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第二部 人間に戻りました
38 ハルディア、ようやくその家に到着(ハルディア視点)
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アンドナはテュルキエの最大都市なだけあって、とにかく広大だ。この都市だけで斡旋所が六ヶ所もあり、俺とソーマ、ネネリム殿は一箇所ずつリノという名の登録者がいないか調べていた。
「広いっすね……。移動が舟だから、余計に時間がかかってる気がします。もう夕方になっちまう……」
「街中ではプロクスを呼べないからな。でも手がかりが見つかって良かった。リノは西支部で登録していたようだ」
「お金がなさそうな魔法使いはロンダさんと仰るそうです。この辺に住んでるとのこふぉれすが、下町だふぁら家が多いれふね」
「ネネリム、なに食ってんだよ」
いつの間に買ったのか、ネネリム殿の手には白いパンのような物があった。良く見れば中に具が入っている。
「バオという蒸しパンみたいなものです。市場の屋台で売られていたのですが、中に味のついた肉が入っていて美味しいですよ」
「肉まん……!? 肉まんが売ってたのか!? くそっ、俺も食いたかった!」
「ちゃんと皆の分も買いましたよ。ロンダさんの家に着いたら食べましょう」
「ねーねー。お兄ちゃんたち、ロンダの家さがしてんの?」
ネネリム殿とソーマが肉まんという物について喋っていると、路地で遊んでいた子供たちが俺に話しかけてきた。よく日焼けした健康そうな女の子たちだ。
「ああ、そうなんだ。きみ達はロンダさんの家を知っているのか?」
「きゃーっ、喋っちゃった!」
「カッコイイお兄さんと喋っちゃったぁ!」
「あ、おい……」
探しているからそうだと答えたのに、目が合った少女たちは何故か走って逃げてしまう。
「俺がなにをしたと言うんだ……」
「初めて超絶イケメンに会って舞い上がったんじゃないすかね」
「しかも話しかけて貰ったわけですからねぇ。下町の子が美形貴族と喋る機会なんてまず無いですし……。でも案内してくれる気はあるみたいですよ」
ネネリム殿の言葉で顔を上げれば、少し離れた路地から先ほどの少女たちが手招きしている。俺たちは後を追いかけ、ようやくその家にたどり着いた。
「ここがロンダの家だよ!」
「ありがとう。助かったよ」
「お礼に飴をどうぞ」
ネネリム殿が一つずつ飴を配ると、少女たちは嬉しそうに笑って路地を駆けていった。改めてロンダという魔法使いの家を見上げる。
ヒビが入った塀の上からよく分からない植物の葉が覗き、壁は染みだらけでところどころ塗料が剥げている。屋根近くまで伸びたツタが異様な雰囲気を醸し出していた。
「結構古い家っすね……。ここにリノがいたのかな」
「とりあえず訪ねてみよう」
錆びたドアノッカーを何回か鳴らしていると、玄関の向こうからバタバタと足音がして勢いよくドアが開いた。
「リノ!? 帰って来れたの!? ……あ、あれ?」
三十歳ぐらいの女性が目を丸くして俺たちを見ている。髪はボサボサで目元は泣き腫らしたかのように赤く、何か良くない事が起こったのだとすぐに分かった。
「やっぱり莉乃はここにいたんだ……! あなたはロンダさんですか? 俺たち莉乃を迎えに来たんです。俺は爽真、こっちの美形貴族は公爵様で、黒いローブの魔法士はネネリムって言います」
「こっ……公爵!? もしかしてリノが言ってた“ハル様”ですか!?」
「確かにリノは俺のことをハル様と呼んでいたが……。俺の名はハルディアという。南大陸ロイウェルの三公の一人で――」
「ロイウェルの美形って……まさかリーディガー公爵!? うそ…………」
ロンダ殿は口元に手を当てて呟いたかと思うと、いきなり足から崩れるように倒れてしまった。慌てて彼女の腕を掴み、上半身が倒れないように支える。
「あらら、倒れちゃいましたね」
「申し訳ないが、勝手に入らせてもらおう」
「じゃあ俺がロンダさんの足を持ちます」
俺たちはロンダ殿をリビングらしき部屋に運び、壁際にあったソファの上に寝かせた。ネネリム殿が収納魔法から瓶と怪しげな薬を出し、ケトルの水を使って溶かしている。見ただけで分かる――アレは不味い薬だ。
「ネネリム……。その紫色の怪しい飲み物はなんだよ。まさかロンダさんに飲ませるつもりか?」
「私が開発した気つけ薬です。今のところ、これを飲んで目を覚まさなかった人はいません。百発百中の効き目ですよ!」
ネネリム殿は自信あり気な顔でロンダ殿の上半身を起こし、彼女の口に無理やり不味そうな液体を流し入れた。無表情だったロンダ殿の顔がしかめっ面になり、口元が苦しそうにぐにゃっと歪んでいる。マズさに苦しんでいる様子だ。
「ぶえぇっ、まっずぅ! え、何……!?」
「ほら! 目を覚ましました!」
「そんな自信満々に言われてもなぁ。不味くて目が覚めたんじゃねぇ? ロンダさん、大丈夫か?」
