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第四章 目覚める才能

第6話 密林の攻防

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「あなたが調査部隊をほんろうしてた妖怪?」
 念のために聞いてみる。もし間違っていたら振り出しだ。でも彼女はうなずいた。
「ええ。あの脳筋部隊の件の主犯は私。けれどあれも今も、私は正当防衛のつもりで行っている」
「正当防衛?」
「この森の永遠を守るためにね」
 私はアルに言ったのと同じ答えをした。
「永遠なんてつまんないよ。終わりがあるから美しいのだってあるじゃない」
「その終わりのせいで私は生まれた」
 少し考えてから言った。
「・・・・キャンプ場が閉まったから、か」
「・・・あなたに話す理由はない」
「いいよ。あなたの思考はなんとなく分かった。でも過去にしばられちゃ意味はないよ」
「あなたに私の気持ちなんて分かりはしないわ」
「私もそう思う。それよりも先にやるべきことがあるしね」
「やっぱり他の奴と一緒なのね・・・・・」
 その言葉の意味を理解するのは簡単だった。私は武器を持たずに、忍術の構えをする。刃物などは通らないと思ったからだ。
「体の内側から呪ってやるわ・・・・!」
「こっわw」
 わざとらしく笑い、気分を落ち着かせる。これが今日のボス戦であることを、体がまだ認識していないのか思うように力をコントロールできない。こんな緊張感初めてだ。お腹が痛い。思わず右腕に抱えてしまう。
「あら、私が怖いの?」
 この子、私の腹痛を機転にする気?・・・・ここはガマンするしかないな。もうあとは知らない!
「・・・こわかない!さあ、決戦やろうよ!」
「ツケが回っても文句言わないでね」
 私はこのボス戦のために取っといたといっても過言ではない、秘密兵器を取り出した。
 テッテレーン、強力お札あ~~。これを使うと、強力な魔術を使うときに1回だけ魔力消費0になる!一応3枚持ってきたよ!妖術のプロにはしっかり対策しないと。
 まあとりあえず様子見の普通の術をしかけよう。どの程度か見極めるのは大事!
 風で吹き飛ばす?水で流す?氷で動きを止める?炎で焼く?いずれにしろダメージを与える!たとえゲームで言う弱いから1しかけずれないっていうあの状況でも!
 さっき属性に入れられそうなパターンを挙げたけど、結局選んだのはおそらく無属性。しかも攻撃系でもない。レベルを推し量るため、バレる覚悟で行う。
 ちなみに無属性の術はあの漢字を唱えるのをしなくても、パワーさえ貯めればいい。頭の中で術の効果範囲を決めて、自分の全体像を思い浮かべる。そして自分でカタカナ風に変換した名前をさけんだ。
蜃気楼封鎖ミラージュロック!」
 しんきろうって知ってる?屈折によって遠くのものが近くに見えるような感覚になる現象のこと。実は私も名前は聞いたことあるけど、ちゃんと意味知ったのこれが初めてなのよね。昔は妖怪の仕業って言われてたんだって。
 んでこの術は、まずターゲットの周りに見えない気体のスクリーンを作る。この時点で何のこっちゃだね。そしてそのスクリーンに映したいものを頭に思い浮かべて、フィルムを用意する。最後忍術エネルギーを使って映し出す。スクリーンは360度展開し、音や匂いも再現できるから臨場感がハンパない。再現にかなりのエネルギー使うから、これを覚えるのにかなり時間をつぶした。
 私は自分とキツネの間隔の中心を円の中心とし、コンパスのように円を描く。その円周にスクリーンを設置した。今自分はスクリーンの内側にいる。逃げているように見せれば、足止めできる。
 足腰に力を込め、めいっぱい跳ぶ。しんきろうの外側にある木に着地し、自分が投影されている情景を思い浮かべる。
 すると内側から声がする。
「なっ!いきなり逃げるなんて!」
 かかってる!そしてちゃんと映ってるっぽい!いつ切れるかわかんないけど、このまましばらく様子を見よう。
 このスクリーンは幻を映し出すだけでなく、中に相手を封じこむこともできる。タイミングを見て攻撃すれば!
