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キュートなSF、悪魔な親友
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田村のマンションから出た鹿倉は解きかけていたネクタイを完全に解いた。
くるくると纏め、ポケットに突っ込む。
胸ポケットからスマホを取り出すと、“今から行っていい?”と短いメッセージを送信する。
家に帰るか、律の部屋に向かうか。
返事次第で電車の方向が変わってくるから、駅までの間に返事が来るといいな、と思いながら歩く。
別に、律に断られてもいい、とは思っている。
普通に、当たり前に、女性に困ることなんてないだろう律のことだから、他に誰かといるならそれで構わないし、邪魔するつもりなんてない。
好き、なんて言ってくれたから恐らく、他に特定の相手がいるわけじゃないだろうから、自分が遊ばせてもらうことに疚しさを感じる必要なんてないし。
田村が志麻とうまくくっついてくれるなら、性欲処理を律に一任するのもアリかな、なんて。
かるーく、思っている。
自分なんて結局そんな人間だし。
勿論、田村が志麻にフられるとか、そんな切ない結果になるならなるで、慰めるのは当然だけれど。
でも、うまく行って欲しい、と願う気持ちの方が大きい。
だって、田村だから。
あんなに“イイ人”なんだから、幸せにならなきゃ、いけない。
相手が絶対に志麻じゃなきゃいけないとは思わないけれど、田村が志麻を好きだというなら、ぜひともその願いは叶えてやりたい。
にこにこ笑って、誰にでも気を遣って、でも絶対的に芯を持ってる志麻が、田村のふわふわとした底抜けに優しくてばかみたいに真っ正直な人間にはきっと相応しいと、思う。
だから。なんとか、してやりたいんだけど。
背中を押すことくらいしか、してやれないから。
どうか、どうか。
志麻が、田村の魅力に気付いてくれますように、と願うだけで。
“待ってる”
手に持っていた携帯が震えて、返信が来た。
胸ポケットにしまって、上り線の電車に乗り込む。
平日の夜、まだ浅い時間だから乗客は結構多い。
立ったままつり革を持って、窓の外を眺める。
目の前に座っているカップルが、手を繋いでいた。
スマホの画面を二人で見て、イヤホンを片方ずつ耳にさして、クスクスと笑いながら見つめ合って。
そんな、なんでもないカップルのやり取りをぼんやり見つめる。
鹿倉がやったことのない、こと。
公共の場でイチャつくなんて、悪ふざけでしかできないから。
あんな風に、愛おしそうにお互いを見つめる、なんて。鹿倉の人生にはないこと。
ま、いいけど。
今は、何とも思わない。
ただ、学生の頃は。
少しだけ憧れた。
普通に、恋人同士で手を繋いで、堂々と過ごせる日々に。
いつだって、隠れるように体の関係だけを結ぶ相手しか、自分にはいなかったから。
誰か一人を愛しいと思ったことなんて、ないから。
多分、きっと自分は普通じゃなくて。
それは、ただ単にゲイだからじゃなくて。
誰かを愛してる、という感情の欠落した人間だから。
傍にいる、自分以外の人。みんなを好きで、みんなを愛せない。
自覚はあるから。
だからこそ、一番近くで見てきた田村には幸せになって欲しい。
きっと、自分のできないことを、田村に託しているんだと思う。
今頃。想いを伝えているかな? 押し倒してる? それとも、押し倒されてる?
想像するだけで、顔が綻ぶ。
田村が幸せを感じてくれていることを願いながら、鹿倉は電車を降りた。
くるくると纏め、ポケットに突っ込む。
胸ポケットからスマホを取り出すと、“今から行っていい?”と短いメッセージを送信する。
家に帰るか、律の部屋に向かうか。
返事次第で電車の方向が変わってくるから、駅までの間に返事が来るといいな、と思いながら歩く。
別に、律に断られてもいい、とは思っている。
普通に、当たり前に、女性に困ることなんてないだろう律のことだから、他に誰かといるならそれで構わないし、邪魔するつもりなんてない。
好き、なんて言ってくれたから恐らく、他に特定の相手がいるわけじゃないだろうから、自分が遊ばせてもらうことに疚しさを感じる必要なんてないし。
田村が志麻とうまくくっついてくれるなら、性欲処理を律に一任するのもアリかな、なんて。
かるーく、思っている。
自分なんて結局そんな人間だし。
勿論、田村が志麻にフられるとか、そんな切ない結果になるならなるで、慰めるのは当然だけれど。
でも、うまく行って欲しい、と願う気持ちの方が大きい。
だって、田村だから。
あんなに“イイ人”なんだから、幸せにならなきゃ、いけない。
相手が絶対に志麻じゃなきゃいけないとは思わないけれど、田村が志麻を好きだというなら、ぜひともその願いは叶えてやりたい。
にこにこ笑って、誰にでも気を遣って、でも絶対的に芯を持ってる志麻が、田村のふわふわとした底抜けに優しくてばかみたいに真っ正直な人間にはきっと相応しいと、思う。
だから。なんとか、してやりたいんだけど。
背中を押すことくらいしか、してやれないから。
どうか、どうか。
志麻が、田村の魅力に気付いてくれますように、と願うだけで。
“待ってる”
手に持っていた携帯が震えて、返信が来た。
胸ポケットにしまって、上り線の電車に乗り込む。
平日の夜、まだ浅い時間だから乗客は結構多い。
立ったままつり革を持って、窓の外を眺める。
目の前に座っているカップルが、手を繋いでいた。
スマホの画面を二人で見て、イヤホンを片方ずつ耳にさして、クスクスと笑いながら見つめ合って。
そんな、なんでもないカップルのやり取りをぼんやり見つめる。
鹿倉がやったことのない、こと。
公共の場でイチャつくなんて、悪ふざけでしかできないから。
あんな風に、愛おしそうにお互いを見つめる、なんて。鹿倉の人生にはないこと。
ま、いいけど。
今は、何とも思わない。
ただ、学生の頃は。
少しだけ憧れた。
普通に、恋人同士で手を繋いで、堂々と過ごせる日々に。
いつだって、隠れるように体の関係だけを結ぶ相手しか、自分にはいなかったから。
誰か一人を愛しいと思ったことなんて、ないから。
多分、きっと自分は普通じゃなくて。
それは、ただ単にゲイだからじゃなくて。
誰かを愛してる、という感情の欠落した人間だから。
傍にいる、自分以外の人。みんなを好きで、みんなを愛せない。
自覚はあるから。
だからこそ、一番近くで見てきた田村には幸せになって欲しい。
きっと、自分のできないことを、田村に託しているんだと思う。
今頃。想いを伝えているかな? 押し倒してる? それとも、押し倒されてる?
想像するだけで、顔が綻ぶ。
田村が幸せを感じてくれていることを願いながら、鹿倉は電車を降りた。
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