うちの地域担当のヒーローがやられまくりな件

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落

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第3部 遺された漁港・銚子

第40話

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 人型獣機二体のコンビネーションを生かした銃撃。
 被弾するたびに、ハヤテの動きはダメージで鈍くなっていった。

 そして――。

「う゛あ゛あっ!」

 跳弾が、ハヤテの特殊戦闘ボディスーツの前部と背部に同時命中した。
 火花とあえぎ声があがり、ハヤテの体が反る。
 直後、ハヤテは跳べず、その場で体をふらつかせた。

 そのヒーローの隙を見逃す獣機ではなかった。

「今だ」

 片方の掛け声とともに、獣機二体は跳弾狙いではなく、直接ハヤテに三連装銃の照準を合わせた。

「う゛ああ゛ああッ!!」

 速射が開始された。
 ハヤテが弱って回避できないと見たのだ。
 これまでのような銃弾を温存する撃ち方をやめ、これでもかというほど撃つ。

「うあァああ゛ああッ――!!」

 大きなあえぎ声があがるなか、二体はさらに撃ち続けた。

「あ゛あ゛ああああッああ゛ああっ――――――!!」

 二体の銃弾は、ほぼ同時に切れた。
 部屋に一瞬の静寂が訪れる。

「……ぁ……」

 顎が上がり体が反ったまま直立するハヤテから、小さなうめき声が漏れた。
 電子警棒が手から離れて自由落下し、乾いた金属音を立てる。
 そしてスーツから白煙を上げながら、後方へと倒れていった。

 床に仰向けで沈んだハヤテ。
 小さなコンクリート片を踏みつぶしながら、獣機二体がゆっくりと近づいてくる。

 まだ意識があったハヤテは、痙攣する手を探るように動かし、電子警棒を探した。
 ちょうどよい場所にあったが、握るだけで精いっぱいだった。

「調査目的で来たのにヒーローを一人仕留めることができるとはな」
「まさかの大戦果だ」

 少し離れたところで、足音がとまる。

「ぅ……ぁ……」

 まずい――。
 そう思って全身に力を入れようとするハヤテだったが、起き上がることができない。

 頭のみ持ち上がったが、向けられていたのは並んだ二個の不気味な黒い円。
 横に並んだ二体の前腕の上からパカリと出ていた、大口径砲の黒い砲口だった。

「とどめだ」

 機械的な冷たい言葉が投げかけられたそのとき――。

 廊下のほうから、バン、という扉を閉めるような大きな音がした。

「なんの音だ」

 二体の顔が、大きな部屋の出入り口のほうへと逸れる。
 その瞬間、ハヤテは全ての力を右腕と右手に集中させた。

 動いた。
 細かな狙いなど当然つけられない。だがやらないと確実にやられる。
 限りなく闇雲に電子警棒の先を向け、銃機能のボタンを押した――。

「ガアッ――!」
「何――!?」

 獣機の声は一瞬でかき消され、大きな爆音が部屋に響く。
 そして、大きな金属音。

 爆炎がやむと、ハヤテは痛む体に力を入れ、なんとか上半身まで起こした。

 二体がいた場所には、獣機だったものの細かい破片が散らばっていた。
 ヤケクソの一撃が獣機の片方の砲口に命中し、内部の砲弾が誘爆したのだ。

 ハヤテはすぐに壁のほうを見る。
 もう一体の獣機が、壁際に倒れていた。
 爆発に巻き込まれ、超高強度コンクリートの壁に打ち付けられたのだろう。

「おのれ――」

 起き上がり体勢を整えながら、また大きな砲口を向けてくる。
 そしてそれが命取りとなった。
 ハヤテはそれを逃さず、二発目の発砲をおこなっていたのである。

 今度は比較的しっかりと狙えた。
 得意の射撃。正確に砲口を捉えた。

「グガアッ――!」

 ふたたび、獣機の声と大きな爆音。

「や、やったか……」

 敵の四散を確信してそうつぶやくと、気が抜けたハヤテは失神して崩れ落ちた。



(続く)
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『勇者の股間触ったらエライことになった』
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