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第二章 集う幻魔

第6話 力の解放

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 目の前には、信じられないものがいた。
 黒いオーラに包まれた、もののけ?イメージだとそんな。
「こんな時に、松ノ殿様がいたら・・・」
 由紀ちゃんが言った。私も同感だ。ある意味、心強い味方だからね。
 でも、簡単に来るわけ・・・。
「来たぞ」
 年を取った男性の声がした。サッと声の方に顔を向くと。
「「松ノ殿様!」」
 ほんとにすぐに来た。昨日言ったとおりだ。
「君たちが呼ばなくても、ここに来る予定だった。怪魔の気を感知したからな」
 えっ、あれが。
「春は、怪魔なんですか?」
「いや、体を乗っ取られているだけだ。彼女は人間だ」
 由紀ちゃんが少し胸をなでおろした様に、息をついた。そうだな、友達が悪者だったらやだし。
 改めて、私は聞いた。
「どうしたらいいんでしょう。このままじゃ、学校が・・・!」
 その時。
「それこそだ」
「え」
「そんな時こそ、幻魔の力を使うんだ」
「「!!!」」
 そうだ。忘れていたけど、私達は人間であり、人間じゃないんだ。
「戦える力は十分にある。・・・近衛」
「はい」
 呼びかけに応じる。
「幻魔のなりたいと念じてみろ」
 彼女は少し戸惑っていた。いくら敵とはいえ、攻撃するのは谷川さんの体だ。
 友だちを傷つけしまうのを、由紀ちゃんは恐れている。
「このままか、救うか。どちらがいい」
 松ノ殿は聞いた。彼は本気の様だった。
 由紀ちゃんは意を決して、深呼吸をした。
 目を閉じ、集中する。細かく呼吸を刻む。
 すると。
 ボオッ!!
 由紀ちゃんの体が、燃え盛る炎に包まれた。でも、熱そうにはしていない。
「え、なに、これ。体が・・燃えてる・・・」
 メラメラと、煙を立てずに燃え続ける。
 その間に、彼女の姿が変化していった。でも、良く見えない。
 フッと、火が収まる。
 その時、彼女の今の姿があらわになった。
 ヘアゴムが取れて、真っすぐになった髪の毛。赤い長そでの上に、白く袖が切れた、上着。やっぱり赤い、帯みたいなもの。そこに差しているのは。
「刀・・・?」
 凛々しい鍔。きらきら光る刀身。つやつやしたケース。
 由紀ちゃんは、武士の仲間・・・?
「おめでとう。力の解放、成功だ」
 これが由紀ちゃんの幻魔としての姿なのだろう。
 これまでとは見違えるほど、立派な身なりだった。
「すごい・・・。刀が・・・重くない。なんで?」
 松ノ殿が説明した。
「視力、聴力、腕力、反射神経。その他もろもろ、普通の幻魔と同じレベルになったんだ」
 幻魔は人が重いと感じるものを軽々持ててしまうのだろうか。
 それはすごいことだ。やっぱりいろいろと超越している。
「さあ、近衛」
 彼がまた由紀ちゃんを呼んだ。
「己の力を信じろ」
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