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第7話
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「今回が最初で最後。もうここに来ちゃダメだよ。わかった?」
ハルトがそう念を押した甲斐があったのか、ふたたびトウヤが家に押しかけてくることはなかった。
その後も塾では相変わらずボディタッチが多く、胸やら脇やら股間やらとよく触られたが、塾の外で会うことはなかった。
高校受験に合格するとともに、トウヤの塾通いも終了。
最後の授業が終わったときに「ライン教えて」とせがまれたが、ハルトは塾からメールアドレスやラインなどを生徒と交換しないように言われていたため、それは断った。
家の固定電話の番号は電話帳に載っていたためバレていたわけであるが、彼がかけてくることはなかった。
あの日彼が自分にしたことは、彼の成長過程に舞い降りた、うたかたの感情によるもの。
そう思い、ハルトはそっと記憶にしまい込んだ。
一年、二年と月日が経っていくにつれ、わざわざ彼を思い起こすこともなくなっていった。
◇
どうやら、自分は人に教えるということが向いているらしい――。
塾の教え子が一人の例外もなく成績を伸ばし、全員が第一志望の高校に合格していくのを見て、ハルトは確信を深めていった。
そして、大学三年生の冬休みが終わったころ。
「もう少ししたら就活が始まると思うけど、よかったらうちの会社を受けてみないかい? 上場企業だし、悪くないと思うよ」
塾長にそう勧誘された。
ハルトはあまり悩まなかった。
大学四年になったらエントリーし、採用試験を受けた。
既にアルバイト講師であり、成果も出している。しかも社員である塾長の推薦もあり。
落ちる要素は皆無で、トントン拍子で内定を得た。
(続く)
ハルトがそう念を押した甲斐があったのか、ふたたびトウヤが家に押しかけてくることはなかった。
その後も塾では相変わらずボディタッチが多く、胸やら脇やら股間やらとよく触られたが、塾の外で会うことはなかった。
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家の固定電話の番号は電話帳に載っていたためバレていたわけであるが、彼がかけてくることはなかった。
あの日彼が自分にしたことは、彼の成長過程に舞い降りた、うたかたの感情によるもの。
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◇
どうやら、自分は人に教えるということが向いているらしい――。
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ハルトはあまり悩まなかった。
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