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第1部 終わるかもしれない新生代
第7話
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「ワタルは下がっていてくれ」
そう言ってヒーロー・ハヤテは、人型獣機に突っ込んでいった。
動きが速い。
公務員試験予備校のときの個体のように、獣機が右手の甲から三連装銃を出した。
しかし速射するも当たる気配はない。
グリップの利く屋上の床面で、ハヤテは自在に跳躍していた。
すぐに距離は詰まる。
銃を諦めた獣機は、これまた公務員試験予備校のときの個体のように、右前腕から刃を出した。
接近戦で、電子警棒と刀の対決となった。
ハヤテが勢いのある警棒さばきと素早いフットワークで獣機を攻め立てるが、獣機も巧みに受け、関節へのスタンガン差し込みを許さない。
やがて双方が一度退き、間を取った。
「さすがはヒーローといったところか」
ヒーローの動きを捉えきれない獣機が、抑揚こそないが感嘆の声をあげた。
ハヤテも肩を上下させ呼吸を整える。
「広いところなら自由に戦えるからな。撃たれる前に動ける。こっちのもんだぜ」
「ほう。ならばこれはどうかな」
今度は獣機のほうから距離を詰めてきた。
ハヤテが電子警棒を両手で支え、払い斬りを受ける。
すると――。
獣機の右下肢からも刃が出た。
右前腕から出ているものと異なり、湾曲した形状で、前方へと伸びた。
脚とともにその刃が振るわれ、ハヤテは左下肢を強く斬られた。
「ぐあっ」
スーツから火花が上がる。
彼は後方に飛んで下がったが、着地時に左足がガクッと崩れかけた。
格闘技のカーフキックで狙われる部位――鍛えるのが難しい下肢外側を斬られ、力が入らなくなったようだ。
獣機はその隙を逃さなかった。
右手の甲の三連装銃が火を噴く。
弾丸は、今度は右足の腿を捉えた。
「うああっ!」
まともに命中し、散る火花。
たまらず右足を手で押さえようと伸ばした左腕にも、容赦のない弾丸が――。
「あああっ!」
仕上げにと、獣機はハヤテの胸部や腹部に銃弾を速射した。
「うあァああああッ――!!」
着弾箇所から次々と火花が上がり、彼は体を痙攣させた。
「ぐ……」
小さくうめくと、ハヤテの両膝がガクリと折れ、ついに屋上の床面へと倒れた。
「ハヤテ!」
後方の給水タンクの陰に避難したワタルから、今にも飛び出してきそうな声。
「……ぅ……だ、大丈……夫……だっ」
ハヤテはそれを制すと、もがきながら立ち上がった。
しかし何とか電子警棒を構えようとするも、すでにフラフラだった。
するとそこに、獣機が左手のひらを向ける。
その中央に空いていた穴から、メタルのムチが飛び出していき、ハヤテの首を絞めた。
「う……ぐ……」
ハヤテは苦しそうにうめきながら解こうとすしたが、びくともしない。
「足を封じれば、こうも簡単というわけだな」
獣機がそう言うと、ムチに力が入った。
伸ばしたムチの角度が斜め上方向へと変わっていく。
「ぐあっ……ああっ」
空中に持ち上げられ、足をバタバタさせるハヤテ。
「これは耐えられるか?」
静かな声とは裏腹に、この白昼でムチ全体が白く、激しく光った。
「あ゛がぁぁぁぁぁあっあ゛あ゛ッ――!!」
吊るされたままのハヤテの体が大きく反る。
大きなあえぎ声とともに、彼の体に密着するスーツが光り、ところどころに爆発を起こした。
電子警棒が右手から離れ、床に落ちて弾み、転がっていった。
「どうだ? そのスーツを着ていても高圧電流は体に相当こたえるだろう」
ムチがゆるめられると、ハヤテの体は自由落下し、どさりと床に落ちた。
ゆっくりと、獣機がハヤテに近づいた。
鍛えられているが、まだ十代でラインの柔らかい彼の体。それを一度蹴って転がした。
「ぐぁ……ぅ……」
「お前には同胞が多数世話になったと聞いている。楽に死なせるわけにはいかない」
仰向けにさせられ、痛みであえぐハヤテ。
