63 / 76
-63-
キュートなSF、悪魔な親友
しおりを挟む
ジムのサウナで、くだらないワイドショーがかかっているテレビをぼんやりと見つめながら、律は両手を組んでダラダラと汗を流していた。
俺だけのモノ、に、ならない鹿倉。
抱いても抱いても、欲しくて仕方なくなる鹿倉を。
束縛するわけにはいかないから。
ならば、と。紛らせる為に行きつけのバーで美味しそうな女性を引っ掛けた。
いつだって、そうやって適当に見繕っては美味しく頂いていたし。
好みのタイプは、細身だけれどお尻の柔らかそうな、笑顔の可愛い女の子。
当然、遊びだから軽く引っ掛ければそれで楽しめるような、そんなコでいい。
そう思って、久々に昨夜ホテルで過ごしたのだが。
触れた肌に、重ねた唇に、入れた指に。
興奮を感じるのに、役に立たない自分自身に愕然とした。
与えた愛撫で聴こえてくる喘ぎ声が、むやみやたらに甲高くて耳障りで。
イかせるだけイかせて、何とか奮い立たせて達することはできたけれど、あんなにも虚しいセックスは初めてだった。
自分は女を抱けなくなったのか、と。
あまりの絶望に朝を待たずにホテルを後にし、朝からジムでばかみたいに汗を流していた。
いつものメニューの筋トレを一通り流し、トレッドミルでランとウォーキングを交互に繰り返し、散々肉体を苛め抜いてから、サウナに向かい。
もしかして、男に反応するのかと、周りを見渡して自分より若い男の裸を見たが、当たり前だが何の感情も湧くはずがなく。
ただただ。
本当に欲しいのが、鹿倉だけなのだと、痛感する結果になって。
手に入らないものこそ、欲しくて堪らないのは自然の摂理。
目の前にいて、腕の中に眠るのに。
なのに、手には入らない。自分だけのモノに、ならない鹿倉が。
欲しくて仕方ないのだ。
「あ、もっさんだー」
と。
悶々としていた律に、ノーテンキな軽い声がかかる。
「……田村」
「やほー。ここで会うの、ひっさびさだねー」
へらへらと笑いながら、この部屋の最上段最高温特等席である自分の隣に座り込んだ。
「あっつ。ココ、鬼アツじゃね?」
「それがサウナの醍醐味だろーが」
「もっさん、汗すっげ。何分入ってんのさ?」
入って来ただけで、喋るだけで、圧倒的な存在感。一気にその場が明るくなるのは、田村の持つ不思議な魅力だとわかっているが。
「もおおまえ、うるさい」
半分、悩んでいる自分に浸っていた感は否めないが。
それにしたって、このあっけらかんとした雰囲気が律の意識を一気に軽くするから。
本気で悩んでいた自分がばかばかしくなる。
「あとシャワーで終わりっしょ? 一緒、昼飯行こうよ」
「はあ?」
「俺も、午前中一通りやったし、シャワーで帰ろって思ってたけど、サウナ見たらもっさんいたから」
いや、いいから黙れ、と律が睨んだ。
が、全く意に介していない様子で。
田村はへらへらと笑いながら、ワイドショーで流れていた俳優の不倫ネタを見て「ばっかでー」なんて突っ込んでいて。
そこそこ人がいるし、騒ぐトコじゃねーだろーが、と唇に人差し指を宛てて黙れと促す。
「わかったから」
「んじゃ、俺先シャワー行ってるね」
言うが早いが、逃げるようにサウナを出て行った。
「もお……まじ、何しにココ来たんだよ……」
頭を抱えて、それでも自分的ノルマがあと三分残っていたから、再び腕を組んで目を閉じた。
俺だけのモノ、に、ならない鹿倉。
抱いても抱いても、欲しくて仕方なくなる鹿倉を。
束縛するわけにはいかないから。
ならば、と。紛らせる為に行きつけのバーで美味しそうな女性を引っ掛けた。
いつだって、そうやって適当に見繕っては美味しく頂いていたし。
好みのタイプは、細身だけれどお尻の柔らかそうな、笑顔の可愛い女の子。
当然、遊びだから軽く引っ掛ければそれで楽しめるような、そんなコでいい。
そう思って、久々に昨夜ホテルで過ごしたのだが。
触れた肌に、重ねた唇に、入れた指に。
興奮を感じるのに、役に立たない自分自身に愕然とした。
与えた愛撫で聴こえてくる喘ぎ声が、むやみやたらに甲高くて耳障りで。
イかせるだけイかせて、何とか奮い立たせて達することはできたけれど、あんなにも虚しいセックスは初めてだった。
自分は女を抱けなくなったのか、と。
あまりの絶望に朝を待たずにホテルを後にし、朝からジムでばかみたいに汗を流していた。
いつものメニューの筋トレを一通り流し、トレッドミルでランとウォーキングを交互に繰り返し、散々肉体を苛め抜いてから、サウナに向かい。
もしかして、男に反応するのかと、周りを見渡して自分より若い男の裸を見たが、当たり前だが何の感情も湧くはずがなく。
ただただ。
本当に欲しいのが、鹿倉だけなのだと、痛感する結果になって。
手に入らないものこそ、欲しくて堪らないのは自然の摂理。
目の前にいて、腕の中に眠るのに。
