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第2話
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あぐらで座る中野ハヤト。
手のひらの上の目覚まし時計を、なんとなく転がしている。
一方、すっかり目が覚めた赤坂ミノル。
布団の上で正座し、ショボンと頭を垂れている。
二人とも無言。
朝の鳥のさえずりだけが聞こえる。
やがて、ハヤトが口を開いた。
「この俺の声、どうやって録ったんだ?」
ミノルは視線を落としたまま答えた。
「ええと。ICレコーダーで、部活中に……。それから加工でノイズを取って……」
「部活中って、お前。音声アラームのメッセージに使えるようなセリフなんて、俺がどのタイミングで発するかわからんだろ」
「いつもレコーダーを回してたんで……」
「……」
二たび、無言タイムへ。
「お前さあ。もしかして俺のこと好きなん?」
沈黙を破ったハヤトに、ミノルは答えない。
「不自然だとは思ってたんだよな。いつも俺の近くにいるし、異様な懐きかただったし。それに今回だって、勉強を教わりたいだけなら家に来させる必要も泊まらせる必要もないしな」
ハヤトは手に持っていた目覚まし時計を、今度は少し跳ねさせた。
「で、どうなん? 俺のことが好きだから、勉強を口実に泊まりに来いって言ったわけ?」
うながされて、やっとミノルは答えた。
「あー、いや、まあ、その」
「はっきり言え」
「あ、はい」
やっと観念したミノルは、顔をあげ、ぐっと顔を引き締めた。
「先輩は先輩で大事な付属品ですし嫌いじゃないです! 悪くないと思います!」
「……。なんだそれは。意味わからんぞ」
「ええと、僕、先輩の声が好きなんです」
「声?」
「はい。先輩の声ってすごくいいですよね? よく言われません? 少し前に流行ってた野球アニメあるじゃないですか? 『進撃の阪神』。先輩の声ってあの主人公の声にそっくりですよね? 声質かっこいいですし、なんか聞いてると自分の耳が味覚を持ってきて甘さを感じてきてしまうというか、ああそうそう、ケーキとか菓子パン食べてるような感じになるんですよ。中毒性があるって言うんですか? そうだ、普通にしゃべってるときだけじゃなくて、グラウンドで張り上げたときの声とかも微妙にエロくて好きというか――」
「おいちょっと待て」
「あ、はい?」
ちょっと頭を整理したい――。
ハヤトがそう言い、三たび無言タイムに突入した。
「よくわからんが、付き合うしかないな。俺たち」
またまた沈黙を破ったハヤト。ミノルは首を傾げた。
「え。なんでです?」
「だってお前、目覚ましの声、変える気ないんだろ?」
「もちろん。これが永久にお預けだと多分僕死んじゃいます」
「付き合ってもない奴に声を録り続けられたあげく、目覚ましの音声アラームに勝手に採用されている身にもなれ……。ま、お前けっこう可愛いし、アリだと思ってるけど。どうだ」
「えーっと、そのあの。繰り返しになりますけど、僕は本体である声が好きなので、付属品の先輩の顔とか体とかにはそこまで興味ないというか。まあカッコいいのは間違いないんでしょうけど」
「勝手に本体と付属品を入れ替えるなっつーの」
ハヤトは額を片手で押さえると、その手でそのままサラサラの短髪を二回掻いた。
「……まあいいか。赤坂、ちょっと体貸せ」
「え? あっ――」
直後、布団の上で正座していたミノルは、ハヤトに服を剥ぎ取られた。
(続く)
手のひらの上の目覚まし時計を、なんとなく転がしている。
一方、すっかり目が覚めた赤坂ミノル。
布団の上で正座し、ショボンと頭を垂れている。
二人とも無言。
朝の鳥のさえずりだけが聞こえる。
やがて、ハヤトが口を開いた。
「この俺の声、どうやって録ったんだ?」
ミノルは視線を落としたまま答えた。
「ええと。ICレコーダーで、部活中に……。それから加工でノイズを取って……」
「部活中って、お前。音声アラームのメッセージに使えるようなセリフなんて、俺がどのタイミングで発するかわからんだろ」
「いつもレコーダーを回してたんで……」
「……」
二たび、無言タイムへ。
「お前さあ。もしかして俺のこと好きなん?」
沈黙を破ったハヤトに、ミノルは答えない。
「不自然だとは思ってたんだよな。いつも俺の近くにいるし、異様な懐きかただったし。それに今回だって、勉強を教わりたいだけなら家に来させる必要も泊まらせる必要もないしな」
ハヤトは手に持っていた目覚まし時計を、今度は少し跳ねさせた。
「で、どうなん? 俺のことが好きだから、勉強を口実に泊まりに来いって言ったわけ?」
うながされて、やっとミノルは答えた。
「あー、いや、まあ、その」
「はっきり言え」
「あ、はい」
やっと観念したミノルは、顔をあげ、ぐっと顔を引き締めた。
「先輩は先輩で大事な付属品ですし嫌いじゃないです! 悪くないと思います!」
「……。なんだそれは。意味わからんぞ」
「ええと、僕、先輩の声が好きなんです」
「声?」
「はい。先輩の声ってすごくいいですよね? よく言われません? 少し前に流行ってた野球アニメあるじゃないですか? 『進撃の阪神』。先輩の声ってあの主人公の声にそっくりですよね? 声質かっこいいですし、なんか聞いてると自分の耳が味覚を持ってきて甘さを感じてきてしまうというか、ああそうそう、ケーキとか菓子パン食べてるような感じになるんですよ。中毒性があるって言うんですか? そうだ、普通にしゃべってるときだけじゃなくて、グラウンドで張り上げたときの声とかも微妙にエロくて好きというか――」
「おいちょっと待て」
「あ、はい?」
ちょっと頭を整理したい――。
ハヤトがそう言い、三たび無言タイムに突入した。
「よくわからんが、付き合うしかないな。俺たち」
またまた沈黙を破ったハヤト。ミノルは首を傾げた。
「え。なんでです?」
「だってお前、目覚ましの声、変える気ないんだろ?」
「もちろん。これが永久にお預けだと多分僕死んじゃいます」
「付き合ってもない奴に声を録り続けられたあげく、目覚ましの音声アラームに勝手に採用されている身にもなれ……。ま、お前けっこう可愛いし、アリだと思ってるけど。どうだ」
「えーっと、そのあの。繰り返しになりますけど、僕は本体である声が好きなので、付属品の先輩の顔とか体とかにはそこまで興味ないというか。まあカッコいいのは間違いないんでしょうけど」
「勝手に本体と付属品を入れ替えるなっつーの」
ハヤトは額を片手で押さえると、その手でそのままサラサラの短髪を二回掻いた。
「……まあいいか。赤坂、ちょっと体貸せ」
「え? あっ――」
直後、布団の上で正座していたミノルは、ハヤトに服を剥ぎ取られた。
(続く)
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