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第4部 越谷アパセティックタウン
第50話
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「装着!」
ハヤテの体全体が光り、赤色と黒色の密着型特殊戦闘ボディスーツに身が包まれる。
しかし、メタルの翼を輝かせながらゆっくりと降りてきたリックスは、その視線をハヤテではなく、後方に駆けていったワタルのほうへと送っていた。
「あれは……そうか。三条ワタルという人間だな。不思議な雰囲気があるとは思ったが、この前に別の幹部のグループから回されてきた情報と一致する。あの人間は我々の大いなる父、ジョー・ヤマナカの血を引く『死の鍵』の可能性がある――」
「おい! お前の相手は俺だ!」
ハヤテが声を張ると、ようやくリックスはハヤテを見た。
「焦らずとも、私個人は『死の鍵』に特段の興味はない。あの謎は我々の頭脳でも解明できなかったものだ。人間に解明できるとは微塵も思わない」
もっとも、サンプルを欲しがっている幹部はいるから、生け捕れたら引き渡すが――と抑揚のない声で付け加えた。
「それよりも、だ」
独特の金属音がした。リックスの翼がビシっと畳まれ、右手には刀身の長い剣が現れる。
「お前がこの先に進もうとするならば、ここで阻止しなければならない」
言うや否や、爆発で小さながれきが散在する地面を蹴り、突進してきた。
「――っ!」
刀身が長いので細く見え、ハヤテはイメージしづらかったが、リックスの持つ剣はかなりの質量だった。しかし電子警棒でしっかり受ける。
今度はハヤテが反撃の突き。
リックスは後方へのジャンプで避ける。その跳躍は高く、大きかった。
「もらった!」
明らかな隙と判断したハヤテは、着地を狙うべく突進する。
が、想定の場所には落ちてこなかった。
ふたたび独特の金属音とともにリックスの背中の翼が開き、空中で止まったのである。
そしてさらに、その翼が動く。
急降下斬りは速く、鋭かった。
「ぐあっッ」
今度は受けきれず、通り抜けざまに斬られたハヤテのスーツ腹部から火花が散る。
リックスは翼をうまく使ってハヤテの後方でピタリと止まると、翼を畳みながらまたハヤテへと突進し、斬りつける。
「あ゛あっッ」
ハヤテは後方を向いた瞬間に切られ、派手に胸から火花を散らす。
その次の斬りは何とか受け、また反撃の突きを入れるが、後方に跳ばれて入らない。
跳躍が大きいため追いかけて着地を狙おうとするも、やはりリックスの翼が開いて落ちてこない。
また急降下攻撃が来る――そう思ったハヤテは、次の手を打った。
電子警棒を握り替え、グレードアップされ獣機にも十分効くと言われている銃機能を使うことにした。
発砲音とともに、電子警棒の先端が火を噴く。
「――!」
激しい音とともに、空中でリックスの体がブレた。
体からわずかにあがる煙からも、まともに命中したようだ。
「どうだ! 少しは効いたんじゃねえか?」
また電子警棒が火を噴く。が、今度は翼を動かす独特の金属音とともに、空中でかわされた。
「まだ弾はあるぜ!」
撃つ。撃つ。撃つ。
しかし当たらない。
「無駄だ。もう当たらぬ」
銃弾より速く動いているわけではないため、どうやら優れた視力と解析力でハヤテの発射動作を見切ったようだ。
「今度はこちらの番だ」
リックスの左前腕部から、格納されていた砲口が姿を見せた。
そして凄まじい爆音。
「うあ゛ああああっ――」
ハヤテは直撃こそなんとか免れたものの、激しい爆発に巻き込まれた。高速道路の破片と一緒に、飛ばされる。
