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第一章 運命の始まり
第7話 決意と別離
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その後。私は由紀ちゃんに、昨日の出来事を一部始終伝えた。
すると、「実は、私昨日ソイツに会った。夢で」と彼女が言った。
どうだったかと聞いてみると、やっぱりあのじいちゃんは神として現れ、変なことを言って消えたという。
「大同公園で待っていろ、午後4時に迎えに来るって言ってたけど・・・」
迎えに来る、という言葉にどうも引っかかる。あいつは何を考えているんだ?私達を何かに利用しようと思っているのか?
結論が出ないまま、その日の学校は終わった。
今日は先生たちが職員会議で下校が早くなるから、用事まで時間がある。
だから帰りの会の後、私は思い切って藤堂さんと話した。
由紀ちゃんと仲直りして、決心がついた。
はっきり言って、彼女らと話すのが少し怖くなっていた。もしかしたら、と妄想もする。でも今日は私はあなた達ともう関わらない、それを伝えにいくだけ。だから大丈夫。
各々が帰り支度をする中、私は不安を抱えてその人の席に向かった。
また何か友だちと盛り上がっている。
私が話しかける前に、廊下に出ていく。
慌てて追いかけて、5組の前で彼女たちは気がついた。
藤堂さんは、私の気持ちを置き去りにするように笑っている。だからと言って、悪意を感じるわけではない。ただ自分にとって気に入らないだけだった。
そしていつもの、‶いきなりお誘い“をしている。
「ああ、矢代さん。どうしたの。もしかして、ヒマ?何なら今から、藤沢の家で遊ばない?この人がさー、こないだ誕生日で新しいクイッチのソフト買ったんだって。だから、矢代さんも____」
「せっかくだけど」
その人の長台詞を、バッサリ切るように言った。
「もうあなたの誘いには乗らない」
「え」
藤堂さんは笑いながら驚いた。そして笑ったそのままの状態言う。私に対する少しの怒りをあらわにしてに言った。
「え、ちょっと。矢代さん。どーしたの?別のグループに誘われたの?それともなんかこの中に気に入らないやつがいんの?だとしたら誰?あ、判った。藤沢だ。ゲーム買ってもらったらしいからね。それが羨ましいんだよ、たぶん。わかるわー、それ。私だって全っ然買って_____」
流石に頭に来た。この人は自分が私に何をしたか知らないんだ。なのに、勝手に話を進めて。何が羨ましいだ。何が私も買ってもらえないだ。それとこれとは、まったく違う。
今もなお、楽しく話し続けている彼女らに、
「あんただよ」
小さく声で、冷たく言った。
「え」
周りが硬直したのが分かった。メンバー達のざわめきが止む。
「気に入らないのは・・・藤堂さん、あなただよ」
面と向かって言われたその人は、ショックと怒りを隠しきれないようだ。
手に力が入っているのがよく判った。
周りは次々と、
「あんな言い方ないよね」
「ほんっとにそう思う。マジで」
「ドン引きなんですけどー」
と私をはやし立てている。
当の人は、しばらく悔しそうにしていたが、やがてどうでもいいという風にため息をつき、放つ様に言った。
「勝手にすれば。もう仲間じゃないし」
そして他のメンバーに「行こう」とだけ言うと、冷ややかにその場を去った。
他の人も、もう一度私の顔を見ると、彼女に付いて帰って行った。
「加奈!」
後ろから由紀ちゃんの声がした。
「加奈・・・、あれで良いの?私はなんか、嫌な予感がする。江麻がこのままにしておく筈がないと思うんだ」
江麻というのは、藤堂さんの下の名前だ。由紀ちゃんと藤堂さんは幼なじみだと、一人の女子から聞いた覚えがある。
「・・・良いよ。こうなるとは予想してたし。それに・・・由紀ちゃんと仲直りしなくても、あのグループからはいつか脱退しようと思ってたから」
彼女に背を向けたまま、そう言った。
何とか笑顔を作って、由紀ちゃんに向けた。
「帰ろっか」
そう言うと、私達は教室に戻ってスリーウェイを背負った。
すると、「実は、私昨日ソイツに会った。夢で」と彼女が言った。
どうだったかと聞いてみると、やっぱりあのじいちゃんは神として現れ、変なことを言って消えたという。
「大同公園で待っていろ、午後4時に迎えに来るって言ってたけど・・・」
迎えに来る、という言葉にどうも引っかかる。あいつは何を考えているんだ?私達を何かに利用しようと思っているのか?
