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第四章 目覚める才能
第2話 任務受注
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プルルル・・・・、プルルル・・・・・。かちゃっ。
「もしもし?」
『良かった、つながって。千代ちゃんだね?』
いきなり”ちゃん”付けははずかしいが、今はそれどころではない。
「そうです。何があったんですか」
『・・・・・他の3人にも聞いてほしい。今、そろっているかい?』
「ええ、いますよ」
『スピーカーをオンにして』
ゲームをするためにどかしておいたテーブルを引き寄せ、その上にスマホを置き、スピーカーをオンにする。
『皆元気ー?』
会長は明るく、男性にしては美しい声で私達に聞く。
「はい。元気でーす。お久しぶりですね」
由紀ちゃんが全員を代表して、スマホに向かって話す。
『そうか。良かった』
「で、用事があってかけたんでしょう?何ですか?」
加奈ちゃんがさも興味深そうに彼にたずねる。
『そうそう。千代ちゃんに初任務を課そうと思って』
「!!!」
皆でお互いの顔を見合わせる。いよいよ、か。緊迫感の感情が、全員の表情からうかがえた。
『緊張してる?』
しばらくの沈黙から、状況を悟ったんだろう。努めて優しく、ヴァンさんは言ってくれる。
『大丈夫。まだ弱い怪魔だから。それに誇りに思ってくれよ~、会長からの直々の任務なんて、めったにないんだよ?』
「確かに」
「レアかも」
いくら自分の友人がスカウトしたとはいえ、スカウトされた人材が優秀であるかは別の話だ。トップ自身から声をかけられることは、かなり高いスキルを持ってないとなしえないことである。
「がい要は?」
当人の私はワクワクしながら、答えを待つ。しかし解答は少しコワい物だった。
『最近、幻魔界にある、知る人ぞ知るマイナーなレジャースポット跡地、”灼黒の森”で、怪奇現象が起こっている。そしてその原因が、怪魔の仕業ということを、幻魔協会の調査部隊が突き止めた。調査部隊の処理隊を何人か派遣したが、全員黒幕に振り回されて帰ってきた。全く歯が立たなかったそうだ。で、戦闘専門の機関である、”怪魔完全討伐部隊”の一員である、千代ちゃんに頼むことにした』
「どうして私を?」重ねてたずねる。
『君は忍者で、いろんな術が使えるだろう?それが攻略のヒントになるからだ』
「どういうこと?」
『親玉はあやしい術で調査部隊をほんろうし、追い出したという情報がある。だから、目には目を!歯には歯を!術には術を!と、そういうわけ』
「いやわかりません」私が的確にツッコむ横で、加奈ちゃんがははあとうなずいた。
「つまり、調査部隊は怪魔の術によって敗北した。調査部隊はただ調査するだけで、戦う技術はない。ましてやあやしい術に対抗できるのは魔術だけ。戦う専門機関に所属し、術などをたくさん持つ幻魔といえば千代ちゃんだ。だから、彼女を選んだ。・・・・そういうことですね?」
『そうだよ。でも何で調査部隊が戦い向きじゃないって、分かったんだい?』
「でなければ彼らだけで済むことですから」
「確かに」さっきから春は、『確かに』しか言ってない。
『君には灼黒の森に出向き、ボスを見つけ、倒してきてほしい。ごほうびはいくらでも出す。やってくれるかい?』
真剣な声で彼は私にお願いする。私は少し黙った。怖いと思う。不安の気持ちがある。しかし楽しみとも思う。・・・・楽しみというのは、やせガマンかもしれない。いや本心のような気もする。もちろん、断るという選択も出来る。でも、選びたくないと心が言っている。なぜ?答えは簡単だ。願いをかなえるため。誰かの幸せの一部になれたらいい。かなう保証は100と言えない。だが、0を1に近づけることは、勇気があれば・・・・!