受け身も取れず転がるハヤテを見て、リックスがふたたび剣を構え、翼を整えた。
そして、急降下――。
起き上がったばかりのハヤテの体に、先ほどよりもさらに鋭い斬撃が駆け抜けた。
「ぐあ゛あっッ――!」
胴を強く斬られたハヤテは、激しい火花を散らしながら体を回転させ、またも地面に沈む。
電子警棒が手から離れ、道路を転がっていった。
ハヤテを弱らせることに成功したと判断したリックスは、満足そうに翼を光らせ、背中に畳んだ。
「どうやら勝負は決したようだな」
「ぅ……く、くそ……」
ヨロっと起き上がったハヤテに対し、リックスが剣で斬りかかってくる。
丸腰ではその斬撃を防げない。
「うあっ!」
「ああっ!」
「ぐああっ!」
「ぐはあっ!」
めった切りにされ、都度火花と苦悶の声をあげるハヤテ。
苦し紛れに出したハイキックも簡単にかわされ、流れた体をまた斬りつけられる。
「あ゛ぁあっ!」
「そんな攻撃が有効とでも思っているのか」
冷たい声とともに、ふらつくハヤテに対し大きく踏み込み、力強い斬り上げを放った。
「うあ゛ぁああっッ――!」
ハヤテはスーツの下腹部から胸にかけて激しく火花を散らし、体を反らせながら、空中に高く放り投げられるように吹っ飛ぶ。
そこにリックスのメタルの両翼の先端が怪しく光った。電気だ。
宙を舞うハヤテを、二筋の電光が襲う。
「う゛あ゛あっぁあああっッ――!!」
スーツを光らせながら空中で一段と体を反らせるハヤテ。過電流に耐えられなかったのか、スーツのところどころがショート思われる小爆発を起こした。
そして、自由落下。
ドサリと道路に落ちると、小さながれきや塵がたくさん舞い上がった。
この高速道路は街を囲む巨大な壁の一部であるが、すでにひび割れだらけ、めくり上がりだらけ、がれきだらけとなっていた。もはや道路の体をなしていない。
「ぅ……ぐぁ……ぁぁ……」
そのボロボロの道路の上で、ハヤテは苦しそうにもがいていた。
ハヤテの体全体が光り、赤色と黒色の密着型特殊戦闘ボディスーツに身が包まれる。
しかし、メタルの翼を輝かせながらゆっくりと降りてきたリックスは、その視線をハヤテではなく、後方に駆けていったワタルのほうへと送っていた。
「あれは……そうか。三条ワタルという人間だな。不思議な雰囲気があるとは思ったが、この前に別の幹部のグループから回されてきた情報と一致する。あの人間は我々の大いなる父、ジョー・ヤマナカの血を引く『死の鍵』の可能性がある――」
「おい! お前の相手は俺だ!」
ハヤテが声を張ると、ようやくリックスはハヤテを見た。
「焦らずとも、私個人は『死の鍵』に特段の興味はない。あの謎は我々の頭脳でも解明できなかったものだ。人間に解明できるとは微塵も思わない」
もっとも、サンプルを欲しがっている幹部はいるから、生け捕れたら引き渡すが――と抑揚のない声で付け加えた。
「それよりも、だ」
独特の金属音がした。リックスの翼がビシっと畳まれ、右手には刀身の長い剣が現れる。
「お前がこの先に進もうとするならば、ここで阻止しなければならない」
言うや否や、爆発で小さながれきが散在する地面を蹴り、突進してきた。
「――っ!」
刀身が長いので細く見え、ハヤテはイメージしづらかったが、リックスの持つ剣はかなりの質量だった。しかし電子警棒でしっかり受ける。
今度はハヤテが反撃の突き。
リックスは後方へのジャンプで避ける。その跳躍は高く、大きかった。
「もらった!」
明らかな隙と判断したハヤテは、着地を狙うべく突進する。
が、想定の場所には落ちてこなかった。
ふたたび独特の金属音とともにリックスの背中の翼が開き、空中で止まったのである。
そしてさらに、その翼が動く。
