16 / 55
第二章 集う幻魔
第4話 藤堂と谷川
しおりを挟む
翌日。
「おっはよー」
私が声をかけたのは、みなさんにとっては久々登場の浩介だ。
「おう、加奈」
スポーツバッグを肩にかけている。
早速浩介は、私に話を振った。
「そうだ。お前、由紀と仲直りできたのか?」
覚えていてくれて、嬉しい。
「うん」と答える。
「良かったなあ。でも、今日は一緒じゃ____」
彼が言葉を切った。
声が聞こえたからだ。
「加奈ー」
「由紀ちゃん、おはよう」
走ってこっちに来る。
「はよー。あ」
浩介の存在に気付いたようだ。首を伸ばして言う。
「ついでに、浩介も」
すかさず、ツッコミが入る。
「ついでって、なんだよ。ついでってさ」
しっかりと彼女も応える。
「いーじゃん。気付かんかったし」
少し苛立ったように、
「よくねーよ!」と声を上げる。
いつも通りの、朝だった。
浩介について説明しよう。
私とは幼なじみ、由紀ちゃんとは家がお隣である。
小学校の時は、ほとんど同じクラスになったし、今だって3人とも1年4組だ。
これが、腐れ縁とでもいうやつなのかな。何かと一緒になることが多いから。
低学年の頃は、良く3人で遊んだものだ。確か、おにごっこが好きだったと思う。
そうだ、そんで由紀ちゃんが浩介に泣かされてて、私がそれを止めて・・・。
いつの間にか彼女は立ち直っていたなあ。
それで、今度は加奈が鬼だって、二人が笑ってたんだっけ。
そうこう思い出しているうちに、教室の前まで来ていた。
昨日の件はアレだけど、今日も楽しく過ごせそう。
その時。
「オイ!矢代!」
「!」
一番関わりたくない奴らが目の前にいた。
4組前の廊下全体に渡って列を作っている。
万全の対策をしてきたかの様だ。
「昨日は何してくれんだよ、私達の江麻に」
仲間の一人が言った。
全員私をにらんでいる。
私はひるまずに、人々の向こう側に向かって大声を張った。
「藤堂江麻!その中にいるんでしょ?堂々と出てきな!」
群衆の中から、背の高い影が見えた。
「ひどいなあ、元リーダーに向かって。少しは礼儀とか無いの?」
すっ、すっ、と人をかき分けやって来た。
「さ。出てきてやったよ。どうすんの」
私は依然とした態度で彼女に言った。
「ふん。そっちこそ、なんかあるんでしょ」
同じ風に返って来た。
「そうだよ。あんたなんか興味ないしけどこれだけは___」
「あの!」
急に別の声が聞こえてきた。
私達二人や、由紀ちゃん、浩介、藤堂の仲間たちが、一斉にそっちを見る。
どうやら5組の中からだった。誰かがヒョコっ、と顔を出している。
「あなた達、通る人の邪魔してるよ」
そう言ったのは、制服の名札に学級委員バッジを付けた女子だった。髪の毛が、肩あたりで縛られている。顔としては、他よりも大人っぽく見えた。良ーく見ると、名札に『谷川』と刻まれている。
「谷川」さんに、すかさず藤堂の仲間は詰め寄る。
「ちょっと、今からいいとこだからさあ。静かにしてくんない?ムード壊れたよ」
しかし、彼女は。
「いや、ちょっと邪魔だったから言っただけだよ。ほら」
そう言って、周りを見るように促した。
確かに、おそらく通れなくて困っている人がいた。
さっきと違う女子が、弁解した。
「いや、でも大事なことなんだ。だから___」
「斎藤」
藤堂は名を呼んだ。そして静かに言った。
「教室入ろう。続きは今度だ」
メンバー達は納得しないようだったが、やがて棟梁を筆頭にそれぞれの教室に入っていく。
混雑が止み、落ち着いたころ。
「由紀!」
谷川さんが、由紀ちゃんを呼んだ。
由紀ちゃんは笑って返した。
「春」
春。それが下の名前なのだろう。
二人はお互い駆けよる。
もう教室に入ったと思っていた浩介は、今まさに私が思っていたことを口にした。
「知り合い・・・か?」
谷川さんが応える。
「部活と習い事が一緒なの」
「「へえー」」
浩介と声をそろえた。
「凄ーい。学級委員、なったんだー」
「まあね。でも、まだまだだよ」
「や、そんなことないって。似合ってるよ」
「ほんとー?嬉しー」
なんだか楽しそうだ。本当は加わりたかったけど、止めた。ペースについていけない気がして。
そんな、話に花が咲いているときに。
「ちょ、お前ら!もう少しで朝礼だぞ!早く!」
浩介が急かす。
ギリギリ入ることは出来たものの朝の支度は済んでいなかったため、3人共遅刻とみなされてしまった・・・。
「おっはよー」
私が声をかけたのは、みなさんにとっては久々登場の浩介だ。
「おう、加奈」
スポーツバッグを肩にかけている。
早速浩介は、私に話を振った。
「そうだ。お前、由紀と仲直りできたのか?」
覚えていてくれて、嬉しい。
「うん」と答える。
「良かったなあ。でも、今日は一緒じゃ____」
彼が言葉を切った。
声が聞こえたからだ。
「加奈ー」
