うちの地域担当のヒーローがやられまくりな件

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落

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第4部 越谷アパセティックタウン

第57話

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「……っ」

 リックスの刀の重さにやや顔をしかめながら、ハヤテはどんどん攻撃を繰り出す。広いとはいえ室内、しかも大きなカプセルが多数置いてあり、フットワークは制限される。手数が多いほうが有利と判断したものだ。

 リックスはメタルの体とは思えないほどの加速度で刀を振るうが、ハヤテの電子警棒のほうが速い。徐々にハヤテの電子警棒の突きがリックスのメタルの体に届きそうになり、戦いはリックスが防戦寄りで刀で電子警棒をいなしていくような展開となった。

「あのハンマーは……室内だと雷が届かないから役に立たないのか?」
「……」
「もしそうなら、この場所では俺のほうが有利みたいだな!」

 ハヤテの攻撃に対し、リックスが後ろに下げられていく。
 次第に電子警棒の突きがさばき切れなくなっていった。後ろは壁と、壁際に一つだけ他のカプセルとは並べかたが異なるカプセルが置いてあり、スペースはない。

 リックスが間合いを確保すべく、横に飛ぼうとする。
 ハヤテはそれを逃がすまいとさらに踏み込む。

「グウアッ」

 リックスから苦悶の声があがる。
 差し込んだスタンガンは、リックスの左翼の根元近くに命中した。

 大きな火花が散り、翼がショートしながら吹き飛んだ。もげた翼は、リックスの後ろに独立して置いてあったカプセルに当たり、ガラスが派手に割れる音がした。
 ブレーカーがあるので戦闘不能にはならないが、たしかなダメージを与えたようだ。

「どうだ!」

 片翼となったリックスはバランスを失ってふらついたが、残る右翼を仕舞って体勢を立て直すと、落ち着いて答えた。

「お前の電子警棒の動きは解析できた」
「何?」

 静かにそう言い、リックスは攻勢に転じ始めた。

「――っ!」

 今度はハヤテが守勢となる。
 重い斬撃がハヤテを襲う。武器の速度だけならハヤテのほうが速い。的確に受け、戦闘開始直後のように反撃の隙をうかがい、突きを入れる。

「!?」

 が、今度はリックスは刀でいなしたり左右に避けるのではなく、最小限の間合いだけで逃れた。
 そして、刀をコンパクトに振り下ろす。

「うっ」

 突き出されたハヤテの右腕が斬られ、火花が散った。
 主導権を渡すまいと、ハヤテは痛みに耐えてまた電子警棒を突き出す。
 しかしまた間合いで外されると、今度は刀が下から振り上げられた。電子警棒が跳ね上げられる。

 その勢いは強く、ハヤテの腹部や胸部はがら空きになった。
 そこに、強い横薙ぎが襲う――。

「うあっ」

 スーツの胸部から火花が散り、ハヤテの声が部屋に響く。
 ハヤテの電子警棒の動きや距離感を掴んだリックスの猛攻が始まった。

「く……うああっ」

 つばぜり合いから、押しての左腕への斬撃。

「うあっ!」

 腹部への一閃。

「くああっ!」

 大腿部への斬撃。

「ぐあああっ!」

 痛みに両手で腿を押さえてしまったハヤテに対し、肩口からの斬撃。

「ぐわあっ!」

 右肩を押さえた瞬間に、その左腕へ斬撃。
 とまらない。

「あああっ」
「うああっ」
「ぐはああっ」

 全身をまんべんなく斬られ、ひたすらハヤテのあえぎ声とスーツのショート音が続く。
 たまらずハヤテが後ろに距離を取ろうとしたが、ダメージの蓄積により足に力が上手く入らない。その動きは隙を与えただけとなった。
 ハヤテの動きに合わせた鋭い踏み込みから、リックスが強烈な振り上げを放つ。

「うあ゛ぁあああああああああっ――!!」

 スーツの股間から下腹部、腹部、胸にかけて激しい火花を散らすだけでなく、ハヤテの体が宙に勢いよく飛ぶほどの苛烈な斬り上げだった。
 きりもみのように回転しながら後方に落ちたハヤテの体は、バウンドしながら一つ、二つとカプセルを割り、床に沈んだ。

「あぁ……ぁぁあ……ぅああ……ああっ……」

 痛みに耐えかね床で体をくねらせているところに、さらにリックスが近づき、ハヤテの腹部を右足で力強く踏みつけた。

「あ”あっッ」

 火花が散る。ハヤテもせめてもの抵抗を見せようと足首に電子警棒を差し込もうとしたが、その右腕の動きも読まれてしまい、リックスの足に踏まれた。

「ぐはっ」

 火花が散る。
 足をあげ、もう一度。

「う”っ」

 メタルの足で二度踏まれると、ハヤテの右手が力を失い、電子警棒が離れた。
 そしてまた腹部が踏まれる。

「はああ゛ああっ」

 これもとまらない。

「あああっ」
「ああっ」
「あ゛っ……」

 やがてハヤテの四肢が力を失い、だらりと広がった。

「ぅ……ぁ……ぁ……」
「終わりだな」

 うめき声をだすだけになったハヤテに対し、相変わらずの冷静な声でリックスは言うと、刀を照明で光らせながら、切っ先をハヤテの首に突き付けた。
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『勇者の股間触ったらエライことになった』
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