キュートなSF、悪魔な親友

月那

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キュートなSF、悪魔な親友

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 ジムのサウナで、くだらないワイドショーがかかっているテレビをぼんやりと見つめながら、律は両手を組んでダラダラと汗を流していた。
 俺だけのモノ、に、ならない鹿倉。
 抱いても抱いても、欲しくて仕方なくなる鹿倉を。
 束縛するわけにはいかないから。
 ならば、と。紛らせる為に行きつけのバーで美味しそうな女性を引っ掛けた。
 いつだって、そうやって適当に見繕っては美味しく頂いていたし。
 好みのタイプは、細身だけれどお尻の柔らかそうな、笑顔の可愛い女の子。
 当然、遊びだから軽く引っ掛ければそれで楽しめるような、そんなコでいい。
 そう思って、久々に昨夜ホテルで過ごしたのだが。
 触れた肌に、重ねた唇に、入れた指に。
 興奮を感じるのに、役に立たない自分自身に愕然とした。
 与えた愛撫で聴こえてくる喘ぎ声が、むやみやたらに甲高くて耳障りで。
 イかせるだけイかせて、何とか奮い立たせて達することはできたけれど、あんなにも虚しいセックスは初めてだった。
 自分は女を抱けなくなったのか、と。
 あまりの絶望に朝を待たずにホテルを後にし、朝からジムでばかみたいに汗を流していた。
 いつものメニューの筋トレを一通り流し、トレッドミルでランとウォーキングを交互に繰り返し、散々肉体を苛め抜いてから、サウナに向かい。
 もしかして、男に反応するのかと、周りを見渡して自分より若い男の裸を見たが、当たり前だが何の感情も湧くはずがなく。
 ただただ。
 本当に欲しいのが、鹿倉だけなのだと、痛感する結果になって。
 手に入らないものこそ、欲しくて堪らないのは自然の摂理。
 目の前にいて、腕の中に眠るのに。
 なのに、手には入らない。自分だけのモノに、ならない鹿倉が。
 欲しくて仕方ないのだ。
「あ、もっさんだー」
 と。
 悶々としていた律に、ノーテンキな軽い声がかかる。
「……田村」
「やほー。ここで会うの、ひっさびさだねー」
 へらへらと笑いながら、この部屋の最上段最高温特等席である自分の隣に座り込んだ。
「あっつ。ココ、鬼アツじゃね?」
「それがサウナの醍醐味だろーが」
「もっさん、汗すっげ。何分入ってんのさ?」
 入って来ただけで、喋るだけで、圧倒的な存在感。一気にその場が明るくなるのは、田村の持つ不思議な魅力だとわかっているが。
「もおおまえ、うるさい」
 半分、悩んでいる自分に浸っていた感は否めないが。
 それにしたって、このあっけらかんとした雰囲気が律の意識を一気に軽くするから。
 本気で悩んでいた自分がばかばかしくなる。
「あとシャワーで終わりっしょ? 一緒、昼飯行こうよ」
「はあ?」
「俺も、午前中一通りやったし、シャワーで帰ろって思ってたけど、サウナ見たらもっさんいたから」
 いや、いいから黙れ、と律が睨んだ。
 が、全く意に介していない様子で。
 田村はへらへらと笑いながら、ワイドショーで流れていた俳優の不倫ネタを見て「ばっかでー」なんて突っ込んでいて。
 そこそこ人がいるし、騒ぐトコじゃねーだろーが、と唇に人差し指を宛てて黙れと促す。
「わかったから」
「んじゃ、俺先シャワー行ってるね」
 言うが早いが、逃げるようにサウナを出て行った。
「もお……まじ、何しにココ来たんだよ……」
 頭を抱えて、それでも自分的ノルマがあと三分残っていたから、再び腕を組んで目を閉じた。
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