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第二章 集う幻魔
第7話 初陣
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私はためらっていた。
刀を握る手が震えている。春を斬らなければならないという、思いも寄らないことを体が受け付けていないのだ。武者震いが止まらない。
足が。手が。こわばり、思考を停止する。
「由紀ちゃん」
加奈が私を呼ぶ。心配した口調だった。
「大丈夫。いける。下がってて」
刀をグッと握りなおす。そして、頭の上で構えた。
加奈は判ったといわんばかりに、ロッカーの方へ下がった。
そうだ。とにかく春を、皆を助けるんだ!
「よし、行くぞ!」
ダン!地面をけって、しっかりと感じた。私はこの瞬間、人ととは違った生き方をし始めたのだと。
春の爪が眼前に迫るのを、しっかり受け止める。
キイイン。固いものがぶつかる音がした。
「上手い!刀を使いこなしている!いきなりの戦いなのに。何故だ」
松ノ殿が驚いていた。
加奈が戦いの衝撃波にもまれながら、私の説明をした。
「由紀ちゃん、剣道部なんですよ。結構昔から、武道系の習い事やってるみたいで」
今入ってるのは、部活と同じ剣道。これもなかなか悪くは無い。
や、今はそんな話をしてる場合じゃないぞ、ほんと!
勢いよく刀を振りかぶり、グオンと前へ突き出す。
ピュッ。相手の頬から数量の血が出た。
皮膚だけだけど、切れた!いいぞ、このまま接近して。
バチバチバチ!私の手元で音がした。
「信じられない・・・!」
見ると、刀の表面で火花が散っていた。
「こんなにも早く、真髄を覚醒するとは・・・。なんて、すごい奴だ。君は」
「えっ」
真髄?
「君はただの剣士じゃない。炎を操る、魔剣士一族の子だ」
魔剣士。剣術と魔術を巧みに操る、空想の戦士。そんな者達の血を、私が受け継いだなんて。
「今は不完全だが、あいつを倒すことは出来よう。もっと集中。自分はできると、信じるんだ!」
「!!!」
その声に妙な感覚を覚えた。脳裏に蘇るのは、母の姿だった。
8歳の頃の話だ。
その時私は、地域のスイミングスクールに通っていた。私はその中でも、常に上位クラスの技術を持っていて、良く友達から羨ましがられたり、妬まれたりしていた。
そこは、2か月に一度に進級テストというものがある。
自分のレベルによって、行う課題等が変わる仕組みだ。
もちろんそこに基準点があるのだが、私が4級から3級に変わるためのテストの練習では、一度として超えることが出来なかった。
10級から始まって、順調にやって来た私にとって、信じられないことだった。
次第にやる気を失い、習慣だった市民プールでの練習もしないようになった。
テストの日。家の玄関前で私と母は話した。
「由紀はきっとできるわ。母さん、信じてる。そうだ、良いこと教えてあげる」
「何?」
「心の中でいうの。私は出来る。精一杯やろう、ってね。そうすれば、自然と集中して取り組むことが出来るから。安心していってらっしゃい」
本番。私の前の子が、スタートした。
私は心の中で思い浮かべた。先ほどの母の姿を。
「私は・・・できる。必ず、出来る」
ピイっ!
「次、由紀さん」
「あ、はい!」
私は無我夢中で泳ぎ、蹴り、進んだ。
頭の中に、余計なものは一つもなかった。ただ目標を達成する、その思いだけだった。
プールから出て結果表を受け取ったとき、私は驚いた。
基準点どころか、最高点を獲得して合格した。
その時、自分を信じれば道は開けると知った。
今、この瞬間も同じだ。
自分を信じ、敵を倒す。
ありがとう、母さん。私、やれそうだよ。
なんとかしても。私は力を込めて、再び立つ。
「今出来ることを!全力でやりきる!」
刀を握る手が震えている。春を斬らなければならないという、思いも寄らないことを体が受け付けていないのだ。武者震いが止まらない。
足が。手が。こわばり、思考を停止する。
「由紀ちゃん」
加奈が私を呼ぶ。心配した口調だった。
「大丈夫。いける。下がってて」
刀をグッと握りなおす。そして、頭の上で構えた。
加奈は判ったといわんばかりに、ロッカーの方へ下がった。
そうだ。とにかく春を、皆を助けるんだ!
「よし、行くぞ!」
ダン!地面をけって、しっかりと感じた。私はこの瞬間、人ととは違った生き方をし始めたのだと。
春の爪が眼前に迫るのを、しっかり受け止める。
キイイン。固いものがぶつかる音がした。
「上手い!刀を使いこなしている!いきなりの戦いなのに。何故だ」
松ノ殿が驚いていた。
加奈が戦いの衝撃波にもまれながら、私の説明をした。
「由紀ちゃん、剣道部なんですよ。結構昔から、武道系の習い事やってるみたいで」
今入ってるのは、部活と同じ剣道。これもなかなか悪くは無い。
や、今はそんな話をしてる場合じゃないぞ、ほんと!
勢いよく刀を振りかぶり、グオンと前へ突き出す。
ピュッ。相手の頬から数量の血が出た。
皮膚だけだけど、切れた!いいぞ、このまま接近して。
バチバチバチ!私の手元で音がした。
「信じられない・・・!」
見ると、刀の表面で火花が散っていた。
「こんなにも早く、真髄を覚醒するとは・・・。なんて、すごい奴だ。君は」
「えっ」
真髄?
「君はただの剣士じゃない。炎を操る、魔剣士一族の子だ」
魔剣士。剣術と魔術を巧みに操る、空想の戦士。そんな者達の血を、私が受け継いだなんて。
「今は不完全だが、あいつを倒すことは出来よう。もっと集中。自分はできると、信じるんだ!」
「!!!」
その声に妙な感覚を覚えた。脳裏に蘇るのは、母の姿だった。
8歳の頃の話だ。
その時私は、地域のスイミングスクールに通っていた。私はその中でも、常に上位クラスの技術を持っていて、良く友達から羨ましがられたり、妬まれたりしていた。
そこは、2か月に一度に進級テストというものがある。
自分のレベルによって、行う課題等が変わる仕組みだ。
もちろんそこに基準点があるのだが、私が4級から3級に変わるためのテストの練習では、一度として超えることが出来なかった。
10級から始まって、順調にやって来た私にとって、信じられないことだった。
次第にやる気を失い、習慣だった市民プールでの練習もしないようになった。
テストの日。家の玄関前で私と母は話した。
「由紀はきっとできるわ。母さん、信じてる。そうだ、良いこと教えてあげる」
「何?」
「心の中でいうの。私は出来る。精一杯やろう、ってね。そうすれば、自然と集中して取り組むことが出来るから。安心していってらっしゃい」
本番。私の前の子が、スタートした。
私は心の中で思い浮かべた。先ほどの母の姿を。
「私は・・・できる。必ず、出来る」
ピイっ!
「次、由紀さん」
「あ、はい!」
私は無我夢中で泳ぎ、蹴り、進んだ。
頭の中に、余計なものは一つもなかった。ただ目標を達成する、その思いだけだった。
プールから出て結果表を受け取ったとき、私は驚いた。
基準点どころか、最高点を獲得して合格した。
その時、自分を信じれば道は開けると知った。
今、この瞬間も同じだ。
自分を信じ、敵を倒す。
ありがとう、母さん。私、やれそうだよ。
なんとかしても。私は力を込めて、再び立つ。
「今出来ることを!全力でやりきる!」
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