「え、ええ……。アタシ倒れちゃったんですね。ご迷惑お掛けしてすみません」
ロンダ殿は申し訳なさそうに言い、慌てて立ち上がろうとする。俺とソーマは彼女にそのままでいいと伝え、リノについて話をきく事にした。
気を利かせたソーマがお茶をいれ、ネネリム殿が肉まんを皿に並べると、ロンダ殿の腹がぐうと音を立てた。
「ごっごめんなさい。昨日からあまり食べてなかったから……」
「遠慮せずバオを食べてください。顔色が悪いですよ、あまり寝ていないでしょう。なにか心配事でもあるのですか?」
「リノが……あの子が心配で……」
ロンダ殿はバオを手に取ったものの、口をつける前に泣き出してしまった。テーブルの上にあった布巾で顔をぐしぐしと拭いている。
「リノに何かあったのか? ロンダ殿と一緒にいると思ってここに来たんだが」
「昨日の夕方までは一緒にいたんですけど、魔法院から迎えが来てリノを連れて行っちゃったんです。すぐに帰ってくるかと思ったら、後から魔法士たちがここに来て……リノはターニア様の弟子になったから戻ってこないって。ごめんなさい! アタシ、あの子を守れませんでした!」
「だいたい予想の範囲内ですね。とんでもない魔法を使った事によって、リノ様の存在が賢者にばれたんでしょう。強大な魔力を持つ魔法使いが野放しなんて危ないですからねぇ」
「でもロンダさんが泣く必要はないと思うぜ。ロンダさんは充分リノを守ったと思う」
「むしろアタシの方がリノに守られてたぐらいなんです。あの子、ターニア様に頼んで、アタシが魔法科の教員試験を受けられるように推薦状まで用意してくれて……」
ロンダ殿が泣いている理由が分かり、俺たちはしばらく無言になった。リノは魔法士たちに連れ去られたが、自分の事よりロンダ殿を心配して賢者に何か頼んだらしい。それが申し訳なくてロンダ殿は泣いているのだ。
俺は不思議な気分だった。リノの事は忘れたはずなのに、何故か「リノらしい」と思う気持ちがある。前にもリノが命がけで何かを守ってくれたような……そんな覚えがある。
「少し休憩したら、魔法院へ行ってみよう。ロンダ殿はどうする?」
「アタシはやめときます……。ターニア様に出禁だと言われちゃったので」
「出禁? そんな悪い事したんすか?」
ソーマが尋ねると、ロンダ殿は恥ずかしそうに身を竦めた。
「アタシ元々魔法士だったんです。一度辞めて故郷に帰ったあと、またアンドナに戻る理由が出来たから魔法院への復帰を希望したけど無理でした。ターニア様は色恋関連で仕事を放棄する魔法士が大嫌いなんです」
「先生も同じ事を言ってましたね。二人は同級生だったらしいんですが、若い頃は賢者ターニアも普通の女性だったのに、賢者を目指すようになって変貌したと。異様に厳しい婆さんになったわいとぼやいておられましたよ」
「え……ネネリムさんは南大陸の賢者と知り合いなんですか?」
「知り合いといいますか、私は賢者レゲリュクスの弟子なのです」
「ほえ……! リノったらすごい人たちと知り合いなんだ……!」
俺たちはお茶とバオで休憩した後、ロンダ殿の家を出た。彼女は最後まで自分よりもリノの無事を心配していて、リノと行動を供にしていたのがロンダ殿で良かったと心から思った。
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「街中ではプロクスを呼べないからな。でも手がかりが見つかって良かった。リノは西支部で登録していたようだ」
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「ネネリム、なに食ってんだよ」
いつの間に買ったのか、ネネリム殿の手には白いパンのような物があった。良く見れば中に具が入っている。
「バオという蒸しパンみたいなものです。市場の屋台で売られていたのですが、中に味のついた肉が入っていて美味しいですよ」
「肉まん……!? 肉まんが売ってたのか!? くそっ、俺も食いたかった!」
「ちゃんと皆の分も買いましたよ。ロンダさんの家に着いたら食べましょう」
「ねーねー。お兄ちゃんたち、ロンダの家さがしてんの?」
ネネリム殿とソーマが肉まんという物について喋っていると、路地で遊んでいた子供たちが俺に話しかけてきた。よく日焼けした健康そうな女の子たちだ。
「ああ、そうなんだ。きみ達はロンダさんの家を知っているのか?」
「きゃーっ、喋っちゃった!」
「カッコイイお兄さんと喋っちゃったぁ!」
「あ、おい……」
探しているからそうだと答えたのに、目が合った少女たちは何故か走って逃げてしまう。
「俺がなにをしたと言うんだ……」
「初めて超絶イケメンに会って舞い上がったんじゃないすかね」
「しかも話しかけて貰ったわけですからねぇ。下町の子が美形貴族と喋る機会なんてまず無いですし……。でも案内してくれる気はあるみたいですよ」