「なーんてね」
「?」
 木の枝に座りながら余裕げな声を聞く。・・・・・まさか!想定内とはいえ、ずいぶん速かったじゃない。いや最初から気づいていた。やっぱりただものじゃあないね。
 霧は四方八方に散り、私のしんきろうはちぎれるように消える。
 彼女は私をちらっと見た。逃げてもムダと言いたいのか?なんにせよここから降りるしかない。
 シュタっとカッコよく決めて芝生の上に飛び降りる。最初に口を開いたのは私だった。
「最初から気づいてた?」
「ふ、忍者の血縁を持とうがしょせんは二流、いや三流。何を唱えても私の経験には勝てないわ」
「長いこと力を持っているの?」
「ええ。もうはや10年。それに対してあなたは・・・・、せいぜい半年ってとこかしら」
「マウントじゃないけど、実は1ヶ月も経ってないよ」
「うそっ!」
「ふっ、思ったより見る目ないんだね」
「・・・・・・だったらなおさら倒しやすい・・・・・。力の差を思い知りなさい・・・・・!」
 キツネは声を震わせ、私をキツい目でにらむ。
 ここからお互い手を抜くつもりはなくなるはず。この一戦で決着をつける!
「妖技・霊法、万騎夜光・祭!」
「!」
 聴いたことのない技だ。ただ万騎夜行と言っているので、分身かアバターを増殖させるような技かとは予想できる。そしてその読みは当たっていた。彼女の周りに、最初に戦ったゾンビと同じようなヤツらが、次から次へと地面からはい出てきて、あっという間に私は取り囲まれた。ゆうに今目に見える数だけで100体は超えるだろう。しかも彼らの肉壁はとても厚い。どこを見回しても、外側をのぞけない。
「そんなっ」
「次は私から。この包囲網を抜け出せるかしら。倒しても倒しても終わらないこの祭から」
 これがアイツの力試し・・・・。数的に負けてる。普通の戦略ゲームでは絶対勝てない状況だ。・・・・ううん、だからこそ!これを突破するんだ、強くなった意味が分からないじゃない!
「コイツらには刃は通ったはず・・・・・」
 つぶやきながら腰の鞘から刃を抜き、今正面にいる敵に突きつける。相手もそれを見て、攻撃態勢に入る動作をする。
「この忍者・佐々木千代が、全員この刃で体を断ち切る!」
 両手に持ち、構える。緊張してないのに、足が後ろに下がる。
「さあ、どこからくる?」
 言い終わった瞬間、前方の集団が一斉に動き出した。それと一緒に他の方位の敵達も襲ってくる。
 私が今使っている刀は黒鋼刀こくこうとうといい(ネーミングセンス神)、他の刀と違って専用技が多く存在する。技名は皆鉱石をモデルにしている。例えば・・・・・。
柘榴真突ざくろしんとつ
 一番先頭にいたゾンビのお腹を深い部分までつらぬく。数を数える間も無く自分の方へ刃を引く。とりあえず改めて刃が通ることを、確認できた。被害者は前に倒れ、体は消えていく。
 ざくろはオレンジ色の宝石ガーネットの和名。この宝石は真実や実りのような意味を持つ。
 真っ直ぐ突くことで、『真実』を表現しているのかもしれない。
「オレンジ色・・・・・・。聞いた通りだ」
 この刀、名前に黒ってついてるのに使う技によって刀身の色が変わるんだよね。なんか不思議。
「次はもっと色濃くしちゃうぞ!」
 由紀ちゃんの刀より真っ赤にできる自信がある。なんせ名前がそんな風だから。
「日輪影斜!」
 宝石にわかなので詳しいことは言えないけど、サンストーン、日長石がモデル。名前だけは知ってる月長石の対ってやつだ。
 この技はとても範囲が広い。刀を絶対離さないようにしっかり握り、なるべく止まらないように体を回す。太陽が広い大地に光を照らすように、刃から少し遠くの敵にも影響を与える。熱風や衝撃波も起こるので、たとえ自分が見えなくとも、体力をけずれる。
 ただパワーの消費量が通常の1.5倍ほど多い。この数値は自分基準ではあるけど、普通より出し切った時の疲れの溜まっている量が増えている感がする。
 今回はほぼ体力満タンの状態だったから良かったけど、連発するには多分向いてない。打てるとしたらあと1回。
「ぐううううう・・・・・・・・・」
 半径30センチ以内にいた敵はそのまま消失し、そのちょっと奥の群れはうめいている。3割は倒せたかな?壁の向こうにちらちらと木々が見える。これでもう1度ぐらい技を出せば!
