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第二部 人間に戻りました
24 冒険に行こう!(ちがう)
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請負人がどの仕事を受けるのか決定するのは受付の人のようで、難易度の高い仕事をやろうとしても断られてしまうみたいだった。
私はオレンジの仕事が出来るロンダさんと一緒なので、二人ならば青までOKと言われた。何かあった場合、ロンダさんは私を保護しながら戦う必要があるから、下から二番目ランクまでとの事だ。
「どっちかと言うと、アタシがリノに守られる可能性の方が高いんだけどね……。仕方ないか。受付にとっちゃリノは初心者なんだし。さ、遠慮なく乗って」
斡旋所を出ると、ロンダさんは手に持っていた布をぺらりと広げて地面に置いた。遠足のときに使うレジャーシートのような大きさだ。玄関マットぐらいの厚みがある。
「ここでお弁当でも食べるんですか?」
「なんでいきなり弁当? これはね、空を飛ぶ魔道具なのよ。乗っている人間の魔力を糧にして飛ぶんだけど、えげつないぐらい魔力を吸うから、アタシ一人だとすぐに飛べなくなっちゃうんだよね。でもリノと一緒ならかなり長時間飛べるんじゃないかな」
「空飛ぶ絨毯……! まさにアラジンの世界!」
「あんた時々よく分からないこと言うね。ま、とにかく、上空から黒い猫を探してみましょ」
うきうきと絨毯に座り、飛べと命じると、絨毯は音も無くふわりと宙に浮いた。
「飛んでる! マジで飛んでる! 冒険に行きたい!」
「違うでしょ、猫探しに行くんでしょ。この魔道具でそんなにはしゃぐ人、初めて見たわ」
私とロンダさんは絨毯に乗り、上空から街の様子を眺めることにした。アンドナはリーディガーとは違った雰囲気があり、完全に洋風というわけではないらしい。建物がとてもカラフルだ。壁が緑だったり赤だったり、ちょっと和風な家があったりする。
「あそこがお城ですか? ちょっとアラビアンな感じですね」
「街の中心部に王宮があるのよ。王宮の中に魔法院があって、賢者もそこにいるはずよ」
アンドナの王宮は宙に浮いていなかったが、周囲が人工的な池になっていて、噴水が虹を作り出していた。上から見ると本当に川が多いのが分かる。
私とロンダさんは絨毯から顔だけ出し、街の中に黒猫がいないか探した。
「いないですね……。猫そのものが少ないと言うか」
「暑いからねぇ。だいたいの猫は日陰で寝てるんじゃないかしらね。あ、ホラ。橋の下に何匹かいるわ」
ロンダさんが言うとおり、家のない猫たちは橋の下で寝ているようだった。絨毯に乗ったまま近づいて行くと、音を立てなかったのに猫たちはさーっと逃げてしまう。
「これは意外と大変な仕事っぽいですね」
「この繰り返しで何日もつぶれるわよ。二万でも安いぐらいだわ」
絨毯から降りて橋の下を覗くと、大きな石壁に背中を貼り付けて寝ている猫がいる。熟睡しすぎて人間の気配が分からなかったらしい。私は茶トラの猫の体を揺さぶった。
「ねぇ、ちょっと。起きてよ」
『んにゃー……。なんだぁ? 人間じゃねーか。なんで喋れんだよ?』
「細かいこと気にしないの。私たちアルルって猫を探してんだけど、あんた知らない?」
「リ、リノ……なんで猫に話しかけてんの?」
猫に話しかける私を見てロンダさんがギョッとしている。当然の反応だけど、説明が難しい。
「まあちょっと、色々ありまして……。で、どうなの? アルルって黒猫知らない?」
『アルルなぁ。白い首輪してるヤツだろ? アイツならこの時間、商店街でメシ貰ってるはずだぜ』
「ふぅん、ありがとう。ロンダさん、アルルは商店街でメシ食ってるそうです」
「ほぇっ!? ちょっ、え……本当に行くの? その猫がそう言ったの!?」
「信じられないでしょうけど、とりあえず商店街に行ってみましょう。そしたら本当かどうか分かりますから」