「由紀ちゃん、おはよう」
走ってこっちに来る。
「はよー。あ」
浩介の存在に気付いたようだ。首を伸ばして言う。
「ついでに、浩介も」
すかさず、ツッコミが入る。
「ついでって、なんだよ。ついでってさ」
しっかりと彼女も応える。
「いーじゃん。気付かんかったし」
少し苛立ったように、
「よくねーよ!」と声を上げる。
いつも通りの、朝だった。
浩介について説明しよう。
私とは幼なじみ、由紀ちゃんとは家がお隣である。
小学校の時は、ほとんど同じクラスになったし、今だって3人とも1年4組だ。
これが、腐れ縁とでもいうやつなのかな。何かと一緒になることが多いから。
低学年の頃は、良く3人で遊んだものだ。確か、おにごっこが好きだったと思う。
そうだ、そんで由紀ちゃんが浩介に泣かされてて、私がそれを止めて・・・。
いつの間にか彼女は立ち直っていたなあ。
それで、今度は加奈が鬼だって、二人が笑ってたんだっけ。
そうこう思い出しているうちに、教室の前まで来ていた。
昨日の件はアレだけど、今日も楽しく過ごせそう。
その時。
「オイ!矢代!」
「!」
一番関わりたくない奴らが目の前にいた。
4組前の廊下全体に渡って列を作っている。
万全の対策をしてきたかの様だ。
「昨日は何してくれんだよ、私達の江麻に」
仲間の一人が言った。
全員私をにらんでいる。
私はひるまずに、人々の向こう側に向かって大声を張った。
「藤堂江麻!その中にいるんでしょ?堂々と出てきな!」
群衆の中から、背の高い影が見えた。
「ひどいなあ、元リーダーに向かって。少しは礼儀とか無いの?」
すっ、すっ、と人をかき分けやって来た。
「さ。出てきてやったよ。どうすんの」
私は依然とした態度で彼女に言った。
「ふん。そっちこそ、なんかあるんでしょ」
同じ風に返って来た。
「そうだよ。あんたなんか興味ないしけどこれだけは___」
「あの!」
急に別の声が聞こえてきた。
私達二人や、由紀ちゃん、浩介、藤堂の仲間たちが、一斉にそっちを見る。
どうやら5組の中からだった。誰かがヒョコっ、と顔を出している。
「あなた達、通る人の邪魔してるよ」
そう言ったのは、制服の名札に学級委員バッジを付けた女子だった。髪の毛が、肩あたりで縛られている。顔としては、他よりも大人っぽく見えた。良ーく見ると、名札に『谷川』と刻まれている。
「谷川」さんに、すかさず藤堂の仲間は詰め寄る。
「ちょっと、今からいいとこだからさあ。静かにしてくんない?ムード壊れたよ」
しかし、彼女は。
「いや、ちょっと邪魔だったから言っただけだよ。ほら」
そう言って、周りを見るように促した。
確かに、おそらく通れなくて困っている人がいた。
さっきと違う女子が、弁解した。
「いや、でも大事なことなんだ。だから___」
「斎藤」
藤堂は名を呼んだ。そして静かに言った。
「教室入ろう。続きは今度だ」
メンバー達は納得しないようだったが、やがて棟梁を筆頭にそれぞれの教室に入っていく。
混雑が止み、落ち着いたころ。
「由紀!」
谷川さんが、由紀ちゃんを呼んだ。
由紀ちゃんは笑って返した。
「春」
春。それが下の名前なのだろう。
二人はお互い駆けよる。
もう教室に入ったと思っていた浩介は、今まさに私が思っていたことを口にした。
「知り合い・・・か?」
谷川さんが応える。
「部活と習い事が一緒なの」
「「へえー」」
浩介と声をそろえた。
「凄ーい。学級委員、なったんだー」
「まあね。でも、まだまだだよ」
「や、そんなことないって。似合ってるよ」
「ほんとー?嬉しー」
なんだか楽しそうだ。本当は加わりたかったけど、止めた。ペースについていけない気がして。
そんな、話に花が咲いているときに。
「ちょ、お前ら!もう少しで朝礼だぞ!早く!」
浩介が急かす。
ギリギリ入ることは出来たものの朝の支度は済んでいなかったため、3人共遅刻とみなされてしまった・・・。
1
お気に入りに追加
20
あなたにおすすめの小説
湖の民
影燈
児童書・童話
沼無国(ぬまぬこ)の統治下にある、儺楼湖(なろこ)の里。
そこに暮らす令は寺子屋に通う12歳の男の子。
優しい先生や友だちに囲まれ、楽しい日々を送っていた。
だがそんなある日。
里に、伝染病が発生、里は封鎖されてしまい、母も病にかかってしまう。
母を助けるため、幻の薬草を探しにいく令だったが――
極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。
猫菜こん
児童書・童話
私は人より目立たずに、ひっそりと生きていたい。
だから大きな伊達眼鏡で、毎日を静かに過ごしていたのに――……。
「それじゃあこの子は、俺がもらうよ。」
優しく引き寄せられ、“王子様”の腕の中に閉じ込められ。
……これは一体どういう状況なんですか!?
