っていたのか」
「もちろんです」

 その震えをなだめるかのように柔らかい声で答えながら、勇者がアステアの胸の上で少しだけ顔を離す。

「うっ」

 アステアの口から声が漏れた。
 勇者が手を這わせ、両乳首を刺激したのだ。

「あなたのことは、何でも知っています」
「……くっ……」
「だって僕は、ずっとあなたを見続けてきましたから」

 乳首を転がしながら、勇者は微笑んだ。

「覚えていますか? 僕が騎士団に入団したときのこと。僕はあなたにあいさつをしたときに言いましたよ。あなたに憧れてましたと。いつかあなたと一緒に戦いたいと」
「入団者のほぼ全員から俺は同じことを言われ続けている。覚えていない」
「では今覚えてください。本気でそれを言って、本気でそれを実行しようとしているのは僕・レグルスだけということを」

 勇者の手は徐々に広範囲を移動する。
 両手を頭上方向へ拘束されているためにがら空きになっているわきの下にも指が及ぶ。
 乳首も腋窩も自分でも普段触ることのない部位。アステアはたまらず身じろぎした。 

「あなたの言うとおり、僕はあなたよりも力では劣るでしょう。勇者にふさわしいのも、魔王討伐に行くべき第一候補も、あなたであるべきだと思います」
「ならばなぜ自分が勇者になろうとした」
「あなたが勇者になってしまったら、パーティメンバーに僕が選ばれる可能性はありませんよね」
「当たり前だ」

「だからです。あなたの中に僕はいない。あなたが勇者になってしまうと、あなたと一緒に戦うという夢が一生叶わないことになります」
「……」
「僕はあなたと一緒に戦うためには、自分が勇者になるしかないと思いました。自分が勇者になって、あなたをパーティメンバーに選ぼう、とね」

 絶句するアステア。
 また勇者は少し体を持ち上げると、またナイフを手にした。

「あなたの眼中になかったことが、僕には幸いしました。あなたは僕のことがわからないけど、僕はあなたの癖や呼吸が手に取るようにわかりましたから。ずっとあなただけを見て騎士をやってきましたから」

 勇者がアステアの下半身の服に手をかける。

「だから自信はありました。あなたが相手ならば、何度試合をしても僕は勝てるだろう、とね」
「……!」

 そして右手のナイフで、一気に生地を切り裂いた――。



(続く)
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