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キュートなSF、悪魔な親友
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「今日、メシ食いに来いよ」
会社を出て、駅までの道中を鹿倉が一人で歩いていると田村から電話が入った。
「志麻さんいないなら」
短く答える。
「いないけど。でも、いても、来いよ」
「やだよ」
まだびびってんのかよ、と内心呟く。
「そんなん言ってたらおまえ、メシ食わねーじゃん」
「食ってるわ、普通に。人のことバケモンみたいに言ってんじゃねえ」
「でもちゃんと栄養採ってないだろ。かぐ、ほっといたらビールだけで終わらすじゃん」
それには、否定できない。
元々食が細いのは自覚している。
家で夢中でゲームなんてしてたら、一日中ペットボトルのお茶だけで過ごしてたりも、するから。
「とにかく。今日は志麻さん来ないから。来なよ」
はいはい、と返事をして。
実際田村の作るものはどれも美味しいから。
嫌いな物も、子供に与えるかのように紛らせてくる。そして騙されてやる。
くふ、と笑って。
電車に乗って、最寄り駅で降りて。
当たり前の道を歩いて。
玄関の、チャイムを鳴らす。
「何、食わしてくれんの?」
いつも、ソラが逃げ出さないように抱いて出てくる田村からソラを受け取る。
「今日はね、かぐの好きなポテサラ。あと、新作の手羽元の柚子胡椒照り焼き」
「旨そうだな」
廊下を進んでダイニングへ。
美味しそうな香が立ち込める部屋に入ると、既にテーブルに料理は用意されていて。
「呑むだろ?」
とビールの缶を投げてくるから受け取って、ソラを下に下ろしながら。
「着替えた方がいい?」と訊いた。
「泊まってくだろ?」
つまり、食後にシャワー浴びてヤろうぜ、ってことで。
「……まだ、オとしてねーの?」
問うと、
「ったり前じゃん。そんな簡単にうまく行くかよ」
口を尖らせて田村が言うから。
「早くしないと、俺が口説くよ?」
「またそーやって、意地悪なことばっか言う」
「俺だって志麻さん、好きだもん」
「取るなよ!」
ニヤリと嗤ってやる。「どおかな?」と言うと、
「かぐ、さいてー!」
ふてくされる。
ほんと、可愛いヤツめ、とビールを開けて。
「あでも、最近ちょいちょいウチ、来てくれるようになったよ」
「あれ? 二人きりで?」
「ん。頑張ってる」
「じゃ、俺なんか呼ぶなよ」
「それとこれとは別。俺はおまえ太らせないとって思ってるし」
「ふーん。じゃあ、えっちはナシでいいの?」
わざと、色っぽく言ってやると、田村が赤くなった。
「……したいけど?」
照れながらも本音を漏らすから。
くふくふと笑ってキスをしてやった。
鹿倉は思う。この、やたら可愛い様子を見ている志麻は、何で押し倒そうとしないんだろうか、と。
「ま、いいや。とりあえずメシ食う」
会社を出て、駅までの道中を鹿倉が一人で歩いていると田村から電話が入った。
「志麻さんいないなら」
短く答える。
「いないけど。でも、いても、来いよ」
「やだよ」
まだびびってんのかよ、と内心呟く。
「そんなん言ってたらおまえ、メシ食わねーじゃん」
「食ってるわ、普通に。人のことバケモンみたいに言ってんじゃねえ」
「でもちゃんと栄養採ってないだろ。かぐ、ほっといたらビールだけで終わらすじゃん」
それには、否定できない。
元々食が細いのは自覚している。
家で夢中でゲームなんてしてたら、一日中ペットボトルのお茶だけで過ごしてたりも、するから。
「とにかく。今日は志麻さん来ないから。来なよ」
はいはい、と返事をして。
実際田村の作るものはどれも美味しいから。
嫌いな物も、子供に与えるかのように紛らせてくる。そして騙されてやる。
くふ、と笑って。
電車に乗って、最寄り駅で降りて。
当たり前の道を歩いて。
玄関の、チャイムを鳴らす。
「何、食わしてくれんの?」
いつも、ソラが逃げ出さないように抱いて出てくる田村からソラを受け取る。
「今日はね、かぐの好きなポテサラ。あと、新作の手羽元の柚子胡椒照り焼き」
「旨そうだな」
廊下を進んでダイニングへ。
美味しそうな香が立ち込める部屋に入ると、既にテーブルに料理は用意されていて。
「呑むだろ?」
とビールの缶を投げてくるから受け取って、ソラを下に下ろしながら。
「着替えた方がいい?」と訊いた。
「泊まってくだろ?」
つまり、食後にシャワー浴びてヤろうぜ、ってことで。
「……まだ、オとしてねーの?」
問うと、
「ったり前じゃん。そんな簡単にうまく行くかよ」
口を尖らせて田村が言うから。
「早くしないと、俺が口説くよ?」
「またそーやって、意地悪なことばっか言う」
「俺だって志麻さん、好きだもん」
「取るなよ!」
ニヤリと嗤ってやる。「どおかな?」と言うと、
「かぐ、さいてー!」
ふてくされる。
ほんと、可愛いヤツめ、とビールを開けて。
「あでも、最近ちょいちょいウチ、来てくれるようになったよ」
「あれ? 二人きりで?」
「ん。頑張ってる」
「じゃ、俺なんか呼ぶなよ」
「それとこれとは別。俺はおまえ太らせないとって思ってるし」
「ふーん。じゃあ、えっちはナシでいいの?」
わざと、色っぽく言ってやると、田村が赤くなった。
「……したいけど?」
照れながらも本音を漏らすから。
くふくふと笑ってキスをしてやった。
鹿倉は思う。この、やたら可愛い様子を見ている志麻は、何で押し倒そうとしないんだろうか、と。
「ま、いいや。とりあえずメシ食う」
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