結論が出ないまま、その日の学校は終わった。
今日は先生たちが職員会議で下校が早くなるから、用事まで時間がある。
だから帰りの会の後、私は思い切って藤堂さんと話した。
由紀ちゃんと仲直りして、決心がついた。
はっきり言って、彼女らと話すのが少し怖くなっていた。もしかしたら、と妄想もする。でも今日は私はあなた達ともう関わらない、それを伝えにいくだけ。だから大丈夫。
各々が帰り支度をする中、私は不安を抱えてその人の席に向かった。
また何か友だちと盛り上がっている。
私が話しかける前に、廊下に出ていく。
慌てて追いかけて、5組の前で彼女たちは気がついた。
藤堂さんは、私の気持ちを置き去りにするように笑っている。だからと言って、悪意を感じるわけではない。ただ自分にとって気に入らないだけだった。
そしていつもの、‶いきなりお誘い“をしている。
「ああ、矢代さん。どうしたの。もしかして、ヒマ?何なら今から、藤沢の家で遊ばない?この人がさー、こないだ誕生日で新しいクイッチのソフト買ったんだって。だから、矢代さんも____」
「せっかくだけど」
その人の長台詞を、バッサリ切るように言った。
「もうあなたの誘いには乗らない」
「え」
藤堂さんは笑いながら驚いた。そして笑ったそのままの状態言う。私に対する少しの怒りをあらわにしてに言った。
「え、ちょっと。矢代さん。どーしたの?別のグループに誘われたの?それともなんかこの中に気に入らないやつがいんの?だとしたら誰?あ、判った。藤沢だ。ゲーム買ってもらったらしいからね。それが羨ましいんだよ、たぶん。わかるわー、それ。私だって全っ然買って_____」
流石に頭に来た。この人は自分が私に何をしたか知らないんだ。なのに、勝手に話を進めて。何が羨ましいだ。何が私も買ってもらえないだ。それとこれとは、まったく違う。
今もなお、楽しく話し続けている彼女らに、
「あんただよ」
小さく声で、冷たく言った。
「え」
周りが硬直したのが分かった。メンバー達のざわめきが止む。
「気に入らないのは・・・藤堂さん、あなただよ」
面と向かって言われたその人は、ショックと怒りを隠しきれないようだ。
手に力が入っているのがよく判った。
周りは次々と、
「あんな言い方ないよね」
「ほんっとにそう思う。マジで」
「ドン引きなんですけどー」
と私をはやし立てている。
当の人は、しばらく悔しそうにしていたが、やがてどうでもいいという風にため息をつき、放つ様に言った。
「勝手にすれば。もう仲間じゃないし」
そして他のメンバーに「行こう」とだけ言うと、冷ややかにその場を去った。
他の人も、もう一度私の顔を見ると、彼女に付いて帰って行った。
「加奈!」
後ろから由紀ちゃんの声がした。
「加奈・・・、あれで良いの?私はなんか、嫌な予感がする。江麻がこのままにしておく筈がないと思うんだ」
江麻というのは、藤堂さんの下の名前だ。由紀ちゃんと藤堂さんは幼なじみだと、一人の女子から聞いた覚えがある。
「・・・良いよ。こうなるとは予想してたし。それに・・・由紀ちゃんと仲直りしなくても、あのグループからはいつか脱退しようと思ってたから」
彼女に背を向けたまま、そう言った。
何とか笑顔を作って、由紀ちゃんに向けた。
「帰ろっか」
そう言うと、私達は教室に戻ってスリーウェイを背負った。
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