「千代・・・・?」
春が心配そうな声をかけてくれる。その言葉に、背中を押された。決めた。スマホに向かって宣言する。
「分かりました。やります。絶対に居場所を突き止めて、勝ちます!」
『!』
「!!!」
聞いていた4人は静かな歓声を上げた。引き受けてくれて、会長さん自身はうれしいのだろう。3人は顔を見合わせ、私の出陣を喜んでいる。
『ありがとう。じゃあ明日、出発してくれ。一応、任務の詳細を書いたPDFを送るから、それ参考にして』
「はい」
『じゃあねー』
向こうから電話を切られた。顔を上げて深呼吸をする。光る画面から光のない天井に目を移す。まぶたがぱちぱち開閉を繰り返す。やっぱりブルーライトは浴びっぱなしじゃいけないね。
その後、しっかりゲームを終わらせた。1回目は加奈ちゃんの一人勝ち、2回目は私と由紀ちゃんのドローで、最終的に私が勝利してゲームセットとなった。皆達成感にあふれた清々しい笑顔で終えることができた。私が帰ってきたら、今度はチョビモンのマルチプレイをしようと決めた。これは由紀ちゃんも初めてらしい。ワクワクしている彼女は私に言った。
「千代ちゃん!頑張ったらまた一緒に遊ぼ!応援してる!」
欲見え見えの応援だ。それでもいい。誰かの幸せの一部になるには、まずは自分を幸せにすることから。私の今の幸せは、こんなに素敵な友達と毎日過ごせる事。他愛のない会話が一番心地よい。こんな日常が好きだ。
それにしても、任務ってなんか持ち物とかあんの?セオリー的なやつも知っとかないとな。松ノ殿に聞くか!
彼は修行室の倉庫を整理していた。ハシゴを立てかけ、上から4段目を両足でふみながらゴソゴソ何かやっている。
「あのー」
「ん、佐々木か。任務のこと聞きにきたのか?」
「そうです。ヴァンさんから聞きましたか」
「ああ。あいつずいぶん切羽詰まってんだろうなあ、少しあわてた様子だった」
「そんなふんいき感じなかったけど・・・」
「心配かけないようにトーンを落としたんだろう。君達とオレ・・・私とは、関係性が違うからね」
ヴァンさんのことを話すと、一人称が軽くなってしまう。彼のカワイイポイントである。
「で、何が知りたい?」
「そうそう、必要な持ち物とか心構えとかセオリー的なもの。教えてもらえませんか?」
「そらあいっぱいあるぞ。でも全部教えてもつまんないだろ?」彼は倉庫に目を戻す。
「お願いします、ぜひ!」
私はずいっと、倉庫に目を向けてばかりの彼に大きく迫る。
「っ!分かった分かった、分かったからっ、やめてくれ、離れ、ろっ!」
どけと言わんばかりに、私のほおにひじを突きつけてくる。
彼は今、二足歩行の美しい青年姿だ。宙に浮かぶおじいちゃんではない。青年の細い腕の先の整った手が支えているのは、宅配便が届けてくれそうな段ボールの箱。とその時。その手がツルッとすべって、段ボールが2秒ほど滞空し、彼の頭を軽々飛び越える。
「ああっ!!」
ドン!ガッシャーン!!!箱の重い音と、中に入っていたものがこぼれる音が重なる。私は段ボールが落ちてきたのに驚いて、後ろにスッテーンと背中から転げ落ちる。
「ったたた・・・、大丈夫ですか?」
武舞台のフチに頭ガイコツが当たり、激しい痛みが走る。それでも力を入れて頭を上げる。倉庫の方を見ると、床に尻もちをついてすっとんきょうな顔をしている神がいる。びっくりした拍子にバランスをくずしたのかも。ビジネスマンのようなスーツから、何回かほこりが地面へと落ちていった。彼は2度、目をぱちぱちさせてから、立ち上がって片付けを始めた。まるで何事もなかったかのように。その様子をじいっと眺めていると、彼は急に口を開いた。そのくせ、目は倉庫に向けている。
「で?」
「は?」
「私が、どうしても伝授しろってことか?」
「!はい、そうです。教えてください。分からないまま行くのは、自分が困りますから」
散らばった小物を箱にもう一度つめ、段ボールのフタを念入りにガムテープで固定してから、ようやく私を見た。
「これ入れてからな」
ゴクゴクゴクゴク・・・・。
「・・・・プハー!働いた後のお茶は美味いなあ」
さわやかな顔で彼はペットボトル半分のお茶を一口で飲む。でもそれ、私のなんだよ。1分前、収納を終えた彼は私に言った。
「なあ、なんか飲み物持ってないか?」
「・・・普通のお茶ならありますけど・・・・」
と言って見せると同時に彼はそれを横取りし、あっという間に全部あったはずのお茶を半分飲んでしまったというわけだ。おまけに、「ありがとう」と言いながら渡してきたのはキャップ開けっぱなしだし。つづけて、「あいよ」
とキャップをくれた。文句を言いながらも、キツくしめる。
「キャップぐらいしめてくださいよ」
「神にそんな面倒事を命じるのか?」
