キュートなSF、悪魔な親友

月那

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キュートなSF、悪魔な親友

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 日も落ちて、最終的にコースの締めとして田村が選んだ場所は、会社のある都市部へ戻って駅近くのホテルディナー。
「えー。さすがにココ、男二人で入るのは虚しくないか?」
 車を会社に停め、アルコールもOKな状態でホテルに着くと、志麻がそう言って眉を顰めた。
「でももう予約入れてんだけど」
「おまえ、勇気あるなあ」
「堀さんが経費使っていいってゆってたし」
「いや、そういう問題じゃなくて」
「部屋取ってるわけじゃないんだから、メシ食うぐらい、いいじゃん」
「リアルデートならちゃんとホテルも予約すんのかよ。やっぱモテる男はやることが違うねえ」
「いいから、ほら。時間決まってんだから、行くよ」
 実はこのクダリも、鹿倉は予想していた。志麻の性格を読んでいたようで、「いいから、とにかく軽くジャブ打ってかねーと何も進まないんだから」と。
 本当に鹿倉のシナリオ通りに進むから、田村は内心ガッツポーズしながら最上階にある夜景の見えるレストランへと志麻を誘った。
 窓の外に広がる景色は、朝からの好天がそのまま続いていたから本当に美しく輝いていて。
 二人用のテーブルに灯されていたキャンドルがまた、その“ザ・デート”感に拍車をかける。
「おいおい、おいおい。たむちゃん、俺らマジ、場違い感、ぱねーんだけど?」
「だいじょぶ、だいじょぶ。店の人には一言ゆってるから。ちょっとした取材も兼ねてるからって」
「あ、そーなん?」
「だって、写真撮るし。下見だから、実際掲載されることになったらもっとちゃんと取材させてもらうけど、とりあえず今回は軽くってことはゆってる」
「手回しいいな」
 志麻の言葉に、田村はちょっとだけドヤ顔をして、笑って見せた。
「志麻さんワイン、飲むでしょ?」
「あー、そうね。ここからなら電車で帰れるし」
 本当は、このまま酔わせて部屋に連れ込みたいという下心はあるけれど。
 田村はメニューを広げ、店員にワインをオーダーした。
「え、マジ、今日のたむちゃんカッコよくね?」
「そりゃー、デートコースだからね。カッコくらい付けさせてよ」
「くう。やるねえ」
 料理は既に予約していたから、前菜から次々と運ばれてくる。
「志麻さん、今日どうだった?」
 美味しい料理を楽しみながら、目の前にいる可愛い笑顔を見ていられる今。
 田村はこの上なく幸せで。
 でも一応、これは仕事の一環だからと少し真面目なトーンで訊く。
「良かったよ。俺が女の子だったら確実に惚れてるね」
 にこにこと、丸い目を細くして言ってくれるのが堪らなく嬉しい。
「入れ知恵はかぐちゃん?」
「え?」
「いや。たむちゃんは、あんましこーゆートコでカッコ付けてイケメンぶるイメージないからね」
「ええええ」
 完全にバレてるから、恥ずかしくなって顔を隠す。
「海鮮と水族館はおまえだろうけど、カフェとかホテルディナーは、ちょっと違うかなって」
 正にドンピシャで言い当てられて、声も出せない。
「ほんと、かぐちゃんって乙女心擽る術を知ってるっつーか。リアルに一番モテるんじゃね?」
 くふくふと、鹿倉と同じように鼻の奥で笑う。
「…………何でー……」
「まあまあ。で。田村は最初、他に何提案したのさ?」
「……温泉とバッティングセンター」
 小さい声で言うと、志麻が乾いた声で「はっはー」と笑う。
「あのね、たむちゃん。温泉は男女別れるし、バッティングセンターなんて、余程の野球好き女子以外は視界にすら入らんだろ?」
 ばっさりと切られ、
「同じこと、かぐにも言われた」とぼやく。
 ほらね、とウィンクしながらドヤってカッコつける鹿倉が浮かんで、もの凄く悔しい。
「とりあえず、今日のコースなら堀さんも合格くれると思うし、動画とかは共有サーバにアップしとくから、あとはしっかり纏めて資料作成しときな」
 締めの締めでそんなことを言われ、完全にデート気分を味わっていた田村はがっくりと項垂れた。
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