 ボコボコっ・・・・・・・。
「?」
 何だ、!地面が揺れる。刀を杖にしながら何とか立つ姿勢を保つ。自分の体重で切っ先がぐさっと深いところへ進む。とその時、地面では硬い感触が柄を通して伝わってきた。しかもそれは地上に向かってせりあがってきてる!急いで引っこ抜くと同時に現れたのは。
「!!!!」
 さっき倒したはずのゾンビだ!しかも無傷だし!それも自分が向いている方向だけでなく右でも左でも後ろでも。同じことが起こっていた。
「うそ・・・、私今からコイツら全員倒すの?こうやって復活するやつらを?」
 おそらく私がこの第二陣を倒そうが、また土から現れて殖えていく。そんでもって・・・・・。
「数、多くなった?」
「ふ、その通り」
「!」
 霊子だ。勝ちほこった余裕の笑顔を向けて、私を見下ろす。無限ゾンビ包囲網に私が負けるとでも思っているのが一発で分かる。くやしいので無理に笑顔を作り少しだけ皮肉ってみる。
「あんたいい部下いっぱい持ってんじゃん。私ちょっと自信無くしてきた」
「いいわね、そんなにくまれ口をたたけるぐらいの脳があって」
「っ!・・・・・・」
「自信をなくす?あなたこれっぽっちも思っちゃいないでしょ?この状況にくっするなんて」
「・・・・・・・」
「その素直じゃない心が時に命取りになる。私は今まで、こう考えて生きてきた」
 今くやしいのは思うように受け取ってもらえなかったからというのもあるが、何より彼女が正論を言っていることだった。自分は意識してない大事なことを、敵対者に言われるなんて・・・・!はずかしいやら情けないやら、だ。
「ま、その言葉もいずれ本当になる。なんせコイツらは一気に全員倒さないと、直前に倒した人数の3倍殖える。1人でも残したら、その時点で終わりよ・・・・・」
 それを聞いて我に返る。だがさっきの感情をまだ全て飲み込めておらず、不自然な握り方をしてしまう。
「感情が安定してないわね。好機だわ」
「!」
「やりなさい!」
 甲高い声で指示されると同時に、およそ3倍に増した大軍勢が私に集中攻撃。よけるのは難しい。攻撃にも転じにくい。
 待って今は_____。そこまで脳が言った時、空を見上げる。もうこれしかないな。現時点では。ズルい手だけど、どうしても時間が欲しい。
「んんええいっ!!」
 平均的な2階建ての家の屋根ほどの高さまで大ジャンプし、強力お札を取り出す。
「霧隠・転送!」
 お札が手のひらから消える瞬間、私はいつの間にか静かな芝生の上に転がされた。でもその後、疲れのせいか私はあっという間に意識を手放してしまった。

「千代」
 名前を呼ぶ声がする。すぐにここが夢だと理解する。だって今夢の世界は、基地で春と遊んでいる途中の様子を描いているのだから。服も忍者じゃなくてしましまの和服になっている。本当なら、暗い森のせまい芝生の上のはずだ。
 なぜかしっかり感触がするじゅうたんの上で身を起こす。目の前に春がいた。
「大丈夫?」かなり気持ちのこもった声だ。
「ん、うん。平気」頭が回ってないのか、気の無い返事を知らずに返している。
「・・・・そっか」
 何だか気まずい雰囲気だ。いつもはこうじゃないのに。普段起きた後は、見た夢の話とかすぐに始める。何かしらの料理が夢に出てきて食べた、と言えば本当に作ってくれることも多い。
 この空気を何とかしようと思った私は、とりあえずこういった。
「さっき春が作ってくれたしょうが焼きの夢、また見たんだ」
「・・・・ってことは食べたいのね。千代がそれを見るときはいつも私の食べたい時ともかぶってるし、何でだろ」
「わかんないw」