「・・・・・」
地位を見せつけられたら何も言えない。仕方ないと割り切ることにする。
「めんどくさいといえば、今からの説明も4人に1回ずつやるのはイヤだし、全員で聞いてもらうとしよう」
結局いつものメンツで話を聞くことになった。だが3人はイヤな顔一つせず、むしろ楽しみ~というような笑顔で集まった。巻き込んでしまって申し訳ないという思いが、少しだけ心を横切った。
「今日は何の話?」
「任務のルールとか種類とか、持ち物とかでしょ?」
「そうだね、千代が明日出発するからそれに合わせてじゃない?つーか今の由紀の言い方だと、遠足にも聞こえる」
「遠足に『種類』の話はないでしょう?」
「わかんないよ~、工場見学とか公園に行くとか色んなパターンあるじゃん?んで、一個一個行動違うじゃん?ああいうのと一緒かもね~」
「まあ、なくはないか・・・」
テーマがいまいちつかめない議論をしている前で、松ノ殿は何やら大きなモニターとプロジェクターをセッティングしている。英語で解読できない単語(プロジェクターを生産している会社の名前かも)が映し出されると、彼は映写機からしっぽのように垂れているコードを引っ張り、私のスマホと勝手につなげた。メールに送られてきたPDFファイルを開くと、ここがポイント!と言う時に使う長い指差し棒を構える。
「おまちどおさん。またまた説明会やるぞ~」
「今度はモニターがあって分かりやすいですね」
「今日はこれしないと絶対伝わらないから」
「そいじゃあ、お願いします」
うっし、と気合を入れてから彼の講座が始まった。
「じゃあね、幻魔界の任務の仕組みからいこうか。任務には4、いや5種類あったかな?とにかくパターンによって何するのか決まってる。さっきの遠足みたいにね」
「聞いてたんですね」由紀ちゃんははずかしそうに顔を赤らめた。
「まず1つ目、『ターゲット』」
なぜか彼の後ろで、バン!と効果音が聞こえた。
「これは指定されたターゲットを倒すことができれば、即完了。良くも悪くも一番シンプルな形式」
「ふーん」
「2つ目、『全滅』」
バン!
「エリア内の敵を全部倒すことが目的。必ず長期戦になる任務だ。どこから襲ってくるのかも分からない不安もあって、一番警戒が必要だな」
「ほほう」
「3つ目、『浄化』」
ババン!音が変わった。
「怪魔は、属性によっては人間にひょういするヤツもいる。そして事件を起こし、負の感情を芽生えさせ、新たな怪魔を生み出す。この循環を止めるには、事が大きくなる前に人から取り除かなければならない。その人は倒さず、怪魔のみ退けるやり方だ」
「とらわれている人は自覚ないだろうね」
「普通の人には私達も、怪魔も見えないから」
「私らがどうにかするしかないね」
「うんうん」
事件を起こして、警察にお世話になっても、怪魔の仕業なら仕方ない。でも当然、警察やその他純人間が怪魔を見抜けられるわけがない。信じてもらえる可能性もほぼない。単なる事件として取り扱われるしかなくなる。それがかわいそ過ぎる。こういう時こそ、私達の出番だ。令状が出される前に何とかしなきゃ。
「4つ目。パトロール、および潜入捜査。一番楽しく、一番厳しく、一番滞在時間が長い任務になる」
「楽しいのは見知らぬ場所で好奇心をそそられるから。厳しいのは人が多い場所では戦いでの被害が大きくなり、やりにくいから。長いのはいつどこで襲撃があるか分からないから、長期的に滞在し安全をカンペキに確保するため。簡潔にだとこんなもんですか」
由紀ちゃんがざっとまとめてくれた。でも、ざっと言うほどでもないか。
「100満点中、85点。厳しく、の部分が三角。あとは丸。記述にしたら私はこの評価をするかな」
「模範は?」
「君が言ったのに加えて、ルールや行動が制限的であること」
「なるほどお」
「ハデに動いたらかえってリスクが高まるのはあるね」
「あー、だね」
「やっちゃいけないな、そりゃ」
それぞれの意見に意見を重ね、賛同や評価をし合いながら話は進んでいく。
「やることも持ち物も敵の種類もみんな違うけど、今は、佐々木が課せられた『ターゲット』の形式を元に説明する」
「はーい」
神は指の棒をモニターに当て、注目をうながす。
「任務を受注すると、必ずこのPDFファイルで内容が書かれた紙がもらえる。これさえ読めば、大体何とかはなる」
「ほんとだ!持ち物、最長滞在時間とか、敵の強さとか・・・・」
「お役立ち情報満さいだなあ」
「持ち物は、佐々木の場合、ちょっとしたおやつ、予備のバクダンやまきびし、手裏剣、クナイなどの武器、のちに見せる回復薬が必須だ。他にもこのスマホ、時計も持っていくといい」
何というか、もうこれ内容を考えなければ完全に遠足の事前指導だ。武器を持ってく遠足なんてないけどね!
