【完結】巻き込まれたけど私が本物 ~転移したら体がモフモフ化してて、公爵家のペットになりました~

千堂みくま

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第二部 人間に戻りました

21 お金がない!

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「そのメイドのあんたが、どうして東大陸行きの船に乗ってたの? お金も持たずに乗るなんて変じゃない?」

「多分ですけど、私はどうも誘拐されたみたいで」

「……は!? 誘拐? ただのメイドを?」

「散歩の途中、知り合いに会ったんですけど、その人が作ったお菓子を食べたら眠くなって……気が付いたら箱詰めされて船に乗ってたんですよぉ」

「その知り合い、あんたに恨みでもあんの?」

 ロンダさんはご飯を食べ終えて、キルカの皮を剥いている。私もデザートに一つ頂こう。

「恨み……恨まれてたのかなぁ。その人、すごくハル様の事が好きみたいなんです。私はハル様と一緒に暮らしてたから、邪魔だと思ったのかもですね」

「つまり嫉妬ね。邪魔だからって箱詰めして船に乗せるなんて、おっそろしい女だわねぇ。でもあんたの言い方だと、そのハル様って人はメイドを雇えるぐらい余裕のある人なんでしょ。もしかしたらリノを探してるかもね」

「探すにしても、どうやって私の居場所を見つけるのか……」

「手紙でも書けば? かなり離れてるけど、二週間ぐらいで着くと思うよ。ここにいるよって伝えれば、迎えが来るかもしれないわよ」

「そっか! 手紙という方法が……。住所が分からない……!」

「あ、あんたね……」

 ロンダさんは絶望したように天井を見上げている。自分の迂闊さに泣きたくなってきた。

「申し訳ございません……!」

「仕方ないか……。自力でお金を稼いで船に乗るしかないね。でも大陸を渡るとなると、結構お金が必要よ。二十万……ううん、三十万ルゥドぐらい掛かるかな」

「三十万ルゥド? どれぐらいのお金ですかね」

「船の護衛が一回六万だから、五回仕事を受けるぐらいだわね」

「五回!? 命がけの仕事を五回も……」

 クラーケンは力技で倒したけど、あんな化け物が何度も出てくる仕事なんてさすがにやりたくない。もう二度と海を漂流するのはごめんだ。

「しかも今回みたいな船の護衛って珍しいのよ。滅多に無い仕事なの。本当は魔法院に依頼したかったらしいけど、予算の都合で仕方なく斡旋所に頼んだんだって。受けられてラッキーだったわ。死にかけちゃったけど」

「魔法院に頼むと高くつくんですか?」

「魔法士って国が認めた資格だからね。国を背負って仕事をしてるから有能な人が揃ってるし、ミスも少ないけど、その分料金は高いってわけよ」

「じゃあ斡旋所にはお安い仕事しかないってことですね……。はぁぁ……」

「とにかく明日もう一回、斡旋所に行きましょ。仕事してる内にハル様があんたを見つけてくれるかもしれないでしょ」

「そうですね……」

 頷いておきながら、私はとてつもなく不安だった。今のハル様は私のことを忘れている。よく覚えてもいない異界人の私を探してくれるのか、不安でたまらなかった。
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