聖騎士ですがゲイビデオ出演がバレました

エピローグ 異世界デジタルタトゥーは永遠に

「ヤスノリ様。聖騎士テンマが中心街の宿屋を出ました。使い魔を通して見ますに、またやられ放題のようでした」

　ひんやりとした石造りの間にある玉座。
　左肘をついて座るテンマの親友・加藤保典は、魔族の男の報告を受けて満足そうにうなずいた。

「そうか。僕の予想どおりだ」

　右手には、禍々しい装飾の施された黒い杯。
　勝利の美酒を、口に運ぶ。

「まったく……異世界ライフがこんなに楽しいものとはな」



　保典は、虎岩天馬のゲイビデオ出演をマスコミに暴露する予定だった。
　週刊誌の編集部には連絡済みで、雑誌記者の詳しい取材を受ける日も決まっていた。
　その矢先での、異世界転移だった。

　気がついたら魔法陣の上にいて、青い肌をした男たちに囲まれ「あなたを魔王としてお迎えします」である。

　転移により、天馬のゲイビデオ暴露計画は頓挫かと思われた。
　だが保典の失望はすぐに解消された。
　天馬もこの世界に転移していたということが確認できたからだ。しかも、邪を祓う救国の聖騎士として。

　保典は狂喜した。
　この世界で彼のゲイビデオ出演を暴露すれば、彼を奈落の底へと落とすことができる、と。

　そして今のところ、計画は実にうまくいっている。



「このぶんだと、まだまだ僕の予想は当たるだろう。次の行き先は街の外れの宿屋。そして明日は冒険者ギルドで仕事探し――。どちらも準備はできているだろうな？」

「はい、ヤスノリ様。手配にぬかりはありません。お預かりした魔法の玉は最適なタイミングで現地に届けられるはずです」
「ふははは。楽しみだな」

　この先も彼は、行く先々でゲイビデオ出演を暴露され、迫害・凌辱され続けるだろう。

　――お前が悪いんだぞ？　僕の本気の告白を「気持ち悪い」で片づけた、お前が。

　保典は心の中でそう言うと、杯に残っていた酒をぐっと飲み干した。



（終わり）