「ほんとだよ。作るから、一緒にやろ」
「うん」
 ここで長居しちゃいけないって分かってる。でも食べるだけだからと思いながら、私は食堂のちゅう房に立っている。私が玉ねぎを切る横で、春はぶた肉のパックを手際良く開ける。そしてカット、味付け、材料の受け渡しなどの作業をムダのない動きで進める。
 フライパンがジッジッと油の音を立てる。湯気が立ち上るを目で追う。しょうがが溶けて肉に溶けていく。匂いがどんどん強くなっていく。それでも現実に戻る気配が自分でもしなかった。いつまでここにいるんだろう。頭のすみでひっそり考えていると、食器棚からお皿の取り出される音がして我に返る。
「出来たよー」
「!・・・うん」
 風の通る食堂の一角のテーブルに、大きなお皿が置かれる。玉ねぎやすりおろしたしょうがを一緒に混ぜたぶた料理が完成した。もやあと湯気がフライパンの上の時と同じくらい立ち上る。
 イスに座り、手を合わせる。
「いただきます」
 不思議なほどに味をしっかり感じる。しょうがの苦さがのどもとをすり抜け、タレの中に隠れた甘味がゆっくり浮かび上がってくる。肉の食感もいつも食べているのと変わらない。
 夢の中でもこんなに美味しいものを作ってくれるのことが素直に嬉しく思う。涙をにじませながら、静かにいただく。その様子を彼女も何も言わずに見ていてくれている。こんなににぎやかじゃない食事は久しぶりだった。
 あっという間に料理のなくなったお皿を持ち、返却口に戻す。後ろから同じように食べ終えた春が聞いてくる。
「美味しかった?」
「・・・・うん。ありがとう」
 食事中ずっと口をつぐんでいたから、話すのが気まずい。
「・・・千代」
「ん?」
 彼女の顔を見た瞬間、視界がぐらりと揺れる感覚を覚える。目覚めようとしてる・・・・?そっと耳の中に入った小声が、トドメになった。
「いってらっしゃい」
 パリン・・・・・・、遠くでお皿の割れる音がした・・・・・・・・。

「!」
 私は目を開けた瞬間ピョンとはねて起き上がる。・・・・起こしてくれたのか、春が。助かったな。
 ゾンビが周りで待機している。またさっきと一緒で囲まれている。まあ油断してればいつか気づかれるよなあ。でもそんな長いことねてたかな?いや人より気配を察する力があるのかもしれないな。
 さて、どうやって片付けよう?ゲームで言う一撃技で終わらせるしかないと言うことは分かる。
 ・・・・この際フルパワーでかかるしかない!ここはしぶらずやってしまおう!日輪影斜より超強力な高火力技、この世界で一番美しい宝石ダイヤがモチーフの必殺一撃!
 地面に落としていた刀を拾う。
 あせがにじむぐらいキツく柄を握り、今出せる最高の力を刃に込める。パワーに反応した刀が私の手のひらから出てくる光をまとい、白くあわく輝く。表面も宝石のようにきらめいている。
 輝け!ダイヤモンドのように!貫け!地中のその奥まで!いっけえ!!
「金剛煌震!」
 土の中の深い場所に刀を突き刺す。光のオーラが地中に沈む。すると地面にヒビが入るように線が枝割れを描きながら光がもれだす。それにともなって地震が起きる。揺れを感じた瞬間、私は0.1秒ぐらいのスピードで刀を引っこ抜き、自分の身長(154センチ、実は加奈ちゃんより高いんだよねー)の3倍ほどの距離を目指してはばとびをする。時々ゾンビが脚をつかんでこようとするのだが、ギリ腕の長さが届かなかったのでセーフ。分厚い壁を持つ門を跳びこえ、外の世界へ出る。その後ろで、ただならぬ音が立つ。
 ゴゴゴゴゴゴ・・・・・・・・・、・・・・・・・・ゴバアアアッッッッ!!!!!
