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第1部 終わるかもしれない新生代

第2話

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「行くぜ!」

 ヒーローが電子警棒のスタンガン機能のスイッチを押し、人型獣機に突っ込んでいく。

 獣機はメタルの体を持つため、銃機能だけで倒すことは難しい。
 主に使う機能は、電子警棒のスタンガン機能。
 もっとも効果的な攻撃は、頭部にある電子頭脳を停止させることだからだ。
 接近戦で獣機の関節に差し込み、ショートさせることが最善であるとされている。

「ヒーローだな。まずお前から始末してやる」

 獣機はそう言いながら、手の甲の三連装銃を彼に向け発砲した。
 彼はサッと跳躍してそれをかわした。速い動きだった。
 着地先が机の上になってもバランスを失わず、さらに撃たれる銃弾もそこから跳躍してかわしていく。

 距離を詰めた彼は、着地した低い体勢から起き上がる勢いを利用し、斜め下から首めがけて電子警棒を突き出した。

「どうだっ」

 ショートというよりも、爆発のような、そんな凄まじい音がした。

 だが、もっとも理想とされる首の関節には刺さらなかった。
 獣機が左手で受け止めたからだ。
 スタンガン攻撃をまともに受け、煙が上がっていた。

「グアアッ……」

 獣機の声。
 いまのところ、痛覚はあると結論付けられている。この反応を見ると間違いはなさそうだ。

 手にも関節はある。
 体内にブレーカーが存在することがわかっているため、これで全身が動かなくなるわけではない。しかし少なくとも左手は使えなくなるだろう。

 彼は一度電子警棒を戻し、すぐに動く。
 右手の甲の三連装銃を撃たれる前に、首を――。

「……!」

 しかし、その一撃も右手で受け止められた。
 またも激しいショートの音と、獣機の声。

「反応いいな。でもこれで両手使えないだろ」

 これで決まりだ。
 そう言わんばかりに、今度こそ首に、電子警棒を突き出そうとした。
 だが――。

「ぐあっ!」

 赤色と黒色が使われた密着型の戦闘用スーツ。その腹部から、火花が散った。
 獣機の強烈な前蹴りが命中したのだ。
 スーツ内部には、ごく薄いが回路部分がある。強く蹴られた部分がショートを起こしたようだ。

 意外な攻撃だったのだろう。まともに食らった彼は、体をくの字にした状態で後ろに飛ばされた。

「ぐ……」

 机や椅子をなぎ倒しながら倒れ、腹部を押さえる。
 高い防御力を誇るボディスーツではあるが、奥へ響くダメージは抑えられない。

 そして彼が起き上がったときには、すでに獣機は踏み込んできていた。

「ああっ!」

 スーツの右上腕から火花が散る。たまらず彼は左手で右腕を押さえた。
 獣機の右前腕からは、いつのまにかヒーローが使う警棒よりも少し長い刃物が生えていた。それで斬られたのだ。
 手の甲の三連装の銃がショートして使用不能になっため、使う武器を切り替えたようだ。

 なおも獣機は上段から斬りかかってきた。
 右腕のダメージが抜けきらない彼は、電子警棒を両手で必死に支えて受ける。
 再度上段に構えた獣機は、そこからまっすぐ振り下ろさず、薙ぎ払いの一撃を放った。

「ぐぅあっ!」

 また腹部から火花が散る。内臓に強い衝撃を受け、ヒーローの体は折れ曲がった。
 そして苦痛に耐えながら態勢を戻した瞬間――。

「うあああっ!!」

 鋭い突きが、胸部に命中。
 スーツの小爆発音とヒーローの声が、大きな部屋に響いた。

 高い防御力を持つスーツのおかげで、体を串刺しにされることはなかった。
 が、強烈な一撃を鳩尾に受けた彼は、飛ばされるように仰向けに倒れた。体がバウンドする。

「……あ゛ぁ……ぁっ……」

 また床に沈んでしまった彼は、両手で胸を押さえ、苦しそうに体をくねらせた。

「形勢逆転だな」

 無機質な声で、獣機はそう言った。



(続く)
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