静かな場所が好きで大人しめな地味子ちゃん
できるだけ目立たないように過ごしたい
湖宮結衣(こみやゆい)
×
文武両道な学園の王子様
実は、好きな子を誰よりも独り占めしたがり……?
氷堂秦斗(ひょうどうかなと)
最初は【仮】のはずだった。
「結衣さん……って呼んでもいい?
だから、俺のことも名前で呼んでほしいな。」
「さっきので嫉妬したから、ちょっとだけ抱きしめられてて。」
「俺は前から結衣さんのことが好きだったし、
今もどうしようもないくらい好きなんだ。」
……でもいつの間にか、どうしようもないくらい溺れていた。
GREATEST BOONS+
丹斗大巴
児童書・童話
幼なじみの2人がグレイテストブーンズ(偉大なる恩恵)を生み出しつつ、異世界の7つの秘密を解き明かしながらほのぼの旅をする物語。
異世界に飛ばされて、小学生の年齢まで退行してしまった幼なじみの銀河と美怜。とつじょ不思議な力に目覚め、Greatest Boons(グレイテストブーンズ:偉大なる恩恵)をもたらす新しい生き物たちBoons(ブーンズ)を生みだし、規格外のインベントリ&ものづくりスキルを使いこなす! ユニークスキルのおかげでサバイバルもトラブルもなんのその! クリエイト系の2人が旅する、ほのぼの異世界珍道中。
便利な「しおり」機能、「お気に入り登録」して頂くと、最新更新のお知らせが届いて便利です!
猫のお菓子屋さん
水玉猫
絵本
クマのパン屋さんのおとなりに、猫のお菓子屋さんができました。
毎日、いろんな猫さんが、代わる代わるに、お店番。
お店番の猫さんが、それぞれ自慢のお菓子を用意します。
だから、毎日お菓子が変わります。
今日は、どんなお菓子があるのかな?
猫さんたちの美味しい掌編集。
ちょっぴり、シュールなお菓子が並ぶことも、ありますよ。
顔見知りの猫さんがお当番の日は、是非是非、のぞいてみてください!
児童絵本館のオオカミ
火隆丸
児童書・童話
閉鎖した児童絵本館に放置されたオオカミの着ぐるみが語る、数々の思い出。ボロボロの着ぐるみの中には、たくさんの人の想いが詰まっています。着ぐるみと人との間に生まれた、切なくも美しい物語です。
運よく生まれ変われたので、今度は思いっきり身体を動かします!
克全
児童書・童話
「第1回きずな児童書大賞」重度の心臓病のため、生まれてからずっと病院のベッドから動けなかった少年が12歳で亡くなりました。両親と両祖父母は毎日のように妾(氏神)に奇跡を願いましたが、叶えてあげられませんでした。神々の定めで、現世では奇跡を起こせなかったのです。ですが、記憶を残したまま転生させる事はできました。ほんの少しだけですが、運動が苦にならない健康な身体と神与スキルをおまけに付けてあげました。(氏神談)
剣の母は十一歳。求む英傑。うちの子(剣)いりませんか?三本目っ!もうあせるのはヤメました。
月芝
児童書・童話
世に邪悪があふれ災いがはびこるとき、地上へと神がつかわす天剣(アマノツルギ)。
ひょんなことから、それを創り出す「剣の母」なる存在に選ばれてしまったチヨコ。
辺境の隅っこ暮らしが一転して、えらいこっちゃの毎日を送るハメに。
第三の天剣を手に北の地より帰還したチヨコ。
のんびりする暇もなく、今度は西へと向かうことになる。
新たな登場人物たちが絡んできて、チヨコの周囲はてんやわんや。
迷走するチヨコの明日はどっちだ!
天剣と少女の冒険譚。
剣の母シリーズ第三部、ここに開幕!
お次の舞台は、西の隣国。
平原と戦士の集う地にてチヨコを待つ、ひとつの出会い。
それはとても小さい波紋。
けれどもこの出会いが、後に世界をおおきく揺るがすことになる。
人の業が産み出した古代の遺物、蘇る災厄、燃える都……。
天剣という強大なチカラを預かる自身のあり方に悩みながらも、少しずつ前へと進むチヨコ。
旅路の果てに彼女は何を得るのか。
※本作品は単体でも楽しめるようになっておりますが、できればシリーズの第一部と第二部
「剣の母は十一歳。求む英傑。うちの子(剣)いりませんか?ただいまお相手募集中です!」
「剣の母は十一歳。求む英傑。うちの子(剣)いりませんか?二本目っ!まだまだお相手募集中です!」
からお付き合いいただけましたら、よりいっそうの満腹感を得られることまちがいなし。
あわせてどうぞ、ご賞味あれ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる