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第二章 集う幻魔

第4話 藤堂と谷川

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 翌日。
「おっはよー」
 私が声をかけたのは、みなさんにとっては久々登場の浩介だ。
「おう、加奈」
 スポーツバッグを肩にかけている。
 早速浩介は、私に話を振った。
「そうだ。お前、由紀と仲直りできたのか?」
 覚えていてくれて、嬉しい。
「うん」と答える。
「良かったなあ。でも、今日は一緒じゃ____」
 彼が言葉を切った。
 声が聞こえたからだ。
「加奈ー」
「由紀ちゃん、おはよう」
 走ってこっちに来る。
「はよー。あ」
 浩介の存在に気付いたようだ。首を伸ばして言う。
「ついでに、浩介も」
 すかさず、ツッコミが入る。
「ついでって、なんだよ。ついでってさ」
 しっかりと彼女も応える。
「いーじゃん。気付かんかったし」
 少し苛立ったように、
「よくねーよ!」と声を上げる。
 いつも通りの、朝だった。

 浩介について説明しよう。
 私とは幼なじみ、由紀ちゃんとは家がお隣である。
 小学校の時は、ほとんど同じクラスになったし、今だって3人とも1年4組だ。
 これが、腐れ縁とでもいうやつなのかな。何かと一緒になることが多いから。
 低学年の頃は、良く3人で遊んだものだ。確か、おにごっこが好きだったと思う。
 そうだ、そんで由紀ちゃんが浩介に泣かされてて、私がそれを止めて・・・。
 いつの間にか彼女は立ち直っていたなあ。
 それで、今度は加奈が鬼だって、二人が笑ってたんだっけ。 

 そうこう思い出しているうちに、教室の前まで来ていた。
 昨日の件はアレだけど、今日も楽しく過ごせそう。
 その時。
「オイ!矢代!」
「!」
 一番関わりたくない奴らが目の前にいた。
 4組前の廊下全体に渡って列を作っている。
 万全の対策をしてきたかの様だ。
「昨日は何してくれんだよ、私達の江麻に」
 仲間の一人が言った。
 全員私をにらんでいる。
 私はひるまずに、人々の向こう側に向かって大声を張った。
「藤堂江麻!その中にいるんでしょ?堂々と出てきな!」
 群衆の中から、背の高い影が見えた。
「ひどいなあ、元リーダーに向かって。少しは礼儀とか無いの?」
 すっ、すっ、と人をかき分けやって来た。
「さ。出てきてやったよ。どうすんの」
 私は依然とした態度で彼女に言った。
「ふん。そっちこそ、なんかあるんでしょ」
 同じ風に返って来た。
「そうだよ。あんたなんか興味ないしけどこれだけは___」
「あの!」
 急に別の声が聞こえてきた。
 私達二人や、由紀ちゃん、浩介、藤堂の仲間たちが、一斉にそっちを見る。
 どうやら5組の中からだった。誰かがヒョコっ、と顔を出している。
「あなた達、通る人の邪魔してるよ」
 そう言ったのは、制服の名札に学級委員バッジを付けた女子だった。髪の毛が、肩あたりで縛られている。顔としては、他よりも大人っぽく見えた。良ーく見ると、名札に『谷川』と刻まれている。
 「谷川」さんに、すかさず藤堂の仲間は詰め寄る。
「ちょっと、今からいいとこだからさあ。静かにしてくんない?ムード壊れたよ」
 しかし、彼女は。
「いや、ちょっと邪魔だったから言っただけだよ。ほら」
 そう言って、周りを見るように促した。
 確かに、おそらく通れなくて困っている人がいた。
 さっきと違う女子が、弁解した。
「いや、でも大事なことなんだ。だから___」
「斎藤」
 藤堂は名を呼んだ。そして静かに言った。
「教室入ろう。続きは今度だ」
 メンバー達は納得しないようだったが、やがて棟梁を筆頭にそれぞれの教室に入っていく。
 混雑が止み、落ち着いたころ。
「由紀!」
 谷川さんが、由紀ちゃんを呼んだ。
 由紀ちゃんは笑って返した。
「春」
 春。それが下の名前なのだろう。
 二人はお互い駆けよる。
 もう教室に入ったと思っていた浩介は、今まさに私が思っていたことを口にした。
「知り合い・・・か?」
 谷川さんが応える。
「部活と習い事が一緒なの」
「「へえー」」
 浩介と声をそろえた。
「凄ーい。学級委員、なったんだー」
「まあね。でも、まだまだだよ」
「や、そんなことないって。似合ってるよ」
「ほんとー?嬉しー」
 なんだか楽しそうだ。本当は加わりたかったけど、止めた。ペースについていけない気がして。
 そんな、話に花が咲いているときに。
「ちょ、お前ら!もう少しで朝礼だぞ!早く!」
 浩介が急かす。
 ギリギリ入ることは出来たものの朝の支度は済んでいなかったため、3人共遅刻とみなされてしまった・・・。
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