「重要はここ!最長滞在時間」
「・・・・3時間か」
「そう。この時間以内に完すいさせなければ失格となり、給料と昇格ポイントが半減する。任務の受注も減り、実際にやらなさすぎてクビになった者もいるそうだ」
「逆にしっかりクリアすれば、昇格ポイントが増えて、クラスが上がって、任務もお給料も増えるわけですか」
「へえ!そらあ良い!がーんばろー」
松ノ殿よりも、加奈ちゃんが先に反応した。さすが賞金稼ぎだけあるわあ。
「まあな。そう思ってもらった方がいい。君達もピリピリしないだろうし。ああ、思い出した。任務地の情報も調べておくといい」
「なんで?」
「そこが今どんな状態になっていて、どんな人々がいるのか、荒れたりしていたら何があったのか。それを知っていくと、ボスの動機や居場所が分かってくる。例えば荒れた遊園地。取り壊されて何年、何十年も経っている。かつて人気だったはずの遊び場は、近所問わず全国の来客に惜しまれ消えた・・・。悲しい気持ち、守れなかった悔しい気持ちが遊園地の跡に集まり、怪魔が生まれる。そしてソイツは無念を晴らすために、他の遊園地を呪い、同じ境遇にさせていく・・・・。荒れ果てた遊園地の怪魔を倒す任務なら、こんな経緯で事件が起こっているから、一番人々の人気のあったアトラクションが拠点である、と言うのが普通の読み筋だ。こんな風にして、あたかも探偵のように突き止めることも大事だ」
そう話す彼の目は、さびしいと泣いていた。遊園地じゃなくて、自分の孤独をうったえたいような。そんな目をしていた。自らの感情を振り切るように、わざと楽しそうな声で、言った。
「ま、こんな思念の強い怪魔は、まだ倒せないから。任務になることもないだろう」
楽しい声に不服を感じたのか、由紀ちゃんだけが顔をゆがめた。
「大人数で出向く場合は固まった方がいい。個人行動はしてもいいが、あまり間隔を開けてはいけない」
「まいごになるのを防ぐのと、緊急時に対応できないから」
「その通り」
今度は私が理由を述べた。中学生でもまいごになるのはイヤだから。
「地形も大事だぞ。雪が降ってるのか、スベりやすいのか、平地なのか、丘が多いのか、死角はどこか。案外敵は知能高いからかな。意外なところで君達を突いてくる」
「うーん、千代ちゃん森に行くんでしょ?だから・・・・そう、うす暗いとか?」
「イエス。環境によってはヤツらにとって有利な場合もある。そん時は、いかに状況をひっくり返すのかを考えなきゃいけん」
「ふむふむ」
「パンダは中国でしか野生として育たない、みたいな特有の生態って感じ?」
「春、少し違うよ。パンダは竹が育つ、標高1200メートルから3400メートルの高原に生息していて、中国全体にいるわけじゃない。しかも、その条件をクリアしている場所は、中国でほんのちょっとしかないんだ。日本よりちょい広いけど、中国自体はもっとだからさ、小さく見えるわけ」
「へ~」
ムダな豆知識を披露してしまったけど、参考になったらうれしいな。私、生き物全般好きだから。
「言いたかったのはそうじゃないけどなあ・・・。ま。いいか」
松ノ殿が半分あきれながらも、自分で気持ちを落ち着かせ、プロジェクターを切った。
「今日の説明はこんなもんだ。何か質問は?」
「そうと言われても・・・・・・」
「実際に見た方が分かりやすいから」
「良いです、大丈夫です」
「そうか。じゃあ、佐々木。しっかり、明日に備えなさい。朝8時に君を転送する」
「分かりました」
「各々、かいさーん」
神がモニターなどをてっしゅうしている間に、私達は散ってそれぞれの行きたい場所に向かった。
私は自室に戻り、忍者の服や刀の点検を始めた。