 地中から噴水のように太陽ほどの光が噴き上がる!それは繰り返し生きる体を完全消滅させるほどの力を持つ。
「グニニャアアァァ!!!!!」
「う、がああっっ」
 耳に響く無数の断末魔を聞きながら、光の柱を見上げる。半径2.5メートルぐらいの円柱は段々と細くなっている。パワーが落ちてきている。でも敵を倒すのには最初の段階で十分だった。
 目を左手で隠していると、ピシっと刀からイヤな音がするのに気がついた。チラッと視線を追ってみると、刀身をおおっていた輝きがなぜか固体化している。それもよく見る間もなく、固体は割れて、地面に途中で溶けてしまった。残ったのは銀色の刃。
「なんだったんだろ」
 そう言った数秒後、ウウン・・・・・・と柱が姿を消した。
 この技はダイヤモンドを元にしている。金剛はダイヤモンドの和名。刀身にさっき言ったようにダイヤのような白い宝石が結集し、刃の強度を上げて技発生時の時だけガードを上げる仕様になっている。そして白宝のようにまぶしい光のビームを地中から噴出して、周囲の敵を全滅させる。かなりの大技だ。でも見た目のわりにパワーの消費量が少ないんだよね。単発で出す分にはリスクはないらしい。
「すっご。完全撃破しちゃったわ」
 壁のあった場所へ目を落とす。そこには少しの焼け跡となぜ戻ったのか分からない地面があった。
「なんで?ヒビ割れどころか大きく貫いてたのに・・・・」
「____そりゃ私の力よ」
 !霊子。いつの間に。いやワープ能力持ってたら当然か。ってことは、私が飛んだのも気づかれてた?
「私の精神への攻撃が効いたようね。途中まで心が落ち着いてなかったでしょ」
「でも友達が助けてくれた。夢なのにしょうが焼きの味がしっかりしたのは不思議だけど」
「・・・・・・」
「あなたにもいるでしょう?何でも話せる友達が」
 私が言い切った時、キツネの周りに怪しいオーラが集まり彼女をつつみこむ。毛の色が白から黒へ変わり人魂のフェイスペイントは青く光る。一体に何に反応してこうなったんだろう?
「とも・・・・・だち・・・・・?」
 震えるような声で何とか言い切るその姿は、彼女の感情をあらわにしていた。
「あんた・・・・・?」
「本気で・・・・・・・言ってる・・・・の・・・・・?」
「?」
「友達なんて・・・・・うすっぺらい言葉・・・・・久しぶりに聞いたわ・・・・・・」
「!?」
 頭の中はますます混乱し何を言っていいのかわからなくなってしまう。こんな状況、落ち着きようがない。
「うそつきに話す権利はない・・・・・・!!」
 下を向いて垂れ下がった毛で見えなかった瞳がちらっとのぞけるようになる。だが見た瞬間、私はした。ぬいぐるみのようなつぶらな輝きはなくなり、いわゆる、しょうてんが合ってないって状態?みたいな目をしている。怖いほどに乾いた眼差し・・・・・。
「あなた達はいいわね・・・・・・。のんきに人間関係とやらを、整理できないほど作って・・・・・・。だまし合って、ゆるい感情で許しあう・・・・・・。そんなだから・・・・・この森みたいなことになるの・・・・・・」
「何の・・・・話・・・し?」
 つられて私も言葉がとぎれとぎれになる。
「私はそのうすい関係から生まれた・・・・・。人が人を簡単に許した末路・・・・・」
 うつろな口調と目が言葉じゃ足りない感情を語っている。悲しいような苦しいような、そんな気持ちを胸の中で描いている。そんな風に見えた。
「私達をだました罪をあなたにかぶせるつもりはない・・・・・・・。でも・・・・・・・・」
 ようやく彼女は顔を真正面にむけ、顔をよく見せる。
「っ!」
 重圧感に気圧されるとはこういうことだね。今アイツの体の中にあふれるほどの悪い気がたまっている。表情がそれを証明している。険しい怒りと上手くできない笑顔が混ざった不思議な顔。こちらも赤から青に変わった目玉が純正な悪を表現している。
 真っ黒の心と体に飲まれたケモノは、顔をゆがめながらつぶやいた。
「・・・・・・・私の、若き霊力のいしずえになりなさい・・・・・・・。これはこの森の所有者からの・・・・・当然なばつよ・・・・・・!」
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