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2 死にたくないので嫁ぎます
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思えば子供の頃から不審な点はあった。
何故かやたらと薬草や病気に詳しかったり、習ったこともない楽器を弾けたり。
洗濯をするとき妙に手馴れていたり。
「それもそのはずだわ。だって私、今の人生で四回目なんだもの……」
サロンで奇声を上げた私は、「自分の部屋でじっくり考えて参りますわ、おほほ」とごまかして部屋に戻ってきたのだった。
机の上には21歳のフェリオス皇子の釣書が乗っている――が、もう見る気もしない。
「一度目は薬師で、二度目は演奏家。三度目は巫女姫の侍女で……」
そして何故か今、自分がその巫女姫になって四度目の人生を生きている。
どうなってるの?、とじっくり考えたいところだが、今はとにかくフェリオスである。
前回の人生、私はエンヴィード軍から巫女姫を逃がすために身代わりとなって死んだ。
エンヴィード皇国は隣国ハートンとの戦争に勝利した後、ロイツ聖国の巫女姫に婚約を申し込んできた。しかし巫女姫は婚約を拒否し、半年後に戦争が起こったのだ。
いま思うと、あの婚約は人質として嫁いで来いという意味だったんだろう。もっと深く考えるべきだったけれど、戦争慣れしていない私たちはその意味に気づかなかった。
だいたいエンヴィード皇国だっておかしい。
婚約を断ったぐらいで戦争を仕掛けてくるなんて、野蛮すぎでしょ!
侍女だった私は姫と同じ髪色のカツラをかぶって、姫のドレスを着て大聖堂で祈りを捧げていた。が、攻め込んできたエンヴィード軍に捕らえられ、フェリオスの手によって心臓を一突きにされて死んだというわけだ。
「ハートンとの戦争が終わったから、婚約を申し込んできたのね。ということは……」
婚約を断ったら、また戦争が起こって―――死ぬ?
「やだあぁぁ! まだ17なのに死にたくないぃぃ!」
部屋の中で激しく独り言をさけぶ。
やだやだ!
またくり返すなんてやだ!
今までの人生、私は最長でも22歳までしか生きていないのよ。
可哀相じゃない!?
あんまりな話だわ!
「もういっそ敵国に嫁いでみよう。死なずに済むかもしれないし!」
安直な理由により嫁ぎ先を決めた私は、テーブルの上に置かれたベルを手に取った。
嫁入りを決めたからにはぼやぼやしていられない。
リンと鳴らすと、侍女のカリエがやって来る。
「姫様、ご用でしょうか」
「ええ。婚約を決めたから、荷造りを手伝ってちょうだい」
部屋のすみに置かれた、櫃というふた付きのデカイ箱をよっこらせと運ぶ。本来なら騎士を呼んだ方がいいのだろうけど、巫女姫のそばに置くのは女性だけという変な決まりがあるのだ。
だから巫女姫の侍女は多様な仕事が出来ないと務まらない。
櫃のなかに嫁ぎ先で役に立ちそうな物を詰め込むが、三分の一ぐらいは空けておいた。ここには別の物を入れたい。どこに行こうと役に立つアレを。
何故かやたらと薬草や病気に詳しかったり、習ったこともない楽器を弾けたり。
洗濯をするとき妙に手馴れていたり。
「それもそのはずだわ。だって私、今の人生で四回目なんだもの……」
サロンで奇声を上げた私は、「自分の部屋でじっくり考えて参りますわ、おほほ」とごまかして部屋に戻ってきたのだった。
机の上には21歳のフェリオス皇子の釣書が乗っている――が、もう見る気もしない。
「一度目は薬師で、二度目は演奏家。三度目は巫女姫の侍女で……」
そして何故か今、自分がその巫女姫になって四度目の人生を生きている。
どうなってるの?、とじっくり考えたいところだが、今はとにかくフェリオスである。
前回の人生、私はエンヴィード軍から巫女姫を逃がすために身代わりとなって死んだ。
エンヴィード皇国は隣国ハートンとの戦争に勝利した後、ロイツ聖国の巫女姫に婚約を申し込んできた。しかし巫女姫は婚約を拒否し、半年後に戦争が起こったのだ。
いま思うと、あの婚約は人質として嫁いで来いという意味だったんだろう。もっと深く考えるべきだったけれど、戦争慣れしていない私たちはその意味に気づかなかった。
だいたいエンヴィード皇国だっておかしい。
婚約を断ったぐらいで戦争を仕掛けてくるなんて、野蛮すぎでしょ!
侍女だった私は姫と同じ髪色のカツラをかぶって、姫のドレスを着て大聖堂で祈りを捧げていた。が、攻め込んできたエンヴィード軍に捕らえられ、フェリオスの手によって心臓を一突きにされて死んだというわけだ。
「ハートンとの戦争が終わったから、婚約を申し込んできたのね。ということは……」
婚約を断ったら、また戦争が起こって―――死ぬ?
「やだあぁぁ! まだ17なのに死にたくないぃぃ!」
部屋の中で激しく独り言をさけぶ。
やだやだ!
またくり返すなんてやだ!
今までの人生、私は最長でも22歳までしか生きていないのよ。
可哀相じゃない!?
あんまりな話だわ!
「もういっそ敵国に嫁いでみよう。死なずに済むかもしれないし!」
安直な理由により嫁ぎ先を決めた私は、テーブルの上に置かれたベルを手に取った。
嫁入りを決めたからにはぼやぼやしていられない。
リンと鳴らすと、侍女のカリエがやって来る。
「姫様、ご用でしょうか」
「ええ。婚約を決めたから、荷造りを手伝ってちょうだい」
部屋のすみに置かれた、櫃というふた付きのデカイ箱をよっこらせと運ぶ。本来なら騎士を呼んだ方がいいのだろうけど、巫女姫のそばに置くのは女性だけという変な決まりがあるのだ。
だから巫女姫の侍女は多様な仕事が出来ないと務まらない。
櫃のなかに嫁ぎ先で役に立ちそうな物を詰め込むが、三分の一ぐらいは空けておいた。ここには別の物を入れたい。どこに行こうと役に立つアレを。
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