ネネリム殿の言葉で顔を上げれば、少し離れた路地から先ほどの少女たちが手招きしている。俺たちは後を追いかけ、ようやくその家にたどり着いた。
「ここがロンダの家だよ!」
「ありがとう。助かったよ」
「お礼に飴をどうぞ」
ネネリム殿が一つずつ飴を配ると、少女たちは嬉しそうに笑って路地を駆けていった。改めてロンダという魔法使いの家を見上げる。
ヒビが入った塀の上からよく分からない植物の葉が覗き、壁は染みだらけでところどころ塗料が剥げている。屋根近くまで伸びたツタが異様な雰囲気を醸し出していた。
「結構古い家っすね……。ここにリノがいたのかな」
「とりあえず訪ねてみよう」
錆びたドアノッカーを何回か鳴らしていると、玄関の向こうからバタバタと足音がして勢いよくドアが開いた。
「リノ!? 帰って来れたの!? ……あ、あれ?」
三十歳ぐらいの女性が目を丸くして俺たちを見ている。髪はボサボサで目元は泣き腫らしたかのように赤く、何か良くない事が起こったのだとすぐに分かった。
「やっぱり莉乃はここにいたんだ……! あなたはロンダさんですか? 俺たち莉乃を迎えに来たんです。俺は爽真、こっちの美形貴族は公爵様で、黒いローブの魔法士はネネリムって言います」
「こっ……公爵!? もしかしてリノが言ってた“ハル様”ですか!?」
「確かにリノは俺のことをハル様と呼んでいたが……。俺の名はハルディアという。南大陸ロイウェルの三公の一人で――」
「ロイウェルの美形って……まさかリーディガー公爵!? うそ…………」
ロンダ殿は口元に手を当てて呟いたかと思うと、いきなり足から崩れるように倒れてしまった。慌てて彼女の腕を掴み、上半身が倒れないように支える。
「あらら、倒れちゃいましたね」
「申し訳ないが、勝手に入らせてもらおう」
「じゃあ俺がロンダさんの足を持ちます」
俺たちはロンダ殿をリビングらしき部屋に運び、壁際にあったソファの上に寝かせた。ネネリム殿が収納魔法から瓶と怪しげな薬を出し、ケトルの水を使って溶かしている。見ただけで分かる――アレは不味い薬だ。
「ネネリム……。その紫色の怪しい飲み物はなんだよ。まさかロンダさんに飲ませるつもりか?」
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ネネリム殿は自信あり気な顔でロンダ殿の上半身を起こし、彼女の口に無理やり不味そうな液体を流し入れた。無表情だったロンダ殿の顔がしかめっ面になり、口元が苦しそうにぐにゃっと歪んでいる。マズさに苦しんでいる様子だ。
「ぶえぇっ、まっずぅ! え、何……!?」
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「え、ええ……。アタシ倒れちゃったんですね。ご迷惑お掛けしてすみません」
ロンダ殿は申し訳なさそうに言い、慌てて立ち上がろうとする。俺とソーマは彼女にそのままでいいと伝え、リノについて話をきく事にした。
気を利かせたソーマがお茶をいれ、ネネリム殿が肉まんを皿に並べると、ロンダ殿の腹がぐうと音を立てた。
「ごっごめんなさい。昨日からあまり食べてなかったから……」
「遠慮せずバオを食べてください。顔色が悪いですよ、あまり寝ていないでしょう。なにか心配事でもあるのですか?」
「リノが……あの子が心配で……」
ロンダ殿はバオを手に取ったものの、口をつける前に泣き出してしまった。テーブルの上にあった布巾で顔をぐしぐしと拭いている。
「リノに何かあったのか? ロンダ殿と一緒にいると思ってここに来たんだが」
「昨日の夕方までは一緒にいたんですけど、魔法院から迎えが来てリノを連れて行っちゃったんです。すぐに帰ってくるかと思ったら、後から魔法士たちがここに来て……リノはターニア様の弟子になったから戻ってこないって。ごめんなさい! アタシ、あの子を守れませんでした!」
「だいたい予想の範囲内ですね。とんでもない魔法を使った事によって、リノ様の存在が賢者にばれたんでしょう。強大な魔力を持つ魔法使いが野放しなんて危ないですからねぇ」
「でもロンダさんが泣く必要はないと思うぜ。ロンダさんは充分リノを守ったと思う」
「むしろアタシの方がリノに守られてたぐらいなんです。あの子、ターニア様に頼んで、アタシが魔法科の教員試験を受けられるように推薦状まで用意してくれて……」
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「先生も同じ事を言ってましたね。二人は同級生だったらしいんですが、若い頃は賢者ターニアも普通の女性だったのに、賢者を目指すようになって変貌したと。異様に厳しい婆さんになったわいとぼやいておられましたよ」
「え……ネネリムさんは南大陸の賢者と知り合いなんですか?」
「知り合いといいますか、私は賢者レゲリュクスの弟子なのです」
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