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第3部 遺された漁港・銚子
第41話
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獣機二体と刺し違えるようなかたちで意識を失ったハヤテ。
目が覚めると、すぐに手足が動かないことに気づいた。
「……!?」
ハヤテから最初に見えた景色は、天井。
横を見ると獣機だった破片も散らばっており、細かいコンクリート片なども散乱している。場所は先ほどと同じ部屋のようだ。
差し込んでいる採光窓からの光の明るさも、気絶明けのまぶしさを差し引けば、さほど変わらない。
丸一日経っているとは考えづらい。まだ全身に感じる痛みからも、気絶前からさほど時間は経っていないのではないか。
「なんだコレ!?」
違うのは、自らの両手両足が拘束されていること。
変身は解けていないが、仰向けで両腕が挙上された状態で動かない。両足も動かない。力を入れてもガチャりと金属音がするだけだ。
頭は動かせるので、すぐに理解した。
ハヤテの両腕は、部屋の奥に並んでいたスチール棚の側面を構成する鉄柱に、鎖で縛りつけられていた。
足はスチール棚があるエリアと反対方向――部屋の広い空間のほうに向けられ、これまたやはり鎖で束ねられていた。
すぐに、先ほどの、遠くで起きた扉の閉まる音を思い出した。
(獣機の仕業か? いや、違う)
倒した獣機は、いま偵察に来ているのは二人だけであると受け取れる発言をしていたはず。
人間の仕業と考えるのが自然だ。
獣機による襲撃によって船舶の被害やヒーローの殉職が相次ぎ、防衛するのはコストに見合わないとAIが判断したことから、養殖を除き漁業が日本から消えたのはかなり昔の話。
そのときに放棄され、今では廃墟マニアですら来ることがなくなったというこの銚子港。基本的には人っ子一人いないところという説明を受けていた。
(実際、ここまで来るのに会ったのは子供一人だけだもんな……って、あの子供、ちゃんと帰ってくれたのか?)
灯台で出会い、ハヤテの腹部に蹴りを入れ、疾風のように去っていった子供。
保護する隙さえなかったが、何やら危険な臭いしかしないこの港からすでに避難済であることをハヤテは願った。
すると――。
(……!)
ハヤテの体に緊張が走った。
小さな音が聞こえたのだ。
その音は金属音ではなかった。だが、人間の足音のようにも感じなかった。
何かが転がるような、そんな音に聞こえた。
だんだんと大きくなっていく。
そして、いったん止まる。
ハヤテは開けっ放しの出入り口を、じっと見つめた。
「ああ、起きたんだ。兄ちゃん」
電動スケートボードに乗って入ってきたのは、半袖半ズボンでつばの広い帽子をかぶった、灯台で会ったその子供だった。
(続く)
目が覚めると、すぐに手足が動かないことに気づいた。
「……!?」
ハヤテから最初に見えた景色は、天井。
横を見ると獣機だった破片も散らばっており、細かいコンクリート片なども散乱している。場所は先ほどと同じ部屋のようだ。
差し込んでいる採光窓からの光の明るさも、気絶明けのまぶしさを差し引けば、さほど変わらない。
丸一日経っているとは考えづらい。まだ全身に感じる痛みからも、気絶前からさほど時間は経っていないのではないか。
「なんだコレ!?」
違うのは、自らの両手両足が拘束されていること。
変身は解けていないが、仰向けで両腕が挙上された状態で動かない。両足も動かない。力を入れてもガチャりと金属音がするだけだ。
頭は動かせるので、すぐに理解した。
ハヤテの両腕は、部屋の奥に並んでいたスチール棚の側面を構成する鉄柱に、鎖で縛りつけられていた。
足はスチール棚があるエリアと反対方向――部屋の広い空間のほうに向けられ、これまたやはり鎖で束ねられていた。
すぐに、先ほどの、遠くで起きた扉の閉まる音を思い出した。
(獣機の仕業か? いや、違う)
倒した獣機は、いま偵察に来ているのは二人だけであると受け取れる発言をしていたはず。
人間の仕業と考えるのが自然だ。
獣機による襲撃によって船舶の被害やヒーローの殉職が相次ぎ、防衛するのはコストに見合わないとAIが判断したことから、養殖を除き漁業が日本から消えたのはかなり昔の話。
そのときに放棄され、今では廃墟マニアですら来ることがなくなったというこの銚子港。基本的には人っ子一人いないところという説明を受けていた。
(実際、ここまで来るのに会ったのは子供一人だけだもんな……って、あの子供、ちゃんと帰ってくれたのか?)
灯台で出会い、ハヤテの腹部に蹴りを入れ、疾風のように去っていった子供。
保護する隙さえなかったが、何やら危険な臭いしかしないこの港からすでに避難済であることをハヤテは願った。
すると――。
(……!)
ハヤテの体に緊張が走った。
小さな音が聞こえたのだ。
その音は金属音ではなかった。だが、人間の足音のようにも感じなかった。
何かが転がるような、そんな音に聞こえた。
だんだんと大きくなっていく。
そして、いったん止まる。
ハヤテは開けっ放しの出入り口を、じっと見つめた。
「ああ、起きたんだ。兄ちゃん」
電動スケートボードに乗って入ってきたのは、半袖半ズボンでつばの広い帽子をかぶった、灯台で会ったその子供だった。
(続く)
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