「灼黒の森かあ、どんな場所なんだろう・・・・」
少しだけ心がはずんだ時、刀が刃こぼれしていることに気付き、またたたみの上から立ち上がった。
「もしもし?」
『良かった、つながって。千代ちゃんだね?』
いきなり”ちゃん”付けははずかしいが、今はそれどころではない。
「そうです。何があったんですか」
『・・・・・他の3人にも聞いてほしい。今、そろっているかい?』
「ええ、いますよ」
『スピーカーをオンにして』
ゲームをするためにどかしておいたテーブルを引き寄せ、その上にスマホを置き、スピーカーをオンにする。
『皆元気ー?』
会長は明るく、男性にしては美しい声で私達に聞く。
「はい。元気でーす。お久しぶりですね」
由紀ちゃんが全員を代表して、スマホに向かって話す。
『そうか。良かった』
「で、用事があってかけたんでしょう?何ですか?」
加奈ちゃんがさも興味深そうに彼にたずねる。
『そうそう。千代ちゃんに初任務を課そうと思って』
「!!!」
皆でお互いの顔を見合わせる。いよいよ、か。緊迫感の感情が、全員の表情からうかがえた。
『緊張してる?』
しばらくの沈黙から、状況を悟ったんだろう。努めて優しく、ヴァンさんは言ってくれる。
『大丈夫。まだ弱い怪魔だから。それに誇りに思ってくれよ~、会長からの直々の任務なんて、めったにないんだよ?』
「確かに」
「レアかも」
いくら自分の友人がスカウトしたとはいえ、スカウトされた人材が優秀であるかは別の話だ。トップ自身から声をかけられることは、かなり高いスキルを持ってないとなしえないことである。
「がい要は?」
当人の私はワクワクしながら、答えを待つ。しかし解答は少しコワい物だった。
『最近、幻魔界にある、知る人ぞ知るマイナーなレジャースポット跡地、”灼黒の森”で、怪奇現象が起こっている。そしてその原因が、怪魔の仕業ということを、幻魔協会の調査部隊が突き止めた。調査部隊の処理隊を何人か派遣したが、全員黒幕に振り回されて帰ってきた。全く歯が立たなかったそうだ。で、戦闘専門の機関である、”怪魔完全討伐部隊”の一員である、千代ちゃんに頼むことにした』
「どうして私を?」重ねてたずねる。
『君は忍者で、いろんな術が使えるだろう?それが攻略のヒントになるからだ』
「どういうこと?」
『親玉はあやしい術で調査部隊をほんろうし、追い出したという情報がある。だから、目には目を!歯には歯を!術には術を!と、そういうわけ』
「いやわかりません」私が的確にツッコむ横で、加奈ちゃんがははあとうなずいた。
「つまり、調査部隊は怪魔の術によって敗北した。調査部隊はただ調査するだけで、戦う技術はない。ましてやあやしい術に対抗できるのは魔術だけ。戦う専門機関に所属し、術などをたくさん持つ幻魔といえば千代ちゃんだ。だから、彼女を選んだ。・・・・そういうことですね?」
『そうだよ。でも何で調査部隊が戦い向きじゃないって、分かったんだい?』
「でなければ彼らだけで済むことですから」
「確かに」さっきから春は、『確かに』しか言ってない。
『君には灼黒の森に出向き、ボスを見つけ、倒してきてほしい。ごほうびはいくらでも出す。やってくれるかい?』
真剣な声で彼は私にお願いする。私は少し黙った。怖いと思う。不安の気持ちがある。しかし楽しみとも思う。・・・・楽しみというのは、やせガマンかもしれない。いや本心のような気もする。もちろん、断るという選択も出来る。でも、選びたくないと心が言っている。なぜ?答えは簡単だ。願いをかなえるため。誰かの幸せの一部になれたらいい。かなう保証は100と言えない。だが、0を1に近づけることは、勇気があれば・・・・!