獣機は冷たい声とともに彼を見下ろすと、上げた足をその腹部に勢いよく下ろした。
(続く)
そう言ってヒーロー・ハヤテは、人型獣機に突っ込んでいった。
動きが速い。
公務員試験予備校のときの個体のように、獣機が右手の甲から三連装銃を出した。
しかし速射するも当たる気配はない。
グリップの利く屋上の床面で、ハヤテは自在に跳躍していた。
すぐに距離は詰まる。
銃を諦めた獣機は、これまた公務員試験予備校のときの個体のように、右前腕から刃を出した。
接近戦で、電子警棒と刀の対決となった。
ハヤテが勢いのある警棒さばきと素早いフットワークで獣機を攻め立てるが、獣機も巧みに受け、関節へのスタンガン差し込みを許さない。
やがて双方が一度退き、間を取った。
「さすがはヒーローといったところか」
ヒーローの動きを捉えきれない獣機が、抑揚こそないが感嘆の声をあげた。
ハヤテも肩を上下させ呼吸を整える。
「広いところなら自由に戦えるからな。撃たれる前に動ける。こっちのもんだぜ」
「ほう。ならばこれはどうかな」
今度は獣機のほうから距離を詰めてきた。
ハヤテが電子警棒を両手で支え、払い斬りを受ける。
すると――。
獣機の右下肢からも刃が出た。
右前腕から出ているものと異なり、湾曲した形状で、前方へと伸びた。
脚とともにその刃が振るわれ、ハヤテは左下肢を強く斬られた。
「ぐあっ」
スーツから火花が上がる。
彼は後方に飛んで下がったが、着地時に左足がガクッと崩れかけた。
格闘技のカーフキックで狙われる部位――鍛えるのが難しい下肢外側を斬られ、力が入らなくなったようだ。
獣機はその隙を逃さなかった。
右手の甲の三連装銃が火を噴く。
弾丸は、今度は右足の腿を捉えた。
「うああっ!」
まともに命中し、散る火花。
たまらず右足を手で押さえようと伸ばした左腕にも、容赦のない弾丸が――。
「あああっ!」
仕上げにと、獣機はハヤテの胸部や腹部に銃弾を速射した。
「うあァああああッ――!!」
着弾箇所から次々と火花が上がり、彼は体を痙攣させた。
「ぐ……」
小さくうめくと、ハヤテの両膝がガクリと折れ、ついに屋上の床面へと倒れた。
「ハヤテ!」
後方の給水タンクの陰に避難したワタルから、今にも飛び出してきそうな声。
「……ぅ……だ、大丈……夫……だっ」
ハヤテはそれを制すと、もがきながら立ち上がった。
しかし何とか電子警棒を構えようとするも、すでにフラフラだった。
するとそこに、獣機が左手のひらを向ける。
その中央に空いていた穴から、メタルのムチが飛び出していき、ハヤテの首を絞めた。
「う……ぐ……」
ハヤテは苦しそうにうめきながら解こうとすしたが、びくともしない。
「足を封じれば、こうも簡単というわけだな」
獣機がそう言うと、ムチに力が入った。
伸ばしたムチの角度が斜め上方向へと変わっていく。
「ぐあっ……ああっ」
空中に持ち上げられ、足をバタバタさせるハヤテ。
「これは耐えられるか?」
静かな声とは裏腹に、この白昼でムチ全体が白く、激しく光った。
「あ゛がぁぁぁぁぁあっあ゛あ゛ッ――!!」
吊るされたままのハヤテの体が大きく反る。
大きなあえぎ声とともに、彼の体に密着するスーツが光り、ところどころに爆発を起こした。
電子警棒が右手から離れ、床に落ちて弾み、転がっていった。
「どうだ? そのスーツを着ていても高圧電流は体に相当こたえるだろう」
ムチがゆるめられると、ハヤテの体は自由落下し、どさりと床に落ちた。
ゆっくりと、獣機がハヤテに近づいた。
鍛えられているが、まだ十代でラインの柔らかい彼の体。それを一度蹴って転がした。
「ぐぁ……ぅ……」
「お前には同胞が多数世話になったと聞いている。楽に死なせるわけにはいかない」
仰向けにさせられ、痛みであえぐハヤテ。
獣機は冷たい声とともに彼を見下ろすと、上げた足をその腹部に勢いよく下ろした。
(続く)
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