「い、いいけど……。えーっ……猫と話せる魔法とかあったっけ?」
動物と会話ができる首輪はあるけど、東大陸ではまだ売り出されていないらしい。ネネさんはきっと大ヒットを狙っているだろうに。
私はオレンジの仕事が出来るロンダさんと一緒なので、二人ならば青までOKと言われた。何かあった場合、ロンダさんは私を保護しながら戦う必要があるから、下から二番目ランクまでとの事だ。
「どっちかと言うと、アタシがリノに守られる可能性の方が高いんだけどね……。仕方ないか。受付にとっちゃリノは初心者なんだし。さ、遠慮なく乗って」
斡旋所を出ると、ロンダさんは手に持っていた布をぺらりと広げて地面に置いた。遠足のときに使うレジャーシートのような大きさだ。玄関マットぐらいの厚みがある。
「ここでお弁当でも食べるんですか?」
「なんでいきなり弁当? これはね、空を飛ぶ魔道具なのよ。乗っている人間の魔力を糧にして飛ぶんだけど、えげつないぐらい魔力を吸うから、アタシ一人だとすぐに飛べなくなっちゃうんだよね。でもリノと一緒ならかなり長時間飛べるんじゃないかな」
「空飛ぶ絨毯……! まさにアラジンの世界!」
「あんた時々よく分からないこと言うね。ま、とにかく、上空から黒い猫を探してみましょ」
うきうきと絨毯に座り、飛べと命じると、絨毯は音も無くふわりと宙に浮いた。
「飛んでる! マジで飛んでる! 冒険に行きたい!」
「違うでしょ、猫探しに行くんでしょ。この魔道具でそんなにはしゃぐ人、初めて見たわ」
私とロンダさんは絨毯に乗り、上空から街の様子を眺めることにした。アンドナはリーディガーとは違った雰囲気があり、完全に洋風というわけではないらしい。建物がとてもカラフルだ。壁が緑だったり赤だったり、ちょっと和風な家があったりする。
「あそこがお城ですか? ちょっとアラビアンな感じですね」
「街の中心部に王宮があるのよ。王宮の中に魔法院があって、賢者もそこにいるはずよ」
アンドナの王宮は宙に浮いていなかったが、周囲が人工的な池になっていて、噴水が虹を作り出していた。上から見ると本当に川が多いのが分かる。
私とロンダさんは絨毯から顔だけ出し、街の中に黒猫がいないか探した。
「いないですね……。猫そのものが少ないと言うか」
「暑いからねぇ。だいたいの猫は日陰で寝てるんじゃないかしらね。あ、ホラ。橋の下に何匹かいるわ」
ロンダさんが言うとおり、家のない猫たちは橋の下で寝ているようだった。絨毯に乗ったまま近づいて行くと、音を立てなかったのに猫たちはさーっと逃げてしまう。
「これは意外と大変な仕事っぽいですね」
「この繰り返しで何日もつぶれるわよ。二万でも安いぐらいだわ」
絨毯から降りて橋の下を覗くと、大きな石壁に背中を貼り付けて寝ている猫がいる。熟睡しすぎて人間の気配が分からなかったらしい。私は茶トラの猫の体を揺さぶった。
「ねぇ、ちょっと。起きてよ」
『んにゃー……。なんだぁ? 人間じゃねーか。なんで喋れんだよ?』
「細かいこと気にしないの。私たちアルルって猫を探してんだけど、あんた知らない?」
「リ、リノ……なんで猫に話しかけてんの?」
猫に話しかける私を見てロンダさんがギョッとしている。当然の反応だけど、説明が難しい。
「まあちょっと、色々ありまして……。で、どうなの? アルルって黒猫知らない?」
『アルルなぁ。白い首輪してるヤツだろ? アイツならこの時間、商店街でメシ貰ってるはずだぜ』
「ふぅん、ありがとう。ロンダさん、アルルは商店街でメシ食ってるそうです」
「ほぇっ!? ちょっ、え……本当に行くの? その猫がそう言ったの!?」
「信じられないでしょうけど、とりあえず商店街に行ってみましょう。そしたら本当かどうか分かりますから」
「い、いいけど……。えーっ……猫と話せる魔法とかあったっけ?」
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