7 / 10
第7話
しおりを挟む
勇者レグルスの顔が、ふたたび近づく。
アステアの顔に、ではなく、服を裂かれてあらわになった逞しい胸に――。
彼の右頬が、胸に触れた。
そのまま体重がかけられていく。
埋められた顔。彼の肌と息を、胸に感じてしまう。
「アステアさん、いい匂いしますね」
この体勢で彼がしゃべると、素肌が頬や唇でくすぐられる。
アステアはそれに耐えながら、言った。
「いったい何のつもりだ」
「だから、あなたの欲しがっていたもの、ですよ」
「あいにく俺にこのような趣味はない。たとえ俺が罪人であろうとも、これは強姦だ」
温かい息が、少し勢いをつけてアステアの胸を撫でていった。
彼が少し笑ったようだ。
「そうですよ? アステアさんの欲しがっていた、僕の不祥事。これで一つ、できるじゃないですか」
欲しがっていた不祥事。その言葉を聞いてアステアの体に一つ震えが走った。
「……知っていたのか」
「もちろんです」
その震えをなだめるかのように柔らかい声で答えながら、勇者がアステアの胸の上で少しだけ顔を離す。
「うっ」
アステアの口から声が漏れた。
勇者が手を這わせ、両乳首を刺激したのだ。
「あなたのことは、何でも知っています」
「……くっ……」
「だって僕は、ずっとあなたを見続けてきましたから」
乳首を転がしながら、勇者は微笑んだ。
「覚えていますか? 僕が騎士団に入団したときのこと。僕はあなたにあいさつをしたときに言いましたよ。あなたに憧れてましたと。いつかあなたと一緒に戦いたいと」
「入団者のほぼ全員から俺は同じことを言われ続けている。覚えていない」
「では今覚えてください。本気でそれを言って、本気でそれを実行しようとしているのは僕・レグルスだけということを」
勇者の手は徐々に広範囲を移動する。
両手を頭上方向へ拘束されているためにがら空きになっているわきの下にも指が及ぶ。
乳首も腋窩も自分でも普段触ることのない部位。アステアはたまらず身じろぎした。
「あなたの言うとおり、僕はあなたよりも力では劣るでしょう。勇者にふさわしいのも、魔王討伐に行くべき第一候補も、あなたであるべきだと思います」
「ならばなぜ自分が勇者になろうとした」
「あなたが勇者になってしまったら、パーティメンバーに僕が選ばれる可能性はありませんよね」
「当たり前だ」
「だからです。あなたの中に僕はいない。あなたが勇者になってしまうと、あなたと一緒に戦うという夢が一生叶わないことになります」
「……」
「僕はあなたと一緒に戦うためには、自分が勇者になるしかないと思いました。自分が勇者になって、あなたをパーティメンバーに選ぼう、とね」
絶句するアステア。
また勇者は少し体を持ち上げると、またナイフを手にした。
「あなたの眼中になかったことが、僕には幸いしました。あなたは僕のことがわからないけど、僕はあなたの癖や呼吸が手に取るようにわかりましたから。ずっとあなただけを見て騎士をやってきましたから」
勇者がアステアの下半身の服に手をかける。
「だから自信はありました。あなたが相手ならば、何度試合をしても僕は勝てるだろう、とね」
「……!」
そして右手のナイフで、一気に生地を切り裂いた――。
(続く)
アステアの顔に、ではなく、服を裂かれてあらわになった逞しい胸に――。
彼の右頬が、胸に触れた。
そのまま体重がかけられていく。
埋められた顔。彼の肌と息を、胸に感じてしまう。
「アステアさん、いい匂いしますね」
この体勢で彼がしゃべると、素肌が頬や唇でくすぐられる。
アステアはそれに耐えながら、言った。
「いったい何のつもりだ」
「だから、あなたの欲しがっていたもの、ですよ」
「あいにく俺にこのような趣味はない。たとえ俺が罪人であろうとも、これは強姦だ」
温かい息が、少し勢いをつけてアステアの胸を撫でていった。
彼が少し笑ったようだ。
「そうですよ? アステアさんの欲しがっていた、僕の不祥事。これで一つ、できるじゃないですか」
欲しがっていた不祥事。その言葉を聞いてアステアの体に一つ震えが走った。
「……知っていたのか」
「もちろんです」
その震えをなだめるかのように柔らかい声で答えながら、勇者がアステアの胸の上で少しだけ顔を離す。
「うっ」
アステアの口から声が漏れた。
勇者が手を這わせ、両乳首を刺激したのだ。
「あなたのことは、何でも知っています」
「……くっ……」
「だって僕は、ずっとあなたを見続けてきましたから」
乳首を転がしながら、勇者は微笑んだ。
「覚えていますか? 僕が騎士団に入団したときのこと。僕はあなたにあいさつをしたときに言いましたよ。あなたに憧れてましたと。いつかあなたと一緒に戦いたいと」
「入団者のほぼ全員から俺は同じことを言われ続けている。覚えていない」
「では今覚えてください。本気でそれを言って、本気でそれを実行しようとしているのは僕・レグルスだけということを」
勇者の手は徐々に広範囲を移動する。
両手を頭上方向へ拘束されているためにがら空きになっているわきの下にも指が及ぶ。
乳首も腋窩も自分でも普段触ることのない部位。アステアはたまらず身じろぎした。