「千代・・・・?」
春が心配そうな声をかけてくれる。その言葉に、背中を押された。決めた。スマホに向かって宣言する。
「分かりました。やります。絶対に居場所を突き止めて、勝ちます!」
『!』
「!!!」
聞いていた4人は静かな歓声を上げた。引き受けてくれて、会長さん自身はうれしいのだろう。3人は顔を見合わせ、私の出陣を喜んでいる。
『ありがとう。じゃあ明日、出発してくれ。一応、任務の詳細を書いたPDFを送るから、それ参考にして』
「はい」
『じゃあねー』
向こうから電話を切られた。顔を上げて深呼吸をする。光る画面から光のない天井に目を移す。まぶたがぱちぱち開閉を繰り返す。やっぱりブルーライトは浴びっぱなしじゃいけないね。
その後、しっかりゲームを終わらせた。1回目は加奈ちゃんの一人勝ち、2回目は私と由紀ちゃんのドローで、最終的に私が勝利してゲームセットとなった。皆達成感にあふれた清々しい笑顔で終えることができた。私が帰ってきたら、今度はチョビモンのマルチプレイをしようと決めた。これは由紀ちゃんも初めてらしい。ワクワクしている彼女は私に言った。
「千代ちゃん!頑張ったらまた一緒に遊ぼ!応援してる!」
欲見え見えの応援だ。それでもいい。誰かの幸せの一部になるには、まずは自分を幸せにすることから。私の今の幸せは、こんなに素敵な友達と毎日過ごせる事。他愛のない会話が一番心地よい。こんな日常が好きだ。
それにしても、任務ってなんか持ち物とかあんの?セオリー的なやつも知っとかないとな。松ノ殿に聞くか!
彼は修行室の倉庫を整理していた。ハシゴを立てかけ、上から4段目を両足でふみながらゴソゴソ何かやっている。
「あのー」
「ん、佐々木か。任務のこと聞きにきたのか?」
「そうです。ヴァンさんから聞きましたか」
「ああ。あいつずいぶん切羽詰まってんだろうなあ、少しあわてた様子だった」
「そんなふんいき感じなかったけど・・・」
「心配かけないようにトーンを落としたんだろう。君達とオレ・・・私とは、関係性が違うからね」
ヴァンさんのことを話すと、一人称が軽くなってしまう。彼のカワイイポイントである。
「で、何が知りたい?」
「そうそう、必要な持ち物とか心構えとかセオリー的なもの。教えてもらえませんか?」
「そらあいっぱいあるぞ。でも全部教えてもつまんないだろ?」彼は倉庫に目を戻す。
「お願いします、ぜひ!」
私はずいっと、倉庫に目を向けてばかりの彼に大きく迫る。
「っ!分かった分かった、分かったからっ、やめてくれ、離れ、ろっ!」
どけと言わんばかりに、私のほおにひじを突きつけてくる。
彼は今、二足歩行の美しい青年姿だ。宙に浮かぶおじいちゃんではない。青年の細い腕の先の整った手が支えているのは、宅配便が届けてくれそうな段ボールの箱。とその時。その手がツルッとすべって、段ボールが2秒ほど滞空し、彼の頭を軽々飛び越える。
「ああっ!!」
ドン!ガッシャーン!!!箱の重い音と、中に入っていたものがこぼれる音が重なる。私は段ボールが落ちてきたのに驚いて、後ろにスッテーンと背中から転げ落ちる。
「ったたた・・・、大丈夫ですか?」
武舞台のフチに頭ガイコツが当たり、激しい痛みが走る。それでも力を入れて頭を上げる。倉庫の方を見ると、床に尻もちをついてすっとんきょうな顔をしている神がいる。びっくりした拍子にバランスをくずしたのかも。ビジネスマンのようなスーツから、何回かほこりが地面へと落ちていった。彼は2度、目をぱちぱちさせてから、立ち上がって片付けを始めた。まるで何事もなかったかのように。その様子をじいっと眺めていると、彼は急に口を開いた。そのくせ、目は倉庫に向けている。
「で?」
「は?」
「私が、どうしても伝授しろってことか?」
「!はい、そうです。教えてください。分からないまま行くのは、自分が困りますから」
散らばった小物を箱にもう一度つめ、段ボールのフタを念入りにガムテープで固定してから、ようやく私を見た。
「これ入れてからな」
ゴクゴクゴクゴク・・・・。
「・・・・プハー!働いた後のお茶は美味いなあ」
さわやかな顔で彼はペットボトル半分のお茶を一口で飲む。でもそれ、私のなんだよ。1分前、収納を終えた彼は私に言った。
「なあ、なんか飲み物持ってないか?」
「・・・普通のお茶ならありますけど・・・・」
と言って見せると同時に彼はそれを横取りし、あっという間に全部あったはずのお茶を半分飲んでしまったというわけだ。おまけに、「ありがとう」と言いながら渡してきたのはキャップ開けっぱなしだし。つづけて、「あいよ」
とキャップをくれた。文句を言いながらも、キツくしめる。
「キャップぐらいしめてくださいよ」
「神にそんな面倒事を命じるのか?」