急降下斬りは速く、鋭かった。
「ぐあっッ」
今度は受けきれず、通り抜けざまに斬られたハヤテのスーツ腹部から火花が散る。
リックスは翼をうまく使ってハヤテの後方でピタリと止まると、翼を畳みながらまたハヤテへと突進し、斬りつける。
「あ゛あっッ」
ハヤテは後方を向いた瞬間に切られ、派手に胸から火花を散らす。
その次の斬りは何とか受け、また反撃の突きを入れるが、後方に跳ばれて入らない。
跳躍が大きいため追いかけて着地を狙おうとするも、やはりリックスの翼が開いて落ちてこない。
また急降下攻撃が来る――そう思ったハヤテは、次の手を打った。
電子警棒を握り替え、グレードアップされ獣機にも十分効くと言われている銃機能を使うことにした。
発砲音とともに、電子警棒の先端が火を噴く。
「――!」
激しい音とともに、空中でリックスの体がブレた。
体からわずかにあがる煙からも、まともに命中したようだ。
「どうだ! 少しは効いたんじゃねえか?」
また電子警棒が火を噴く。が、今度は翼を動かす独特の金属音とともに、空中でかわされた。
「まだ弾はあるぜ!」
撃つ。撃つ。撃つ。
しかし当たらない。
「無駄だ。もう当たらぬ」
銃弾より速く動いているわけではないため、どうやら優れた視力と解析力でハヤテの発射動作を見切ったようだ。
「今度はこちらの番だ」
リックスの左前腕部から、格納されていた砲口が姿を見せた。
そして凄まじい爆音。
「うあ゛ああああっ――」
ハヤテは直撃こそなんとか免れたものの、激しい爆発に巻き込まれた。高速道路の破片と一緒に、飛ばされる。
受け身も取れず転がるハヤテを見て、リックスがふたたび剣を構え、翼を整えた。
そして、急降下――。
起き上がったばかりのハヤテの体に、先ほどよりもさらに鋭い斬撃が駆け抜けた。
「ぐあ゛あっッ――!」
胴を強く斬られたハヤテは、激しい火花を散らしながら体を回転させ、またも地面に沈む。
電子警棒が手から離れ、道路を転がっていった。
ハヤテを弱らせることに成功したと判断したリックスは、満足そうに翼を光らせ、背中に畳んだ。
「どうやら勝負は決したようだな」
「ぅ……く、くそ……」
ヨロっと起き上がったハヤテに対し、リックスが剣で斬りかかってくる。
丸腰ではその斬撃を防げない。
「うあっ!」
「ああっ!」
「ぐああっ!」
「ぐはあっ!」
めった切りにされ、都度火花と苦悶の声をあげるハヤテ。
苦し紛れに出したハイキックも簡単にかわされ、流れた体をまた斬りつけられる。
「あ゛ぁあっ!」
「そんな攻撃が有効とでも思っているのか」
冷たい声とともに、ふらつくハヤテに対し大きく踏み込み、力強い斬り上げを放った。
「うあ゛ぁああっッ――!」
ハヤテはスーツの下腹部から胸にかけて激しく火花を散らし、体を反らせながら、空中に高く放り投げられるように吹っ飛ぶ。
そこにリックスのメタルの両翼の先端が怪しく光った。電気だ。
宙を舞うハヤテを、二筋の電光が襲う。
「う゛あ゛あっぁあああっッ――!!」
スーツを光らせながら空中で一段と体を反らせるハヤテ。過電流に耐えられなかったのか、スーツのところどころがショート思われる小爆発を起こした。
そして、自由落下。
ドサリと道路に落ちると、小さながれきや塵がたくさん舞い上がった。
この高速道路は街を囲む巨大な壁の一部であるが、すでにひび割れだらけ、めくり上がりだらけ、がれきだらけとなっていた。もはや道路の体をなしていない。
「ぅ……ぐぁ……ぁぁ……」
そのボロボロの道路の上で、ハヤテは苦しそうにもがいていた。
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