なのに、手には入らない。自分だけのモノに、ならない鹿倉が。
欲しくて仕方ないのだ。
「あ、もっさんだー」
と。
悶々としていた律に、ノーテンキな軽い声がかかる。
「……田村」
「やほー。ここで会うの、ひっさびさだねー」
へらへらと笑いながら、この部屋の最上段最高温特等席である自分の隣に座り込んだ。
「あっつ。ココ、鬼アツじゃね?」
「それがサウナの醍醐味だろーが」
「もっさん、汗すっげ。何分入ってんのさ?」
入って来ただけで、喋るだけで、圧倒的な存在感。一気にその場が明るくなるのは、田村の持つ不思議な魅力だとわかっているが。
「もおおまえ、うるさい」
半分、悩んでいる自分に浸っていた感は否めないが。
それにしたって、このあっけらかんとした雰囲気が律の意識を一気に軽くするから。
本気で悩んでいた自分がばかばかしくなる。
「あとシャワーで終わりっしょ? 一緒、昼飯行こうよ」
「はあ?」
「俺も、午前中一通りやったし、シャワーで帰ろって思ってたけど、サウナ見たらもっさんいたから」
いや、いいから黙れ、と律が睨んだ。
が、全く意に介していない様子で。
田村はへらへらと笑いながら、ワイドショーで流れていた俳優の不倫ネタを見て「ばっかでー」なんて突っ込んでいて。
そこそこ人がいるし、騒ぐトコじゃねーだろーが、と唇に人差し指を宛てて黙れと促す。
「わかったから」
「んじゃ、俺先シャワー行ってるね」
言うが早いが、逃げるようにサウナを出て行った。
「もお……まじ、何しにココ来たんだよ……」
頭を抱えて、それでも自分的ノルマがあと三分残っていたから、再び腕を組んで目を閉じた。
0
お気に入りに追加
29
あなたにおすすめの小説
執着攻めと平凡受けの短編集
松本いさ
BL
執着攻めが平凡受けに執着し溺愛する、似たり寄ったりな話ばかり。
疲れたときに、さくっと読める安心安全のハッピーエンド設計です。
基本的に一話完結で、しばらくは毎週金曜の夜または土曜の朝に更新を予定しています(全20作)
転生貧乏貴族は王子様のお気に入り!実はフリだったってわかったのでもう放してください!
音無野ウサギ
BL
ある日僕は前世を思い出した。下級貴族とはいえ王子様のお気に入りとして毎日楽しく過ごしてたのに。前世の記憶が僕のことを駄目だしする。わがまま駄目貴族だなんて気づきたくなかった。王子様が優しくしてくれてたのも実は裏があったなんて気づきたくなかった。品行方正になるぞって思ったのに!
え?王子様なんでそんなに優しくしてくるんですか?ちょっとパーソナルスペース!!
調子に乗ってた貧乏貴族の主人公が慎ましくても確実な幸せを手に入れようとジタバタするお話です。
ハルとアキ
花町 シュガー
BL
『嗚呼、秘密よ。どうかもう少しだけ一緒に居させて……』
双子の兄、ハルの婚約者がどんな奴かを探るため、ハルのふりをして学園に入学するアキ。
しかし、その婚約者はとんでもない奴だった!?
「あんたにならハルをまかせてもいいかなって、そう思えたんだ。
だから、さよならが来るその時までは……偽りでいい。
〝俺〟を愛してーー
どうか気づいて。お願い、気づかないで」
----------------------------------------
【目次】
・本編(アキ編)〈俺様 × 訳あり〉
・各キャラクターの今後について
・中編(イロハ編)〈包容力 × 元気〉
・リクエスト編
・番外編
・中編(ハル編)〈ヤンデレ × ツンデレ〉
・番外編
----------------------------------------
*表紙絵:たまみたま様(@l0x0lm69) *
※ 笑いあり友情あり甘々ありの、切なめです。
※心理描写を大切に書いてます。
※イラスト・コメントお気軽にどうぞ♪
[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった
ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン
モデル事務所で
メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才
中学時代の初恋相手
高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が
突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。
昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき…
夏にピッタリな青春ラブストーリー💕
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる