【完結】男装令嬢、深い事情により夜だけ王弟殿下の恋人を演じさせられる

千堂みくま

文字の大きさ
上 下
28 / 62

28 崩れる日常 ※

しおりを挟む
 昨夜はいつもと違った趣向でやろうとイグニスが言い出し、協力者であるルルシェは彼の要望を叶えるために指示に従ったのだった。


 イグニスはベッドに腰掛け、湯浴みを終えたルルシェを呼んで乳房を出すようにいう。恥ずかしくてまごついていると勝手に釦を外され、俺の前にしゃがめと命令してきた。

『しゃがむんですか?』

『膝立ちでもいい。今日はおまえのおっぱいを使ってみたい』

『お、おっぱ……』

 まさか王子が“おっぱい”という単語を口にするとは思わず、ルルシェは唖然としていた。その間にイグニスは下穿きの前をくつろげて硬くなったものを取り出し、ルルシェの胸の谷間にずにゅっと差し込んでしまう。

『やぁっ、何して……!』

 赤黒い肉茎が、白い胸の谷間に深々と刺さっている。目の前の光景にルルシェが目を見開いていると、上から気持ち良さそうな声が。

『あー……、柔らかい。ルルシェ、俺のを胸でぎゅっと挟んでくれ』

『う、うぅ……こうですか』

 ルルシェは上体を倒し、乳房を外側から押して雄根を圧迫した。変な感じだ。異物感がすごい。

『そう、そのまま……胸で俺のを擦って、先端を舐めてくれ』

『……!!』

 舐める? 僕がコレの先っぽを舐めるの?

 信じられない思いで顔を上げれば、少年のようにキラキラした瞳でこちらを見ているイグニスと目が合った。何てあどけない顔なんだろうか。これは断りにくい。 

(しょ、しょうがないな……)

 ルルシェは言われた通り、乳房で擦りながら谷間から突き出た先端に唇を寄せた。舌を伸ばしてくぼみを舐めると、青臭い匂いと一緒に苦味が口腔に広がる。

『んっ、んんぅ……』

 苦い。変な味。ツルツルしてて、なめし革みたい……。
 唾液と先走りが混ざり合って、胸の谷間がぬるぬると滑る。思い切って舌を伸ばし、雁首のくびれた部分を舐めるとイグニスが切なそうな声を漏らした。

『はぁッ……ルルシェ……』

 端正な顔に情欲を滲ませ、男の色香を漂わせながらルルシェの紫銀の髪に指を差し込んでくる。

 悦んでるんだ――何故か嬉しくなり、ルルシェは口を大きく開けて亀頭をぱくりと咥えこんだ。頭を撫でていたイグニスの手が一瞬だけ止まる。

 が、すぐに撫でる動きは再開された。まるでそれでいいと褒めるかのように。

『んむぅ、んんっ……ん、んん……』

 唇をすぼませて一生懸命に咥えていると、頭の上から逼迫した呼吸が聞こえてくる。彼が悦んでいると感じるたびに胎の奥が疼き、じゅわりと熱い蜜が溢れて媚肉を潤した。

(ああ、僕……興奮してる……。殿下のを舐めながら、濡らしちゃうなんて……)

 呼吸するたびに雄の匂いが鼻腔に入り込んでくる。怒張の滑らかな舌触り。口の中で脈打つ感触。頭の芯がドロドロに溶けて目眩がする――。

『ッ、もういい……』

 イグニスがルルシェの頭を後ろに引き、ちゅぽんと音がして陰茎が口から抜けた。唾液と先走りで艶やかに光っている。

『はぁ……。顎が疲れました』

 床にへたり込むルルシェをイグニスが抱き上げ、ベッドに寝かせた。

『今夜は後ろからだ』

 低い声が聞こえたかと思うと、うつ伏せにして腰だけ上げる格好にさせられる。疲れたルルシェは顔を枕に埋めていたが、イグニスの声でハッと我に返った。

『……濡れてるな。俺のを舐めて興奮したのか?』

『ちっ、違……!』

『違わないだろ、こんなにトロトロにして。よく頑張ったな。いい子には褒美をあげよう』

 勝手に納得して、花びらを割るように屹立をぐっと押し付けてくる。あとは同じだ。ルルシェが達するまで、熱い剛直で割れ目をしつこく擦られる。

『あっ、あン、くぅ……っ、あっ、あっ、あぁう――っ……!』

 ルルシェが絶頂を迎えた直後にイグニスも分身を引き抜き、蜜口に先端を押し当てて射液を噴出した。熱い白濁が膣口から雌芯へとろりと流れていく。

『ッく……! 本当は、おまえの中に出してしまいたい……』

 耳に唇を寄せて熱っぽく囁かれ、何故か腰がぶるりと震えた。頭の中が蕩けて、ただの女になってイグニスに身を委ねたい衝動に駆られた。

(昨夜は危なかった。このままだと、殿下に流されそうで怖い……)

「ここからスピードを上げるぞ」

「……あ、はいっ」

 昨夜のことを考えている間に街道から土の道に変わり、クロウが勢いよく駆け出す。ルルシェもあとに続いた。

 現場ではアンディとニェーバが懸命に橋を作っていた。数ヶ月たってかなり親密になったようだ。言葉が通じなくても、身ぶり手ぶりで意思疎通している。通じないからこその親密さかもしれない。

 ルルシェとイグニスは少し離れた場所から邪魔にならないように工事を観察した。予定よりも完成は遅れそうだが、大きな問題は発生していないと報告を受け、その場を後にした。

 あの日と同じように天候が徐々に崩れだし、馬に乗っている間にぽつぽつと顔に雨があたる。前を進んでいたイグニスが、以前雨宿りをした大木のほうに移動して行った。今回も木の下で雨をしのごうというのだろう。ルルシェも同じように大木に向かって進む。

「懐かしいな。去年の秋もここで雨宿りをした……あの時はおまえのことを、男だと思っていたけどな」

「まあ、そうでしょうね」

 隙を見せないようにしていたのだから、男だと思われて当然だ。イグニスはあの日のように荷物から布を出し、ルルシェの頭を拭いている。

(だから、ぼさぼさになるって言うのに。また嫌味でも言ってやろうか)

 だがイグニスはルルシェの嫌味を聞く前に、髪のリボンをほどいてしまった。母に散髪してもらった髪は少しずつ伸びてきている。侍従長にでも切ってもらおうかなと考えていると、武骨な手が頬をすりっと撫でた。

 熱を閉じ込めた炎の瞳がルルシェを見ている。なぜだか動けなくて、彼の顔が近づいてくるのを大人しく待っていた。少し冷たい唇がそっと重ねられる。

 彼は何度か角度をかえてキスを繰り返し、最後のキスのあとに髪を結ってくれた。とても丁寧な手つきで、イグニスがルルシェを大切に思っているのがよく分かる。光栄だけど少し複雑な気分だ。

 ふと顔を上げると、大木から離れた所に誰かが立っていた。傘を手に持った女性のようだ。イグニスとルルシェを観察するように見ている。ルルシェはその場に凍りつき、微動だにせず女性を見つめ返した。

 ――まさか、キスするところも見られていた?

 道から外れた森の中だからと油断していた。当然のようにイグニスのキスを受け止めてしまい、今さらながら自覚が足りなかったと悔やまれる。今のルルシェは側近であり、男なのに。

 女性はルルシェたちから視線をはずし遠ざかって行った。彼女の姿が見えなくなってもルルシェは動けず、イグニスから「行くぞ」と声を掛けられるまで呆然としていた。
しおりを挟む
感想 17

あなたにおすすめの小説

婚約破棄された令嬢は騎士団長に溺愛される

狭山雪菜
恋愛
マリアは学園卒業後の社交場で、王太子から婚約破棄を言い渡されるがそもそも婚約者候補であり、まだ正式な婚約者じゃなかった 公の場で婚約破棄されたマリアは縁談の話が来なくなり、このままじゃ一生独身と落ち込む すると、友人のエリカが気分転換に騎士団員への慰労会へ誘ってくれて… 全編甘々を目指しています。 この作品は「小説家になろう」にも掲載しております。

不器用騎士様は記憶喪失の婚約者を逃がさない

かべうち右近
恋愛
「あなたみたいな人と、婚約したくなかった……!」 婚約者ヴィルヘルミーナにそう言われたルドガー。しかし、ツンツンなヴィルヘルミーナはそれからすぐに事故で記憶を失い、それまでとは打って変わって素直な可愛らしい令嬢に生まれ変わっていたーー。 もともとルドガーとヴィルヘルミーナは、顔を合わせればたびたび口喧嘩をする幼馴染同士だった。 ずっと好きな女などいないと思い込んでいたルドガーは、女性に人気で付き合いも広い。そんな彼は、悪友に指摘されて、ヴィルヘルミーナが好きなのだとやっと気付いた。 想いに気づいたとたんに、何の幸運か、親の意向によりとんとん拍子にヴィルヘルミーナとルドガーの婚約がまとまったものの、女たらしのルドガーに対してヴィルヘルミーナはツンツンだったのだ。 記憶を失ったヴィルヘルミーナには悪いが、今度こそ彼女を口説き落して円満結婚を目指し、ルドガーは彼女にアプローチを始める。しかし、元女誑しの不器用騎士は息を吸うようにステップをすっ飛ばしたアプローチばかりしてしまい…? 不器用騎士×元ツンデレ・今素直令嬢のラブコメです。 12/11追記 書籍版の配信に伴い、WEB連載版は取り下げております。 たくさんお読みいただきありがとうございました!

伯爵は年下の妻に振り回される 記憶喪失の奥様は今日も元気に旦那様の心を抉る

新高
恋愛
※第15回恋愛小説大賞で奨励賞をいただきました!ありがとうございます! ※※2023/10/16書籍化しますーー!!!!!応援してくださったみなさま、ありがとうございます!! 契約結婚三年目の若き伯爵夫人であるフェリシアはある日記憶喪失となってしまう。失った記憶はちょうどこの三年分。記憶は失ったものの、性格は逆に明るく快活ーーぶっちゃけ大雑把になり、軽率に契約結婚相手の伯爵の心を抉りつつ、流石に申し訳ないとお詫びの品を探し出せばそれがとんだ騒ぎとなり、結果的に契約が取れて仲睦まじい夫婦となるまでの、そんな二人のドタバタ劇。 ※本編完結しました。コネタを随時更新していきます。 ※R要素の話には「※」マークを付けています。 ※勢いとテンション高めのコメディーなのでふわっとした感じで読んでいただけたら嬉しいです。 ※他サイト様でも公開しています

婚約者の本性を暴こうとメイドになったら溺愛されました!

柿崎まつる
恋愛
世継ぎの王女アリスには完璧な婚約者がいる。侯爵家次男のグラシアンだ。容姿端麗・文武両道。名声を求めず、穏やかで他人に優しい。アリスにも紳士的に対応する。だが、完璧すぎる婚約者にかえって不信を覚えたアリスは、彼の本性を探るため侯爵家にメイドとして潜入する。2022eロマンスロイヤル大賞、コミック原作賞を受賞しました。

責任を取らなくていいので溺愛しないでください

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
漆黒騎士団の女騎士であるシャンテルは任務の途中で一人の男にまんまと美味しくいただかれてしまった。どうやらその男は以前から彼女を狙っていたらしい。 だが任務のため、そんなことにはお構いなしのシャンテル。むしろ邪魔。その男から逃げながら任務をこなす日々。だが、その男の正体に気づいたとき――。 ※2023.6.14:アルファポリスノーチェブックスより書籍化されました。 ※ノーチェ作品の何かをレンタルしますと特別番外編(鍵付き)がお読みいただけます。

ヤンデレエリートの執愛婚で懐妊させられます

沖田弥子
恋愛
職場の後輩に恋人を略奪された澪。終業後に堪えきれず泣いていたところを、営業部のエリート社員、天王寺明夜に見つかってしまう。彼に優しく慰められながら居酒屋で事の顛末を話していたが、なぜか明夜と一夜を過ごすことに――!? 明夜は傷心した自分を慰めてくれただけだ、と考える澪だったが、翌朝「責任をとってほしい」と明夜に迫られ、婚姻届にサインしてしまった。突如始まった新婚生活。明夜は澪の心と身体を幸せで満たしてくれていたが、徐々に明夜のヤンデレな一面が見えてきて――執着強めな旦那様との極上溺愛ラブストーリー!

腹黒宰相との白い結婚

恋愛
大嫌いな腹黒宰相ロイドと結婚する羽目になったランメリアは、条件をつきつけた――これは白い結婚であること。代わりに側妻を娶るも愛人を作るも好きにすればいい。そう決めたはずだったのだが、なぜか、周囲が全力で溝を埋めてくる。

一途なエリート騎士の指先はご多忙。もはや暴走は時間の問題か?

はなまる
恋愛
 シエルは20歳。父ルドルフはセルベーラ国の国王の弟だ。17歳の時に婚約するが誤解を受けて婚約破棄された。以来結婚になど目もくれず父の仕事を手伝って来た。 ところが2か月前国王が急死してしまう。国王の息子はまだ12歳でシエルの父が急きょ国王の代理をすることになる。ここ数年天候不順が続いてセルベーラ国の食糧事情は危うかった。 そこで隣国のオーランド国から作物を輸入する取り決めをする。だが、オーランド国の皇帝は無類の女好きで王族の女性を一人側妃に迎えたいと申し出た。 国王にも王女は3人ほどいたのだが、こちらもまだ一番上が14歳。とても側妃になど行かせられないとシエルに白羽の矢が立った。シエルは国のためならと思い腰を上げる。 そこに護衛兵として同行を申し出た騎士団に所属するボルク。彼は小さいころからの知り合いで仲のいい友達でもあった。互いに気心が知れた中でシエルは彼の事を好いていた。 彼には面白い癖があってイライラしたり怒ると親指と人差し指を擦り合わせる。うれしいと親指と中指を擦り合わせ、照れたり、言いにくい事があるときは親指と薬指を擦り合わせるのだ。だからボルクが怒っているとすぐにわかる。 そんな彼がシエルに同行したいと申し出た時彼は怒っていた。それはこんな話に怒っていたのだった。そして同行できる事になると喜んだ。シエルの心は一瞬にしてざわめく。 隣国の例え側妃といえども皇帝の妻となる身の自分がこんな気持ちになってはいけないと自分を叱咤するが道中色々なことが起こるうちにふたりは仲は急接近していく…  この話は全てフィクションです。

処理中です...