「・・・・・」
地位を見せつけられたら何も言えない。仕方ないと割り切ることにする。
「めんどくさいといえば、今からの説明も4人に1回ずつやるのはイヤだし、全員で聞いてもらうとしよう」
結局いつものメンツで話を聞くことになった。だが3人はイヤな顔一つせず、むしろ楽しみ~というような笑顔で集まった。巻き込んでしまって申し訳ないという思いが、少しだけ心を横切った。
「今日は何の話?」
「任務のルールとか種類とか、持ち物とかでしょ?」
「そうだね、千代が明日出発するからそれに合わせてじゃない?つーか今の由紀の言い方だと、遠足にも聞こえる」
「遠足に『種類』の話はないでしょう?」
「わかんないよ~、工場見学とか公園に行くとか色んなパターンあるじゃん?んで、一個一個行動違うじゃん?ああいうのと一緒かもね~」
「まあ、なくはないか・・・」
テーマがいまいちつかめない議論をしている前で、松ノ殿は何やら大きなモニターとプロジェクターをセッティングしている。英語で解読できない単語(プロジェクターを生産している会社の名前かも)が映し出されると、彼は映写機からしっぽのように垂れているコードを引っ張り、私のスマホと勝手につなげた。メールに送られてきたPDFファイルを開くと、ここがポイント!と言う時に使う長い指差し棒を構える。
「おまちどおさん。またまた説明会やるぞ~」
「今度はモニターがあって分かりやすいですね」
「今日はこれしないと絶対伝わらないから」
「そいじゃあ、お願いします」
うっし、と気合を入れてから彼の講座が始まった。
「じゃあね、幻魔界の任務の仕組みからいこうか。任務には4、いや5種類あったかな?とにかくパターンによって何するのか決まってる。さっきの遠足みたいにね」
「聞いてたんですね」由紀ちゃんははずかしそうに顔を赤らめた。
「まず1つ目、『ターゲット』」
なぜか彼の後ろで、バン!と効果音が聞こえた。
「これは指定されたターゲットを倒すことができれば、即完了。良くも悪くも一番シンプルな形式」
「ふーん」
「2つ目、『全滅』」
バン!
「エリア内の敵を全部倒すことが目的。必ず長期戦になる任務だ。どこから襲ってくるのかも分からない不安もあって、一番警戒が必要だな」
「ほほう」
「3つ目、『浄化』」
ババン!音が変わった。
「怪魔は、属性によっては人間にひょういするヤツもいる。そして事件を起こし、負の感情を芽生えさせ、新たな怪魔を生み出す。この循環を止めるには、事が大きくなる前に人から取り除かなければならない。その人は倒さず、怪魔のみ退けるやり方だ」
「とらわれている人は自覚ないだろうね」
「普通の人には私達も、怪魔も見えないから」
「私らがどうにかするしかないね」
「うんうん」
事件を起こして、警察にお世話になっても、怪魔の仕業なら仕方ない。でも当然、警察やその他純人間が怪魔を見抜けられるわけがない。信じてもらえる可能性もほぼない。単なる事件として取り扱われるしかなくなる。それがかわいそ過ぎる。こういう時こそ、私達の出番だ。令状が出される前に何とかしなきゃ。
「4つ目。パトロール、および潜入捜査。一番楽しく、一番厳しく、一番滞在時間が長い任務になる」
「楽しいのは見知らぬ場所で好奇心をそそられるから。厳しいのは人が多い場所では戦いでの被害が大きくなり、やりにくいから。長いのはいつどこで襲撃があるか分からないから、長期的に滞在し安全をカンペキに確保するため。簡潔にだとこんなもんですか」
由紀ちゃんがざっとまとめてくれた。でも、ざっと言うほどでもないか。
「100満点中、85点。厳しく、の部分が三角。あとは丸。記述にしたら私はこの評価をするかな」
「模範は?」
「君が言ったのに加えて、ルールや行動が制限的であること」
「なるほどお」
「ハデに動いたらかえってリスクが高まるのはあるね」
「あー、だね」
「やっちゃいけないな、そりゃ」
それぞれの意見に意見を重ね、賛同や評価をし合いながら話は進んでいく。
「やることも持ち物も敵の種類もみんな違うけど、今は、佐々木が課せられた『ターゲット』の形式を元に説明する」
「はーい」
神は指の棒をモニターに当て、注目をうながす。
「任務を受注すると、必ずこのPDFファイルで内容が書かれた紙がもらえる。これさえ読めば、大体何とかはなる」
「ほんとだ!持ち物、最長滞在時間とか、敵の強さとか・・・・」
「お役立ち情報満さいだなあ」
「持ち物は、佐々木の場合、ちょっとしたおやつ、予備のバクダンやまきびし、手裏剣、クナイなどの武器、のちに見せる回復薬が必須だ。他にもこのスマホ、時計も持っていくといい」
何というか、もうこれ内容を考えなければ完全に遠足の事前指導だ。武器を持ってく遠足なんてないけどね!
「重要はここ!最長滞在時間」
「・・・・3時間か」
「そう。この時間以内に完すいさせなければ失格となり、給料と昇格ポイントが半減する。任務の受注も減り、実際にやらなさすぎてクビになった者もいるそうだ」
「逆にしっかりクリアすれば、昇格ポイントが増えて、クラスが上がって、任務もお給料も増えるわけですか」
「へえ!そらあ良い!がーんばろー」
松ノ殿よりも、加奈ちゃんが先に反応した。さすが賞金稼ぎだけあるわあ。
「まあな。そう思ってもらった方がいい。君達もピリピリしないだろうし。ああ、思い出した。任務地の情報も調べておくといい」
「なんで?」
「そこが今どんな状態になっていて、どんな人々がいるのか、荒れたりしていたら何があったのか。それを知っていくと、ボスの動機や居場所が分かってくる。例えば荒れた遊園地。取り壊されて何年、何十年も経っている。かつて人気だったはずの遊び場は、近所問わず全国の来客に惜しまれ消えた・・・。悲しい気持ち、守れなかった悔しい気持ちが遊園地の跡に集まり、怪魔が生まれる。そしてソイツは無念を晴らすために、他の遊園地を呪い、同じ境遇にさせていく・・・・。荒れ果てた遊園地の怪魔を倒す任務なら、こんな経緯で事件が起こっているから、一番人々の人気のあったアトラクションが拠点である、と言うのが普通の読み筋だ。こんな風にして、あたかも探偵のように突き止めることも大事だ」
そう話す彼の目は、さびしいと泣いていた。遊園地じゃなくて、自分の孤独をうったえたいような。そんな目をしていた。自らの感情を振り切るように、わざと楽しそうな声で、言った。
「ま、こんな思念の強い怪魔は、まだ倒せないから。任務になることもないだろう」
楽しい声に不服を感じたのか、由紀ちゃんだけが顔をゆがめた。
「大人数で出向く場合は固まった方がいい。個人行動はしてもいいが、あまり間隔を開けてはいけない」
「まいごになるのを防ぐのと、緊急時に対応できないから」
「その通り」
今度は私が理由を述べた。中学生でもまいごになるのはイヤだから。
「地形も大事だぞ。雪が降ってるのか、スベりやすいのか、平地なのか、丘が多いのか、死角はどこか。案外敵は知能高いからかな。意外なところで君達を突いてくる」
「うーん、千代ちゃん森に行くんでしょ?だから・・・・そう、うす暗いとか?」
「イエス。環境によってはヤツらにとって有利な場合もある。そん時は、いかに状況をひっくり返すのかを考えなきゃいけん」
「ふむふむ」
「パンダは中国でしか野生として育たない、みたいな特有の生態って感じ?」
「春、少し違うよ。パンダは竹が育つ、標高1200メートルから3400メートルの高原に生息していて、中国全体にいるわけじゃない。しかも、その条件をクリアしている場所は、中国でほんのちょっとしかないんだ。日本よりちょい広いけど、中国自体はもっとだからさ、小さく見えるわけ」
「へ~」
ムダな豆知識を披露してしまったけど、参考になったらうれしいな。私、生き物全般好きだから。
「言いたかったのはそうじゃないけどなあ・・・。ま。いいか」
松ノ殿が半分あきれながらも、自分で気持ちを落ち着かせ、プロジェクターを切った。
「今日の説明はこんなもんだ。何か質問は?」
「そうと言われても・・・・・・」
「実際に見た方が分かりやすいから」
「良いです、大丈夫です」
「そうか。じゃあ、佐々木。しっかり、明日に備えなさい。朝8時に君を転送する」
「分かりました」
「各々、かいさーん」
神がモニターなどをてっしゅうしている間に、私達は散ってそれぞれの行きたい場所に向かった。
私は自室に戻り、忍者の服や刀の点検を始めた。
「灼黒の森かあ、どんな場所なんだろう・・・・」
少しだけ心がはずんだ時、刀が刃こぼれしていることに気付き、またたたみの上から立ち上がった。
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