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第二章 集う幻魔

第8話 刃が

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 ぶるん、ブアッ。
 決まってはいないが、細かに刀を振っていく。
 グイッ。空気の中で、敵が爪を振るう。
 ビリっ。
「!」
 私の服が一瞬で、爪の跡の形に裂かれた。
 そんな!相手との距離は遠かったはず。何で。
 その時。爪がシュルル・・・、と内側に引っ込んでいくのを見た。
 なるほど。自由に伸び縮みするのか。それなら!
 ダンッ!!高速移動で、一気に近づく。
 相手はびっくり。これならいける。やるぞ!手をクロスさせ、体勢を整えた。
 シュンっ!と一直線に私を目掛け、爪が伸びる。ここでやられれば、私は串刺しだ。
 だからっ!
「うおおおお」
 交差した手を元に戻すタイミングで、綺麗に爪を、ざん!と切った。おまけに、両手だから。
 コンコンコン、コロ・・・。
 10本全ての爪が一気に、折れて床に落ちる。
 シュタ。慎重に着地。
 よし!後は、体を斬れば・・・。
「ぎゃあああ、ぎやあああ」
「!?」
 ドン!
 爪がまた生えた?自己再生能力があるのか!
「マジか、これじゃきりがない!」
 
 由紀ちゃんは苦戦していた。目の前にいる大いなる敵に。
 私も加勢しよう!彼女を助けるんだ。
「松ノ殿様!私も力を解放して、由紀ちゃんに協力したいです!」
 松ノ殿は、うつむいて言った。
「・・・それは、できない」
「なんで?私にだって、出来ますよ!きっと」
 彼は説明した。遠くを見るような目だった。
「近衛は、自分の体直接ではなく、武器を使って戦っている。だが、君は戦うのにはかなりの努力と、持久力、パワーが必要なんだ。おまけに君は、スポーツの経験が少ないだろう?」
「!」
 そうだ。由紀ちゃんは、剣道をしているからこそ今うまくやれている。
 でも、ほぼ(体育以外の)運動経験が無い私は、今挑んでも・・・。
「判ったか」
「はい」
 今回は諦めることにした。
「まあ、もうすぐ終わるだろう。この戦いも。あ、そうそ。もう一つ」
「なんですか」
 彼は私の耳元に近寄り、小声で話した。
 その内容について読者の皆さんには、戦いが終わるまで内緒です!
 
 ニュニュニュ・・・。
 また伸びた!何回目だ、この状況。
 息が、切れつつ、ある。
 もうすぐ体力の限界がくる。そしたら、少なくとも動けなくなるだろう。
 こうなったら!
 集中。精いっぱいの力をここに込めて!
 ダアンッ!
 今までで一番の最高速で、床をけり、飛び出した。
 教室の天井まで一気に、上がった。
 上から見る教室って、こんなもんなのかあ。ちょっとだけ空からの景色を楽しんだ後。
 グルッ、サっ。風が起きるくらい、大きく振りかぶった。
「ぐっ」
 加奈が私の起こした風に抵抗している。自分でも、耐えられるかどうかは不安だった。
 そこをしっかりと乗り越え、ついに敵の間合いに入ることが出来た。
 よし。今だ!一瞬の油断が相手からのカウンターにつながる。
 だから、今ここで。決める。
「うりゃあああ」
 力の限り、刀を縦に振る。
 後ろで、松ノ殿が言った。
「なんて奴だ。形は十分だ。あれで炎がしっかり出てたら、完全に決まってた。火流落が」
 この技の名なのだろうか。
 春をまとっていた妖気が真っ二つになった直後、凄まじい断末魔に襲われた。
 まるで竜巻が通り過ぎるように、あるいは地震かの様に学校が揺れる。
 騒ぎが収まった時、私が最初に見たのは。
 何事もなく、首をかしげて笑う春だった。
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