「あなたの言うとおり、僕はあなたよりも力では劣るでしょう。勇者にふさわしいのも、魔王討伐に行くべき第一候補も、あなたであるべきだと思います」
「ならばなぜ自分が勇者になろうとした」
「あなたが勇者になってしまったら、パーティメンバーに僕が選ばれる可能性はありませんよね」
「当たり前だ」
「だからです。あなたの中に僕はいない。あなたが勇者になってしまうと、あなたと一緒に戦うという夢が一生叶わないことになります」
「……」
「僕はあなたと一緒に戦うためには、自分が勇者になるしかないと思いました。自分が勇者になって、あなたをパーティメンバーに選ぼう、とね」
絶句するアステア。
また勇者は少し体を持ち上げると、またナイフを手にした。
「あなたの眼中になかったことが、僕には幸いしました。あなたは僕のことがわからないけど、僕はあなたの癖や呼吸が手に取るようにわかりましたから。ずっとあなただけを見て騎士をやってきましたから」
勇者がアステアの下半身の服に手をかける。
「だから自信はありました。あなたが相手ならば、何度試合をしても僕は勝てるだろう、とね」
「……!」
そして右手のナイフで、一気に生地を切り裂いた――。
(続く)
0
お気に入りに追加
15
あなたにおすすめの小説
【BL】国民的アイドルグループ内でBLなんて勘弁してください。
白猫
BL
国民的アイドルグループ【kasis】のメンバーである、片桐悠真(18)は悩んでいた。
最近どうも自分がおかしい。まさに悪い夢のようだ。ノーマルだったはずのこの自分が。
(同じグループにいる王子様系アイドルに恋をしてしまったかもしれないなんて……!)
(勘違いだよな? そうに決まってる!)
気のせいであることを確認しようとすればするほどドツボにハマっていき……。
俺をハーレムに組み込むな!!!!〜モテモテハーレムの勇者様が平凡ゴリラの俺に惚れているとか冗談だろ?〜
嶋紀之/サークル「黒薔薇。」
BL
無自覚モテモテ勇者×平凡地味顔ゴリラ系男子の、コメディー要素強めなラブコメBLのつもり。
勇者ユウリと共に旅する仲間の一人である青年、アレクには悩みがあった。それは自分を除くパーティーメンバーが勇者にベタ惚れかつ、鈍感な勇者がさっぱりそれに気づいていないことだ。イケメン勇者が女の子にチヤホヤされているさまは、相手がイケメンすぎて嫉妬の対象でこそないものの、モテない男子にとっては目に毒なのである。
しかしある日、アレクはユウリに二人きりで呼び出され、告白されてしまい……!?
たまには健全な全年齢向けBLを書いてみたくてできた話です。一応、付き合い出す前の両片思いカップルコメディー仕立て……のつもり。他の仲間たちが勇者に言い寄る描写があります。
平凡な男子高校生が、素敵な、ある意味必然的な運命をつかむお話。
しゅ
BL
平凡な男子高校生が、非凡な男子高校生にベタベタで甘々に可愛がられて、ただただ幸せになる話です。
基本主人公目線で進行しますが、1部友人達の目線になることがあります。
一部ファンタジー。基本ありきたりな話です。
それでも宜しければどうぞ。
過食症の僕なんかが異世界に行ったって……
おがこは
BL
過食症の受け「春」は自身の醜さに苦しんでいた。そこに強い光が差し込み異世界に…?!
ではなく、神様の私欲の巻き添えをくらい、雑に異世界に飛ばされてしまった。まあそこでなんやかんやあって攻め「ギル」に出会う。ギルは街1番の鍛冶屋、真面目で筋肉ムキムキ。
凸凹な2人がお互いを意識し、尊敬し、愛し合う物語。
神獣の僕、ついに人化できることがバレました。
猫いちご
BL
神獣フェンリルのハクです!
片思いの皇子に人化できるとバレました!
突然思いついた作品なので軽い気持ちで読んでくださると幸いです。
好評だった場合、番外編やエロエロを書こうかなと考えています!
本編二話完結。以降番外編。
回顧
papiko
BL
若き天才∶宰相閣下 (第一王子の親友)
×
監禁されていた第一王子 (自己犠牲という名のスキル持ち)
その日は、唐突に訪れた。王国ルーチェントローズの王子三人が実の父親である国王に対して謀反を起こしたのだ。
国王を探して、開かずの間の北の最奥の部屋にいたのは――――――――
そこから思い出される記憶たち。
※完結済み
※番外編でR18予定
【登場人物】
宰相 ∶ハルトノエル
元第一王子∶イノフィエミス
第一王子 ∶リノスフェル
第二王子 ∶アリスロメオ
第三王子 ∶ロルフヘイズ
転生したので異世界でショタコンライフを堪能します
のりたまご飯
BL
30歳ショタコンだった俺は、駅のホームで気を失い、そのまま電車に撥ねられあっけなく死んだ。
けど、目が覚めるとそこは知らない天井...、どこかで見たことのある転生系アニメのようなシチュエーション。
どうやら俺は転生してしまったようだ。
元の世界で極度のショタコンだった俺は、ショタとして異世界で新たな人生を歩む!!!
ショタ最高!ショタは世界を救う!!!
ショタコンによるショタコンのためのBLコメディ小説であーる!!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる