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第三章 修行の日々

第3話 扉の先に

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 おお、皆が来た。
 私は下を見下ろしていた。
 松ノ殿に導かれ、近所の公園にやって来た私達は、この地下通路に通された。その道は、思ったより激しく曲がりくねったりしているのだ。その道を、今通って来たのである。
「いたたた・・・。あの道、きっつ!」
 自分の思いのまま、由紀ちゃんは洞窟中に言った。そのまま、ゆっくり立ち上がる。
「本当だよ」
 春は由紀ちゃんの言葉に同意する。千代ちゃんも、頷いて意思を見せた。春が言葉を続ける。
「真っすぐ行くかと思ったら、急カーブがあるし。それが終わったと思えば、波みたいに上下するしさあ」
「そんなに激しいか。このストロー型滑り台は」
 神が少し残念そうに言った。
 松ノ殿はなんも苦も無く出て来られるからいい。私達はあなたみたいにワープができなければ、超能力、それにこれを作る技術だって無いの。というか、それそんな名前付いてたの。ストローだって、こんなに曲がりゃあしないよ、普通。
「喜んでもらえると思ったが、まあいい。本題はこの奥だからな」
 私らもう子供じゃないんだから、それじゃあ喜ばないよ・・・。
 松ノ殿が指した方向に目を向ける。この間見たのと同じような、固そうな扉。この奥が秘密基地なのだとしたら、かなり厳重な守りである。今の私ならこの戸を、動かすことすらできないだろう。これを、まるで消しゴムを持つくらいの少しの力で、開けられるようになるのだろうか。その自分を想像すると、少し怖く思えた。
「ここは私と、君達幻魔しか立ち入ることの出来ない異空間だ。君達の言う、現実世界の時間と少しずれている。ここでの一日は、向こうは1時間。自分が居たいだけ、ここにいれる」
 アニメとかで、よくあるよね。時間がずれてるパターン。しばらくの間は、時差ボケするかも。
「さあ、あけるぞ。よーく見てろよ」
 扉に近づくと、神は手のひらをそれに置き、目を閉じる。しばらくして手を離すと、いつか見たような気がする、聖の字が浮かんだ。字に反応した扉は、美しい星模様に沿って光っていく。
「うわああ」
 一斉に驚きの声を上げた。私は、光の扉に目を奪われていた。
 その美しさに似つかわしくない大きな重い音を立て、ゆっくりドアが開いていく。
 どんどん奥が見えてくる。もう少しで、全てが見える。あと、ちょっと。もうすぐ___。
 全開になってすぐ、私は向こうへ駆け出した。
「あ、加奈!」
 由紀ちゃんが呼び止めてるみたいだけど、気にしない。私はもう、ここに期待でしかないんだから。
 一回立ち止まって、あたりを見回した。
「!!!」
 なんて言ったらいいのだろう。全てが輝きに満ちていた。
 木製のちゃぶ台に、小さなウォーターサーバー。旅館にあるような、内側に反っている椅子。優しい感触の畳。桜の模様があしらわれた、大きな障子。
 言い出したら、きりがない。
「あ」
 生け花が飾られた床の間。トラの絵の掛け軸もある。
「うちによく似てるなあ」
 由紀ちゃんが言った。彼女の家は、由緒正しい和の館だ。私よりも、こういうものは見慣れているだろう。
「驚いただろう?」
「ええ、とても凄いですよ、これ!」
 千代ちゃんは震えた声で叫んだ。 ここで生活できると思うと、嬉しかった。
「さあ、次だ。個室に案内しよう」
 リビングを出るため、今度は右にあるふすまを開ける。
 向こうには長い廊下が続いていて、8つの部屋が用意されていた。左が部屋、右が縁側だ。
 コン・・・、と静かにししおどしが落ちる。近くには灯篭もある。
 松ノ殿が、すぐ近くにあった部屋を指して。
「こっから順に」
 と始め、それからテンポよく言って歩く。
「矢代、近衛、谷川、佐々木」
 ちょうど4つの部屋が残って、空いている。残りの子の部屋かもしれない。
 松ノ殿は、試しに私の部屋を開けた。
「おお!!」
 驚いた。こんな素晴らしい部屋は見たことない。
 一瞬で眠りに落ちてしまいそうな、ふかふかの布団。縦140センチは超えると思われる楕円形の鏡。暖かい色合いのタンス、その隣に6段の大きな本棚と、反対に低くて小さいテーブル。
「あ、テレビ」
 およそ60インチの大きなテレビが壁にかかっている。
 リモコンをつけると、人形が行きかう子供向け番組が映った。もっと見ていたかったけど、皆が待っている様だったので今は止めた。
 外に出ると、松ノ殿は振りかえって言った。
「3人のも同じような構図になっている。後でまた、見にくるといい」
 そして続けた。
「次は、図書室に案内しよう」
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